最終日。夜明け前に降ったスコールも上がり、穏やかなお天気。ママさんが最後の朝食を作ってくれた。名残惜しいが、足も逝っちゃってるので丁度潮時。数々のお礼を言って約1週間の我が家を後にする。次来る事があったとしても、もう1人っきりの貸し切りなんてないだろうなぁ。この素晴らしく絶妙なタイミングに感謝だ。空港までの道のりは通いなれたピークスへの道筋。いつもは通り過ぎていた空港へのゲートが今日の目的地だ。
順調にチェックインかと思いきや、サーフボードのオーバーチャージが危うく足りずにほぼ全ルピアを駆使してかろうじて足りた。レディさんがメダンの空港でも絶対ルピアが必要になるから出してあげると親切に言ってくれたがそんなお言葉に甘えるわけにはいかず、丁重に辞退させていただいた。いよいよ、島を離れる。帰りは当初の予定通りスージーエア。今日はお天気いいし、ちゃんと飛ぶようだ。レディさんが、「座席は決まって無くて自由だから、絶対に機長の直ぐ後ろの席に乗りなさい。操縦してる所が全部見えるから!」って教えてくれたので、搭乗が始まると早足で機内に入った。単発のプロペラ機。乗客は全部で5名。機長に副操縦士。今まで旅した中で最小の飛行機だ。タラップが仕舞われ、エンジンがかかる。コクピットと座席の間に仕切りなんてものはないので全て見える。前方を見ると機長と同じ景色を見られるわけだ。テキパキとスイッチ操作したり確認作業したりも丸見え。こりゃ格好いい。思わずパイロットに憧れそうになったけれど40年くらい遅かったなぁ。すると、ここで機長自ら機内アナウンス。インドネシア語でなにやら、説明が続く。乗客はおれ以外みんなインドネシア人。一通りの説明が終わったら、機長なんと俺の方に振り向いて、ニコッと笑って「Ladies&Gentlemen,Well come to SUSI AIR」と俺の目を見ながら、英語のアナウンスを始めた。俺が理解するのを確認しながら非常口の場所やシートベルトの注意や飛行経路なんかを話してくれた!なんて贅沢な機内アナウンスなんだ。今までで一番ちゃんと聞いた機内アナウンスだった。だって、いちいち頷いちゃってたもん・・・。一通りの説明が終わるとまた、ニコッと笑って前を向きなおした。そろそろと走り出す機体。一度滑走路の一番奥までいって振り向くと一気に加速して、あっという間に飛び立った!グーンと上昇するといつもの海が眼下に広がる。青く透き通る水。リーフの形に白いスープが縁取っている。ディランもバネンもアウトサイドのレフトも、もう別の世界の出来事になった。そのまま椰子の木だらけの島の上空を横切ってインド洋に出る。幾つもの島影を眺めながらやがてスマトラ本島に入る。高度が低いので景色が素晴らしい!道や村、川も山も手に取るように見える。そしてあのシナブン山もすぐそこだった。こんなに近いんじゃぁそりゃ影響あるよ。今日は風向きが反対で、あちら側の斜面を這うように噴煙が流れていた。あっという間のフライトの果てに現実世界の第一歩、クアラナム国際空港に帰ってきた。しかし、朝一のフライトで到着後、ジャカルタ行きのチェックインの16時半まで、ここで過す。往きのドタバタで隅々まで勝手知ったるクアラナム。慌てることは無いゆっくり行こう。荷物のピックアップのターンテーブルを探すと、薄暗い朝の空港の一番隅にSUSI AIR Simeulueと電光掲示板が出ていた。5人しかいない乗客皆で暫らく待つ。なかなか回り出さないなぁと思いながらふと後ろを振り向くと、明かりの点いていない、掲示板も真っ暗なままのターンテーブル上を俺のサーフボードと他の荷物が既に回転してた・・。荷物係が間違えちゃってんじゃん。皆でそちらに移動して各々無事に荷物をピックアップした。