DNAとその異常 そして癌
DNAとは、デオキシリボ核酸と言われ、細胞一つ一つに存在するもので、親から子へ遺伝される情報を記録する物質です。生命体の設計図として、生命活動のために重要な役割を担います。ちなみに、1つの細胞にあるDNAは、幅2ナノメートル(ナノは、10億分の1メートル)、長さは1.8メートルと言われています。細胞という小さな生命に、1.8メートルの長さがあるだなんて驚きですよね。ということは、私たちの細胞数に1.8メートルの長さを乗した数字が、自分の持っているDNAの長さです。60兆個の細胞を持つと言われる25歳時では、1,080億キロメートル。地球と太陽の距離の約720倍。もう天文学的数字で、「体内には宇宙をもっている」と言われることも解ります。更に余談ですが、成人の血管は、約10万キロメートルで、赤道の約2.5倍の長さだそうです。これも凄い!しかし、DNAとの数字的規模は大きく違いますね。さてさて、話を戻します。この設計図であるDNAが損傷すると、設計図によって機能していた生命活動に支障をきたします。様々なストレスや生活習慣で、DNAが損傷します。損傷したDNAは、DNA修復酵素によって、速やかに修復・修繕されます。しかし、歳を重ねるごとに、修復能力の低下や修復ミス、生活習慣による心身のストレス増加による修復しきれない損傷が残る量が増加します。基本的には、修復されなかったDNAを持つ細胞は、アポトーシスという自殺行為をし、正常なDNAを持つ細胞に悪影響を及ぼさないようにします。しかし、DNAの損傷を修復されず/修復しきれずに、アポトーシスも行われなかった細胞が、異常細胞として存在することになります。そんな損傷したDNAを持った異常細胞は、DNAの複製や細胞分裂によって、体内に増殖します。こうして、細胞の機能が変化し、臓器等の各組織レヴェルにおける機能が異常となるのです。具体的に、DNAの損傷による異常細胞の増殖が、私たちにどのような事態を引き起こすのでしょうか。免疫細胞のDNA異常は、リュウマチ・自己免疫疾患・免疫力低下を引き起こします。皮膚細胞のDNA異常は、タンパク質合成が異常となり、シワやシミをつくり、ハリやツヤを奪う等の、肌の衰えを引き起こします。筋肉や各臓器の細胞のDNA異常は、加齢による衰えによる不全を引き起こします。また、酵素に異常をきたすと、代謝異常から生活習慣病を引き起こすこととなります。分りやすい状況は、異常細胞が“ガン”化するということです。1日に数千から1万個ほどのガン細胞が生じる原因の一つは、上記のようなDNAの損傷に起因する訳です。これらのガン細胞は、私たちの自己免疫で消滅させ、私たちは悪性新生物(悪性腫瘍)、いわゆる癌にならずに健康的に生活することができます。DNAの損傷を抑制し、損傷の修復をより充実させることが、健康な生活に結びつくことになります。健康な生活は、アンチエイジングと密接な関係です。細胞が1日に、最低10億個死滅している現状を、改善すれば良いのです。DNAの修復が確実に機能していけば、細胞の死滅する数を減少させることができます。どうすればいいのでしょうか?【つづく】