『RaiN』(プロローグ)
『RaiN』
人との繋がりが苦痛を生み出すならそんなもの捨ててしまいたかった・・・・・・
そう、その時はまだ、繋がりを失ってしまうことの方が辛いだなんて知らなかったんだ・・・・・・
ボクらは・・・・・・
[Prologue]
雲の向こうで日が沈み、灰色に染まっていた空が黒に侵食される。
暫く降り続いていて止まない雨が男の髪を濡らした。その水滴が気に入らないのか、男は空いている右手を上着で拭い、髪を掻き上げた。
その手を下げると腕を伝い血の雫が指先から落ちた。アスファルトの上に出来た小さな水溜まりの中に赤い靄のように広がり、混ざって、染めていく。
建物の壁に面しているこの細い路地は暗い。雲が遮る月の明かりは無論、街の街灯すらも届かない。
男はただ息を殺し、使えなくなった利き手の代わりに拳銃を左手に持ち、気配を探った。
背中には小型のナイフが数本突き刺さっていたがどれも致命傷を免れていた。
男は心の内で悪態をつく。
逃げる選択肢を浮かんだそばから掻き消し、拳銃を握り直した。
男は静かに安全装置を外す。
独考していた男の背後に人影が浮かんだ。
視線と銃口が即座に振り向き、そして・・・・・・
シンジュクという都市の裏路地に銃声が響いた。
前半に続く。