テーマ:創作童話(818)
カテゴリ:カテゴリ未分類
27分後に先頭を走っていたカーナビネズミが急ブレーキをかけ止まり
ました。 「臭うぞ、注意しろ」 グラッチマウスが前に出ます。錆びた配管の下にネズミの死骸が3匹 横たわっています。首のないもの、手足が引き抜かれているもの、いずれも 胴体は食いちぎられ原型をとどめているものはいません。 ゴロータがグラッチの隣にやって来ました。 「近くに猫はいないワン」 ギンコが前を見つめたままつぶやきます。 「こんなひどい臭いで、ゴロータ、嗅ぎ分けられるのかニャー」 「猫の匂いだけは自信があるよ。いつもギンコさんとヨシコさんの匂いを 嗅いでいるからワン、ここにいた猫は、左奥にある4本目の配管の中に 入って前に進んでいる。そんなに時間は経っていない」 ここでグラッチたちがいる場所の説明をしましょう。前にも述べましたが 太さの違う菅がむき出しで10本近くコンクリートの壁際に何層にも取り付けら れ、要所要所には人間が作業できる大きな空間があるのです。 太い配管の中は、ちょろちょろ流れている下水や大雨が降ればゴーゴーと 濁流になり、ゴミと廃棄物を押し流すほどの水流となります。今の季節は乾期 ですので下水の流れは比較的静かで、動物連合の行く手をこばまないから、 楽に前進できました。 4本目の配管は直径40cmほどの太さで水は流れていません。その菅に潜り 込むネズミ3匹とグラッチマウス、少しだけ間をおいてゴロータが続きます。 ギンコと新之助はその後方につけました。13分11秒後、ゴロータが小さく つぶやきます。 「居るぞ、11m先、猫がいるワン」 ネズミたち一斉に足を止めます。新之助が態勢を低くするとギンコはスルスルと 列の先頭に忍び寄りました。声を抑えたグラッチ、横から声をだします。 「姐さん、アッシにもプライドがありやす。先に行かせてください」 「わかった。アタイは2番目だニャー」 黒茶色に変色し束になっている電線が何本もぶら下がり、黄色、青色、薄い ピンクが、かろうじて判別できる汚れたプラスチックの収納箱や大きさが 違うゴミの残骸、ダンボール箱らしきものが水に浸り悪臭を放っています。 天井近くの細い配管からドブネズミの子供が顔をだしました。 「社長、ここにいた47匹の社員は、全員、やられました。オイラのとっつあんも アイツにひねられバラバラになったの・・・」 「もういい、それ以上いうな、お前は下に降りないでそこにいろ」 薄暗い壁際の先にボンヤリした灯りがあり、それを目指しゆっくり歩きだす グラッチとギンコの表情は緊張に包まれています。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|