|
|
|
2019/07/23
テーマ：創作童話(818)
カテゴリ：カテゴリ未分類
グラッチの足が止まります。段差のあるコンクリート壁の上から
メラメラと燃えるような金色の眼が2つ、下を睨んでいました。 「胡散臭いネズミのボスが訳の分からねえ動物まで引き連れてお出まし かい。まとめて食い殺してやるから、かかってきな」 グラッチは牙のような犬歯をむきだします。 「妖怪猫なんか、ゴミと一緒に下水へ流してやるぜ」 「お前なんかでは物足りねえ、後ろにいるデブ猫は少しはやれるのか」 ギンコがグラッチの前に進みます。 「威勢がいいのは言葉だけなんて、がっかりさせないでニャー、 海の向こうにある日本というところから来た、カッポウギンコや」 「知るか、お前がどこから来たなんてどうでもいい、オレに立ち向かう奴は 87匹いたが、いずれも地獄に追いやった。お前で88匹目だ」 グラッチを見ずにギンコがつぶやきます。 「アンタの顔を潰す気はさらさらないが、アイツはアタイに任せてくれ ないかニャー」 「わかりやした。他のお友達も静観していてよろしいので」 「ああ、アイツとタイマンで決めるニャン」 黒猫がいる上に向かおうと足場を探しているとき、ゴロータが大声を 出します。 「みんな気をつけろ、ボクたちの後方にもう一匹いるワン」 黒く変色したコンクリートの壁面から音もなく跳び下りた真っ黒な猫が 尻尾をピンと立てたまま周りをへいげいするかのように見回しました。 闇に染まれば金色の眼だけが輝くので、妖怪猫と恐れられた理由がこれ だったのです。しんがりにいた新之助とヨシコは後ろを振り返り、頭を低くして 戦闘態勢をとりました。同じ大きさの黒猫は2匹いて、襲う相手の前後から 同時に攻撃するので、ネズミ族だけでなく犬や猫なども簡単に葬り去って いたのです。2番目の黒猫はのそのそ歩き回るだけでヨシコたちに襲い掛かる 様子はまだないから前にいる1番目の黒猫に目を向けましょう。 ギンコが上に昇ろうとしたとき黒猫は、跳び下り、その勢いをつけたまま 垂直の壁面に跳びつき、反動を利用して半回転しながらギンコの頭めがけ 鋭い爪を出しました。寸前、ギンコが左側にある溝に体をひねり落下しな ければ、頭蓋骨に爪が食い込み半殺しになっていたでしょう。 黒猫が半端な強さでないことは、次の動きでも証明されます。溝に逃げ込んだ ギンコを追いつめ強烈な左ジャブを繰り出し、切れ味鋭いカマと同じ役割の 長い爪でひっかきます。ギンコが逃げる先にコンクリート製で細長い長方形の 箱型下水流れがあったために助かりました。その僅かな隙間に飛び込まなければ 血だらけになって大ケガを負っていたに違いありません。 下水流れからうっかり跳び出せば、右手一本の距離にいる黒猫の餌食に なるのでそのままじっと様子をうかがいます。 「袋のネズミならぬ袋の猫か、いつまでもそこにいろ、すぐに下水が押し寄せ お前の命も一緒に流すぜ」 ギンコと前にいる黒猫との小康状態が続いているとき、後方ではもう1匹の 黒猫が後ろに移動したゴロータに突如、襲い掛かりました。 つづく お気に入りの記事を「いいね！」で応援しよう
|
|
