テーマ:創作童話(818)
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桐山清十郎はデルフミュームを見上げています。
「ブッチャーが天文学と海洋学に興味を持ったのは、必然的でござる。 産まれてから地底というエリアだけに居た反動で天体や海中がどう なっているかを知りたいのは理にかないます。ただそれらをエサに 再び地下に戻すような話を作るのは、かなり難しいかも知れませぬ」 人間と巨人の長い禅問答のような話にじれてきた動物たちがバタバタ 動きだしました。いつの間にかバンバンジュウの頭に乗ったカメぱっぱ、 デルフミュームの目の高さにいます。 「ゴメンぱっぱ、クリサーラさん、二本足だけの会話だといっこうに ラチが明かないよ。ボクの意見をいっていいかな」 笑顔を浮かべたクリサーラが、みんなを見回します。 「いいでしょう、いつまでも堂々巡りの会話は時間がもったいないかも 知れませんね。お二人の話は含蓄があり、ためになるのですがブッチャーを 地下に誘い出す目的が希薄になる恐れがあります。少しお休みくださいね」 如才ないカメぱっぱも後を継ぎました。 「二本足さんたちの話を聞いていて、とても参考になったぱっぱ、 いかにも凶悪なツラがまえで悪の化身だと恐れられているブッチャーが 意外にもデリケートで気が弱く、孤独を好む生き物だということがね。 そんな動物だからこそ、大勢で一緒に笑い感動がもらえるエンターテーメント ショーを提供したらどうだろうぱっぱ。ここは手っ取り早く地下に戻す方法、 <ブッチャーと共に一大イベント、地下生物が観たことのないショー>を 企画して彼を正式に招待するの。主催はヒスイ宮殿女王クリサーラさんと その仲間たちでどうです」 すぐに桐山清十郎が反応します。 「いや、奴がそんな単純なエサに食いつくはずはござらん。地上進出を はたし人類を席巻したいま、次に考えるのは地球全体の掌握でござる。 それにまだ赤膚族全体も渦中に収めていないのですぞ。ここは人口増加に 役立つ薬一本に絞りブッチャーを地下におびき寄せる案を再度提案します」 ちゃっかりとガメリッチババローナの首筋に乗った猫のヨシコとカッポウ ギンコが声を上げます。まずヨシコから。 「もう、清ちゃんたら頭ガチガチで固いんだニャー、ブッチャーみたいな奴には まともな考えをぶつけてもそれほど効果はないニャン。ここはカメぱっぱの いうお祭りを仕掛けてみるのも面白いよ」 ギンコも同調します。 「二本足のアイデアは考え過ぎで、もっとストレートで予測外の方が飛びつく ニャー、アタイはカメぱっぱに一票入れる」 二匹の猫を乗せている下から太い声が響きました。 「オレも地下で大騒ぎするイベントに一票入れるガメリッチ」 カメぱっぱの下からバンバンジュウも負けずと怒鳴ります。 「バンバン、カメぱっぱの案に賛成票ジュウジュウ」 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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