テーマ:創作童話(818)
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あれぇーあれ、あれー、ポンポンチッチの背中に眼光鋭い太めのカエルが
乗っています。そう、生田緑地の長老、みんなの知恵袋、ガマのビッグが 仲間の反対を押し切って地下にまでやって来たのです。これにはカメぱっぱや ヨシコにギンコ、ゴロータ、新之助もびっくり仰天、ビヨンヌは口をあんぐり とあけたまま目を白黒させました。 「なんでビッグが、しかし、うれしいパッパ」 カメぱっぱが笑顔を浮かべる隣でヨシコも化け物を見る顔をしています。 「緑地から一歩も外に出たことのないビッグが、よりによってこんな地の 果てまでどうして来るのニャー」 周りを囲んだみんなの顔を見回してビッグが声を出します。 「みなの衆、久しぶりじゃぁー、ワシも残り少ないカエル生を、今、話題の 地下帝国を見聞しあの世にいったとき、仲間に自慢話の材料にするのさ、 ゲーロゲーロ、グァアアア。それにワシの小さな頭がお役に立つならばと、 来たのよケロケロケロ、グアアアー」 このやりとりは、木村トメさんが舞台下で大声を発しながら舞台演出して いる約3時間前のことでした。なおトメさんがなぜ演出しているのかと いえば、その答えは単純です。彼女は大の宝塚ファンで300回以上も 舞台を観たから、任せなの鶴の一声ならぬトメの一声で決まったのです。 反対しようにも他の動物たちには、ショーそのものが理解できません。 前半のウエルカムショーは、地上と地下生物たちの合同で歌とダンスが メーンになります。ハクビシンの新之助が旅役者だったのを緑地仲間が 思い出し、トメさんに進言するとすぐに呼び寄せたトメさん、隣に座らせ ました。最初のころは静かにしていた新之助、途中から急に声を張り上げ ます。 「そこのデカイ恐竜、違う、バンバンジュウじゃない、左側のガメリッチ ババローナ、尻尾をただ左右に振るだけではダメなの、音に合わせて リズムをとるの。トメさん、CDの音、もっと大きくしてくだされ」 ラジカセがあるところまで行って、ボリュームを上げるトメさん 首をひねりました。 「なによ、これだってアタイが上から持ってきたのに、それより、 なんで新之助が監督しているのよ」 ニコニコと嬉しそうな表情を浮かべているトメさんは、地上にいたとき よりも生き生きとしていました。 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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