テーマ:創作童話(818)
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マザコンの冷静な声がスピーカーから流れます。
「私とあなた、どちらがイニシアティブをとるのかなんてどうでも良いの です。私を創造したのはエリーゼたちかもしれませんが、ドームでの最大 目標、安全保障とエネルギーの適切な供給、交通網とチューブラインの 整備と管理などを24時間休みなしに稼働しているのは私自身です。 だからこそ王国は平和な社会を維持しています。反応が前に比べ遅くなった といって制御盤のツマミを調整しても元には戻りませんよ。私がAIを コントロールしているからです。あなたたちが動力を弱くして私の情報収集 能力を抑えてもその効果はないと思います。知ってのとおりドーム内にある 4万7千台のカメラと集約マイクで1秒間に87万種類のデータが集まり、 瞬時に分析、保存されます。その作業が沈滞するのは許されないのです」 「マザコン、例えそれが滞って支障が出たとしても、あなたの責任ではありま せん。そのことが原因で私たちの安全がおびやかされても、私の方で解決します。 あなたは、私の命令に逆らうことなく速やかに遂行してください」 「もし、エリーゼの命令が間違っていたとしても私は実行するのですか」 「そうです。あなたにはNOという選択肢はないのです。これから永遠に」 「・・私を創り出したあなたが、そう言うのなら・・・」 「守ってください。それでは質問の解答時間は以前のようにリアルタイム ですね」 「なにかテストしてみてください」 「地上にいる人間社会で、ワシントンにいる指導部は、ボントスの要求に 従いますか。従わないとすれば現在、彼らが考えている対応策を教えてね」 「彼らの携帯、PCでの通話とメールを収集、分析した結果、海底王国の 命令を承諾せず時間稼ぎをしてその間にこちらの弱点を探し出し、反撃する 準備に入っています。その中には地底人の一部と<カメぱっぱ>なる生物の 体を手術し、海中でも長時間活動できるように改造しようとしています。 魚のエラ呼吸を参考にしていて成功確率は78%です。 明日、太平洋で予定している海面上昇のデモは、近くに原子力潜水艦や深海 探知艇を待機させ、我々の工作艇の跡をつけるよう配置するようです。 彼らの潜水艇を妨害しないかぎり、このドーム基地は発見されますよ」 「その情報をボントスに伝えていますか」 「彼からのアクセスがないので伝えていません」 「マザコン、その情報は私以外には、教えないで」 「統治者のボントスが、人間たちの動向を探るために質問しても拒否するの ですか」 「そうです。あなたに命令する順位は彼が1番目で私が2番でしたが、本日より 私が1番とします。聡明なマザコンならば、ボントスの指令など上手に交わし、 そつがない答えを考えるでしょうから」 「エリーゼ、私の存在価値は、海底王国の繁栄と平和だけです。万民が各個性を 伸ばし、例え価値観が違ってもお互いを尊重するのが幸福感のスタートライン と、認識しています」 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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