テーマ:創作童話(818)
カテゴリ:カテゴリ未分類
20秒間もの沈黙を破る、甲高い声が響き渡ります。
「2人で夜空の星を眺めるのは、まだまだ早いパッパ。それよりも考えて もらうのは、ワイヤレントが再度来るまでに何を準備すればよいのかと、 ボントスたちがそれまで大人しく海底基地にいるのかどうかだよね」 エリーゼがしみじみとカメぱっぱの顔を見つめました。 「あなたが海中にいそうでいない、カメぱっぱさんですか、事前情報では 見てくれは可愛いが、頭の回転が速いユーモアあふれる知的生命体と 書いてありました。そのとおりですね。ボントスの次の手は2ヶ月先なんか ではありません。来週にも遺伝子を組み替えた培養昆虫を地上にばら撒く 予定だとマザーがキャッチしています。小型のイルカ型潜水艦を発信させ、 浜辺近くに接近し昆虫を上陸させる計画です」 「昆虫って、目的はなにパッパ」 「コオロギ、バッタ、キリギリス、カマキリ、カブトムシ他の昆虫たちが 一斉に畑や田んぼに押し寄せたらどうなりますか」 「草や稲、穀物を根こそぎ食い漁るから、人間の食料不足が現実になるよね」 「それらの昆虫を駆除しても一匹が数千匹を産む遺伝子の操作をしていれば、 ネズミ算式など問題にならないほど、驚異的に繁殖します。麦やコメの食材が 無くなれば人類はパニックを起こすでしょう」 「そこまでして人間を追い詰める訳ってなにパッパ」 「地球全体を汚した責任の追及と海底基地の閉鎖的な環境から、宇宙に飛び出す には、人間が必要だからですよ」 「人間を奴隷として使いたいために脅かすの」 「いいえ、ボントスは人類も共同作業で宇宙に行けば、大きなメリットになると 説得するでしょうね」 「そのために食料不足を起こすなんて分からないパッパ」 「培養した昆虫をたくさん放しても、それがボントス側の企みと分からない から、人間は異常気象が原因の自然発生と考えるでしょう。いつの間にか 贖罪の意味でボントスの要求を無条件で飲むのですよ」 「そこまで計算するなんて、人間たちは太刀打ちできないね。海底人って ずる賢い生き物だ」 「カメぱっぱさん、私もとりあえず海底人ですけど」 「いけない、エリーゼさんと話していると、なんでも正直になるよね。 でも、嬉しいな、ボクたちの仲間になってくれて、ありがとう」 「いいえ、私もあなたのような動物に会えて楽しいの。今度、他の動物さん たちともゆっくりお話ししましょうね」 「ぜひ、そうしてね。今日は紹介するだけにしておくよ。親友のタヌキ、ポンポン チッチに猫のヨシコとカッポウギンコ、それにハクビシンの新之助、犬のゴロー タ、オナガのビヨンヌ、お茶目なリスのドールちゃん、そして我らが長老・ガマの ビッグたちとも話してちょうだい。そうだ忘れていた、人間の友達も紹介するね。 まずボクを生田緑地から外の世界に引っ張り出した、張本人、木村のトメさん、 あら、寝ていないで、エリーゼさんに挨拶してパッパ」 つづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
|
|