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人生朝露

人生朝露

「ペルソナ」と荘子。

荘子です。
荘子です。

前回の続き。

参照:荘子と進化論 その123。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/diary/201208220000/

今日はまず最初に「ペルソナ」シリーズと荘子について。

ペルソナ “dream of butterfly”

参照:『ペルソナ』オープニングムービー
http://www.youtube.com/watch?v=GV9J1jA4Kdg

Wikipedia ペルソナシリーズ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%8A%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

「ペルソナシリーズ」というのは、現在でも続いているアトラスから出ているRPGシリーズでして、タイトルからも分かるようにユング心理学をベースに使っている作品です。「ペルソナ」というのは“personal”の語源で、簡単に言うと、「そとづら」。自己の内面の外側にある社会的な仮面の意味です。

『ムーラン』。

参照:Mulan - Reflection
http://www.youtube.com/watch?v=qp_-sgX0M0I

エヴァでいうとここ。

参照:エヴァンゲリオン 第16話 part2
http://www.youtube.com/watch?v=NqBo7ZblMr4&feature=relmfu

参照:ペルソナ (心理学)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%8A_(%E5%BF%83%E7%90%86%E5%AD%A6)

「ペルソナ」シリーズは、第一作からずっと「胡蝶の夢」をテーマとしていまして、蝶のモチーフというのが、いろんなかたちで使われています。ユング心理学と老荘思想という、当ブログの話題とも共通する点の多い作品群でもあります。

「ペルソナ」の場合、
荘子 Zhuangzi。
『昔者莊周夢為胡蝶,栩栩然胡蝶也,自喻適志與!不知周也。俄然覺,則蘧蘧然周也。不知周之夢為胡蝶與,胡蝶之夢為周與?周與胡蝶,則必有分矣。此之謂物化。』

これは、

“ある時、私は蝶になった夢を見た。
私は蝶になりきっていたらしく、それが自分の夢だと自覚できなかったが、
ふと目が覚めてみれば、まぎれもなく私は私であって蝶ではない。
蝶になった夢を私が見ていたのか。
私になった夢を蝶が見ているのか。
きっと私と蝶との間には区別があっても絶対的な違いと呼べるものではなく
そこに因果の関係は成立しないのだろう。
~荘子~”

こうなります。

参照:ペルソナ OP集
http://www.youtube.com/watch?v=3f6gLdts4zA

C.G.ユング
『荘子』の「胡蝶の夢」の原文には因果についての記載はありません。しかし、ユング心理学の場合には、老荘思想と因果律というのは、非常に重要なものとなります。

参照:共時性と老荘思想。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5093/

実は、「夢と現実を行き来して、世界観を構築する」というのは、別にペルソナシリーズに限ったものではなく、
『ドラゴンクエスト6 幻の大地(1995)』。  『ファイナル・ファンタジー10(2001)』。
名作と呼ばれるRPGでは必須と言ってもいいもので、『ドラゴンクエスト6 幻の大地(1995)』や『ファイナル・ファンタジー10(2001)』でも明白に出てきます。ゲームの仮想現実の世界の先に、さらなる仮想(夢)の世界が広がっていて、そこをプレーヤーが行ったり来たりするというストーリーの構造ですね。

マトリョーシカと七福神。
ある意味でRPGの種明かしでもあるんですが、ゲームをするというのは現実ではない世界を旅するんですよね。「ゲームにハマる」という感覚は、胡蝶の夢に近い状況になりうるわけです。まさに夢中ですからね。

参照:井の中のカフカ。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5109/

で、
真・女神転生 太上老君(ダイジョウロウクン)。
「ペルソナ」シリーズの前身『真・女神転生(1992)』の中に、老子の化身・太上老君(タイジョウロウクン)が登場します。(現代の日本でも存在する有名な老子のアバターというと、七福神の寿老人ですが、道教の枠組みの中での老子の存在は太上老君として表れます。)女神転生まで遡ると、シリーズの早い段階で、ユング心理学と老荘思想がからみあっているわけです。

Wikipedia 太上老君
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E4%B8%8A%E8%80%81%E5%90%9B

Wikipedia 寿老人
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%BF%E8%80%81%E4%BA%BA

『真・女神転生』においては、太上老君は、ユング心理学における典型的な老賢者(Old wise man)として、マスター・ヨーダや、灰色のガンダルフのように、叡智と共にあり、人の導き手となる人物として描かれています。

参照:Wikipedia 元型
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%83%E5%9E%8B

老子の化身が老賢者として描かれる作品も多いですが、荘子の化身が老賢者として登場する作品もあります、例えば『三国志演義』の第一回です。
「洞中の張角 南華仙人より書を授かる」(岩波文庫『完訳 三国志』より)。
≪「この本の名は太平要術じゃ。なんじこれを得たからには、必ず天に代わって教化を広め、あまねく世人を救うのじゃ。もし悪心を兆すことがあれば、報いは必定じゃぞ。」張角は平伏して老人に姓名をたずねると、「我こそ南華老仙なり」と言い終わるや、一陣の清風と化して消え失せた。(以上 岩波文庫『完訳 三国志』「第一回 桃の園に宴して 豪傑三たり義を結び、黄巾の賊を斬りて 英雄首めて功を立つ」より)≫

カルト教団・黄巾党の首領に「太平要術の書」を渡すこの南華老仙は荘子の化身です(南華とは荘子の別名)。この仙人、「荘子」の化身とは思えぬセリフを吐きますが、その戒めを破り、悪心を起こした張角は、吐血して死んでしまいます。

ま、
Kung Fu Panda 2  Logo 。
「荘子の化身として老賢者」のパターンでは、『カンフーパンダ』の亀仙人マスター・ウーグウェイが優秀です。↑の画像は、『2』オープニングのロゴですが、亀が釣りをしてるでしょ?その昔、大陸で釣りをしながら「私は亀になりたい」と言った人がいて、その本願成就の図です(笑)。

参照:カンフーパンダと荘子。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5104/

Kung Fu Panda 2 Dreamworks Logo
http://www.youtube.com/watch?v=8HvCYkX4BLY

曳尾塗中と籠の中の鳥。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5085/

閑話休題。もう一度『真・女神転生』。
ニュートラルに設定して長い戦いの旅が終わる頃、太上老君は主人公たちにこう話しかけます。
真・女神転生 太上老君(ダイジョウロウクン)。
“二人ともよくやった。神の統治による千年王国・・・確かに法や規律は必要じゃ。しかし、縛られていては羽ばたけぬ。また、混沌が生み出す世界は、刺激や魅惑にあふれておるが、絶えず争い乱れて定まらぬ。どちらが優っていてもいけない。なにより調和が大切なのじゃ。荒れ果てた地上には方向を見失った人々が大勢いる。皆を導いてやってくれ。”

“感じるか?世界を・・・ 宇宙を・・・お前たちはその一部であり、全てである。法も混沌もその中に含まれるのじゃ。”

参照:真・女神転生 ニュートラルエンディング
http://www.youtube.com/watch?v=JsyAXcu0iqE

真女神転生 悪魔の属性。
↑の図は、悪魔の属性をタイプ別により分ける方法でしてユングのタイプ理論もどきなんですが、太上老君のセリフの意味するところでもあります。「Light(光)とDark(闇)」、「Law(秩序)とChaos(混沌)」という対立概念があり、Neutral(中立)という場が存在します。『女神転生』の世界観を表す上で重要なだけでなく、老荘思想の観点からみても、使えるんです。

参照:心理と物理の“対立する対”。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5094/

例えば、
『ダークナイト( The Dark Knight)』(2008)。
『ダークナイト』でバットマンは Dark-Law で、仮面を外したブルース・ウェインはLight-Law。ジョーカーは Dark-Chaos ですよね。

Zhuangzi
『為善无近名、為惡无近刑。緣督以為經、可以保身、可以全生、可以養親、可以盡年。』(『荘子』(養生主 第三)
→善行をなすのに名声に近づくことなく、悪行を為すのに刑罰に近づくこともない。背筋を伸ばし、真っ正面を向く姿勢を基準としていれば、自らの身を保ち、自らの生を損なうことなく、親を養うことも、与えられた命を使い切ることもできよう。

今日はこの辺で。


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