人生朝露

2007/03/09(金)15:59

花盗人は風流のうち。

さて、今日は昼間に。 気象庁の桜の開花予想によると、福岡は3月20日とのこと。鹿児島は暖かすぎて桜が冬すら認識できず3月30日にまでずれこむという予想になっている。いかにも記録的暖冬を象徴するお話だねぇ。 「花見」というと、「徒然草」の137段。 『花は盛りに、月は隈なきをのみ、見るものかは。 雨に対ひて月を恋ひ、垂れこめて春の行え知らぬも、なほ、あはれに情深し。咲きぬべきほどの梢、散り萎れたる庭などこそ、見所多けれ。』 と始まる、「花が満開、月が満月ってのもつまらんよね」というお話がある。宋代の載益の「春を探るの詩」という詩に「春は枝頭に在ってすでに十分」というのもあるし、何も満開である必要はない、という価値観は昔からあった。甲乙のうち「乙なもの」を選ぶのが通だというのと似たようなもんなのかな。 この百三十七段の後半で兼好法師は、「片田舎の人」の花見を憂いている。 『片田舎の人こそ、色こく、万はもて興ずれ。花の本には、ねぢより、立ち寄り、あからめもせずまもりて、酒飲み、連歌して、果は、大きなる枝、心なく折り取りぬ。泉には手足さし浸して、雪には下り立ちて跡つけなど、万の物、よそながら見ることなし・・・』 花見のときのマナーの悪さがムカつく、という、現代のネット上でも必ず出てくる話題ですな。これについては、挿絵があったので、こちらも(参照)。花見の時のマナーの悪さというのは、いつの時代でも非難の的だったんだろうねぇ。 ここで気になるのは、「大きなる枝、心なく折り取りぬ」という部分。 兼好法師が怒るように「花の枝を折る」というのは、不心得な行動であることは確かだけど、現代の我々には、「花盗人(はなぬすびと)は風流のうち」という言葉も残っているし、生きた草花を活ける「華道」も日本の文化としてある。「枝を折る」というのは全否定していたものとは言えない。ここで思い出したのが、「紅葉狩り」。紅葉を鑑賞するのに、なぜ「狩り」という言葉を使うのか?優等生は「狩りをするように、紅葉をもとめて山野に分け入るから」と答える。 しかし、「手折る」という言葉は「手で花や枝を折る」という意味で今でも使われている。「手折り」で検索すると、「紅葉狩り」が始まったとされる頃の万葉集にも用例がある。 『もみち葉を 散らまく惜しみ 手折り来て 今夜かざしつ 何か思はむ』 『奈良山を にほはす黄葉 手折り来て 今夜かざしつ 散らば散るとも』 つまり、「紅葉狩り」というのは「葡萄狩り」なんかと同じで、現実に「手折り」して持ってくるという意味だった、という解釈もできる。枝を折って持ち帰るから「狩り」、という方が、自然な解釈だと思うね。これに関してはNHKの「ことばおじさん」のページでも指摘されている。 参照: 「きになることば」 10月26日 「もみじ」はかえで? 万葉集における「手折り」の用例は紅葉だけでなく、「花」に関してもある。 『梅の花 まづ咲く枝を 手折りてば つとと名付けて よそへてむかも』 「咲いたばっかりの梅の花を折ったら、誰かへの贈り物にするんじゃないかと噂になってしまうかもね」という、結構色っぽい詩。鎌倉時代の兼好法師が怒っている「手折り」という行為は、奈良や平安の貴族間ではけっこう多かったみたい。 ただし、鎌倉のころの花見というのは、それこそ公共の場で行われるようになっているので、眉を顰める兼好法師の態度の方が正しい。山奥や私邸の枝を折るという奈良時代の貴族の行為とも異なる。現代の場合には、公園の桜の枝を折ると「器物損壊」、持ち帰ると「窃盗」として犯罪になる。それに、鎌倉のころの「花」といえば、梅や山桜だろうから結構丈夫なんだけど、今の日本人にとっての「桜」の代表であるソメイヨシノはデリケートな品種なので、注意が必要。江戸時代の末期に江戸の染井村で育成され、明治期や戦後に大量に植栽された「寿命60年」とも言われるソメイヨシノは、枝を折ったりすると木の寿命を縮める可能性がある。 ちなみに、明治のころのお花見のマナーについては、読売の散る花に心も揺れた明治人という記事を発見したので、ついでに。 >「酔って桜の枝を折り、通行人に悪口の士族に罰金/東京・向島」(1877年=明治10年4月14日) なんていう記事は、いつの時代にあっても変わらない人の営みを感じますな。 というわけで、桜の小枝も大切に(古いな)。 今夜、東国原英夫のオールナイトニッポンがある。日本の辺境の知事が、日本一の深夜ラジオ番組に出る。変な時代になったもんだ。一番心配なのは、MRTラジオの機材が全国放送に耐えうるか?というところ。メールの一つでも出そうかと思ったけど、これ、10代限定の企画らしいので、そういうわけにもいかんね。中島みゆきのオールナイトの時の予備テープがあるので、そちらに録音しておこう。 ああ、もう時間。 先週の「知っとこ!」の「世界の朝ごはん」は、スペインのマドリード。マドリードでは日本人観光客の誘致に熱心なだけでなくて、日本食ブームでもあるらしい。箸の使い方も達者なもの。それと、マドリード市内のホットチョコレートのお店を紹介。マドリードでは、チョコレートショップが多いのだけど、チョコにチュロスを漬けて食べることが多いのでチュロスの美味い店が繁盛するとのこと。ちょうど、この前のメキシコシティでもチョコの話題があったけど、植民地であるメキシコ原産のカカオがスペイン人にも愛されるようになったという経緯も興味深い。それと、マドリードの世界最古のレストラン。 1725年に創業されたレストランで、ギネスブックにも載っている。目玉は「豚の丸焼き」で、創業当時からの味を守っているのですと。朝ごはんは普通。スパニッシュオムレツに、ツナ入りのエンパナーダ、チーズケーキ。 先週の「済NOW」は大丸。といっても、後半部分だけだと、あんまり把握できない。大丸って、新撰組との関わりあいもあるよね。創業者は「論語とそろばん」みたいな人だけど・・時間が無い。ネット通販の話もあって、楽天のこともやっていた。へ~~、そんなに買っているんだ~(楽天ブロガーにあるまじき態度)。博多駅に進出する阪急との競争も消費者としては面白そうではある。当事者はそれどころではないだろうけど。あとは、「がばいばあちゃん」のブームに乗った武雄市のキャンペーンと、教会と五島うどんで売り込む五島のお話。五島うどんがまた食べたくなる。のんちゃんの「これで勝負!」は、福岡のイノベーションという会社を。おお、社長さん広庭さんのブログもあるね。手品を使ってコミュニケーション能力を高めようという事業をやっていて、番組がマジックショーになっていた。えらく、加地さんがハイテンション。 はい、限界。 今日はこの辺で。 次の更新は週明けかな。

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