人生朝露

今日も暇ナシ。
ゲイ・ボルグ号の調子もまだまだで、当分は更新は難しいです。

さて、先週の「九州街道ものがたり」（本放送は２週間前）は、日向国高鍋藩の「明倫堂」。
上杉鷹山の実の兄、秋月種茂（たねしげ）によって建てられた藩校で、存寄（ぞんじより）という高鍋藩の家臣による申し立て制度によって、設立されたものらしい。これが、実に興味深い。

高鍋というのは、宮崎県海沿い、南北で言うと真ん中くらい。神武の東征の出発点って、この辺のはず。え～～、今井美樹は、高鍋の出身ですよ。秋月氏というと、今の福岡県朝倉市辺りから、秀吉の九州統一で高鍋に移ってきている。今で言うと、紀宮さまの旦那さんの黒田さんにゆかりのある家と言った方が分かりやすいか。クロサワの「隠し砦の三悪人」（スターウォーズのＲ２と３ＰＯのキャラの元ネタになった作品ね）も秋月が出ているけど、あれは、関係ないですとＪさんに叱られたことがある。

秋月種茂は、その高鍋藩の７代目藩主で、家重のころの宝暦六年（１７５６）に１８歳で家督を相続している。この辺は、弟の鷹山と同じだな。ちなみに、お兄さんの種茂の雅号は「鶴山」らしい。政策は、藩政全般において細やかで、子沢山の家に米や麦を支給するという、今で言うところの「児童手当」や、捨て子禁止令を徹底させたとか、先見的なこともやっておる。その種茂が最も力を入れたのが、「教育」で、明倫堂は種茂の政策を象徴する場所なんですな。

この「明倫堂」の特徴は、まず、武士のみならず、農民にも教育を施したことで、高鍋藩は領民全般で教育レベルが高かった。「明倫堂」には、小学と大学があって、小学の頃には「行習斎」という倫理と規範意識を叩き込み、大学では「著習斎」といって、自由研究をすることを重んじた。教材は朱子学をベースにして、論語、孝経、大学あたり。理念としては「五倫」が尊ばれたらしい。

「五倫」というのは、「父子の親、君臣の義、夫婦の別、長幼の序、朋友の信」のことで、この価値観を領民が共有したということらしい（ちなみに、宮本武蔵の「ごりん」は、「地水火風空」の「五輪」ね。仏教的な意味合いの強い言葉ね。）

「明倫」というのは、「孟子」の「庠序（しょうじょ）学校を設け為して、以って之を教う。皆、人倫を明らかにする所以なり」という一説からの引用で、要は「学問をすることで、人間としての道を学ぶ」という意味かな。長州の藩校「明倫館」も、ここからのはず。種茂の目指した高鍋藩というのは、領民の倫理意識が高く、「道に物が落ちても誰もくすねたりはしないような土地」だったらしい。

・・ここで思い出したのだけど、陳先生の小説十八史略に、

「海内（天下）升平（太平）、路に遺ち（おち）たるを拾わず。外戸、閉ざさず。商旅、野宿す。」

というのがあったな。「天下は太平、路に落ちたものを誰も拾わず、通りに面した家でも閂をかけず、行商の者も襲われる心配もないので野宿していた」というもの。

これは、唐の時代の貞観の頃、太宗・李世民の「貞観の治」を象徴的に表現している記述で、あまりにも理想的なので、「誇張ではないか」」と指摘されることもある記述らしいけど、どうも、状況証拠から言って、「貞観の治」の頃の治安の良さ本物だったそうな。つーか、太宗が即位するまでの経緯から言って、ここだけ誇張したというは無理。ちなみに、日本でも清和天皇の頃に、中国のこの時代にあやかって「貞観」という元号があるね。

さて、農民にも等しく教育を受けさせる理想高き「明倫堂」の出身者には、日本で初めて孤児院を設立した「児童福祉の父」・石井十次もいる。「児童手当」を先駆けた種茂の遺志を継いだのかも知れん。

ちなみに、種茂の弟の上杉鷹山が有名だけど、秋月藩の中興の祖、黒田長舒（ながのぶ）は、種茂の次男なんだよね。

現在の「明倫堂跡」には、高鍋農業高校がある。そういや、武者小路実篤の「新しき村」は、高鍋藩の木城町だったんじゃなかったっけ・・・。

もう、時間切れ。
後で書き足そう。

今日はこの辺で。