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耳(ミミ)とチャッピの布団

「戦争の犬たち」

「戦争の犬たち」
この映画だけは、どちらが先になってもかまいませんから、ぜひ映画と原作両方を楽しまれることお勧めします。
映画から先にいくと、監督はもともとドキュメンタリー出身のジョン・アーヴィン。
主演はクリストファー・ウォーケン。共演に「山猫は眠らない」のトム・ベレンジャー。

原作はあまりに有名なFrederick Forsyth(フレデリック・フォーサイス)。「ジャッカルの日」「オデッサ・ファイル」に続いて発表されたのが「戦争の犬たち」。

ものすごい話です。アフリカ某国の利権を得たい英巨大企業が、利権獲得の邪魔になる現独裁政権から、自分たちに友好的な人物に政権を移行させるため「傭兵」を雇ってクーデターを企てます。
この傭兵のリーダーがクリストファー・ウォーケン演ずるシャノン。

非常に緻密な計画のもとシャノンは調査のためアフリカに飛びます。
その地で隠密裏に大統領府などを調べますが、夜間の行動中に歩哨に見つかりそうになり、止むなく殺害してしまいます。この殺人が引き金となってシャノンは投獄され、ひどい拷問を受けます。
滞在中に知り合いになったアメリカ人ジャーナリストの助けで、放免となり国外追放となりますが、投獄中にひとりの人物と出会います。
独裁政権の打倒活動のために投獄されていた民主活動家です。

イギリスに帰ったシャノンは、軍事行動を実施するための準備にとりかかります。
少数の傭兵仲間を集めて、闇ルートからの武器や弾薬の入手と運搬。船舶の確保などなど。
そして戦闘要員としてコンゴ傭兵時代の訓練された兵士も加わります。

沖合いでゴムボートに乗り移ったシャノンたちは隠密裏に上陸。海岸線の歩哨を倒して一路大統領府へ。
ここから凄まじい戦闘シーンになります。仲間も倒れますが、大統領府を制圧して独裁者を殺害します。

戦闘が終わったところに、シャノンを雇ったメンバーがヘリで乗り込んできます。
全ては筋書き通りに運んだと思い込んでいる雇い主の前に、シャノンが投獄中知り合った民主活動家が姿を現します。
シャノンは雇い主の思いどうりにはさせなかったのです。独裁者も雇い主が政権につかせようとしている人物も五十歩百歩。汚い手を使ってシャノンたちを利用しようとした雇い主の裏をかいた訳です。
彼らもまたシャノンの手によって殺害されます。
仲間の遺体とともにシャノンはジープでこの町を走り去っていきます。

他の戦争映画のようなアクションだけ期待して観ると、前半の準備行動なんか退屈してしまいますよ。
実はこの映画の見所は前半部分にあると思ってください。
戦争というのが、ポンと兵士を戦場に送り出したらOKなんて簡単なものでないことが、前半のシーンに要約されてます。
それでも映画ですから、かなりはしょってて簡潔に展開されてます。

原作ではもっと綿密に戦争準備(これ自体が戦争の一部)が書かれてます。
金融のメカニズムを使った資金の運用。武器調達そのものよりも、国境を越えた運搬にどのような工夫がいるか。
フォーサイス自信がジャーナリスト出身で、非常に事細かく調べ上げてます。
戦争行為というものが、兵士による純軍事行動よりも、資金調達と兵站に対する成否で結果が決まってしまうという事がよく分かります。
この辺のところは司馬遼太郎さんの小説なんかでも、よく書かれてるとこです。
経済活動の延長線上に戦争があるという言葉を聞きますが、まさにその世界にどっぷり浸かった映画と云えます。

さて「傭兵」とは...我々には馴染みのない世界なので、蔵書を探したら落合信彦さんの執筆で「傭兵部隊(ルポルタージュ)」というのが出てきました。
かなり古い出版物なので改めてパラパラと読み返してみました。
一般的なイメージでは「傭兵」=「戦争フリーク」みたいな感じですが、ここに登場する実在の傭兵たちは単に戦闘を職業にしているだけで、傭兵になったいきさつも様々です。
正式な軍隊に属してませんが、訓練学校などを運営して常々トレーニングは積んでます。
給与は映画みたいに高くありません。映画では1ミッション何千ドルなんてことがでてきますが、実際はとても命かけてやるような職業ではなさそうです。
それでも「傭兵」として生きていかねばならない彼らには、どこか鬱曲したところが見受けられました。
やはり「軍人」と違って、雇われて戦場に赴く彼らには、私たちでは理解しがたい何かがあるみたいです。
その辺は「戦争の犬たち」でもうまく描かれてます。

アフリカというのはどうなんでしょうかねぇ。この作品はフィクションですが、実際にビアフラの問題なんか何十年続いてます。
ある人はアフリカだけは百年たってもダメだろう。なぜなら基本的に「村」の考えから脱却できないのだから...国が独立しても、次に内部の民族単位で、さらに村単位で内紛と独裁が続くんだから。なんて云ってました。
全てのアフリカの国がそうではないでしょうが、最近では「ブラックフォークダウン」で描かれてた世界。
結局「貧困」と「教育」の問題がネックになってしまうんでしょうね。
そこに超大国が付け入って問題解決どころか、さらに悲惨な現実を生み出してしまう...
フォーサイスはBBCレポーター時代に、アフリカでおこっている現実を政治的配慮から正しく報道させないマスコミに嫌気がさしてレポーターを降りています。

フォーサイスは「戦争の犬たち」執筆後、東南アジアのある国に数名のメンバーと大量の武器を持ち込もうとして逮捕されたという話を聞いたことあります。
当時「戦争の犬たち」は、実はフォーサイスが行動をおこすためのシュミレーションでもあったと云われたものです。
いろんな背景を背負って、でも「戦争の犬たち」は私がお勧めする作品のひとつです。
シャノン役のクリストファー・ウォーケンは、鋭いリーダーシップを持ちながら影のある傭兵をみごとに演じきってます。アフリカの纏わりつくような「汗」の臭いを試してください。


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