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テーマ:猫のいる生活(136000)
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1969年公開の映画「ワイルドバンチ」はこのブログでもなんどか取り上げてきました。
それほど、この西部劇の衝撃的な映像は強烈だった。 まだCGが無い時代に、すさまじい迫力で、これまでの西部劇とはあきらかに一線を画する映像美が描かれていました。 この映画を撮った後、サム・ペキンパーは編集室でひとり隠れて涙したと云います。 それくらい映像化に苦労があり、思い入れもひとかたならなかった作品だったのです。 そもそもサム・ペキンパーには無法者の素養がありました。 サム・ペキンパー自身が打ち明けています。 そして映画「ワイルドバンチ」に登場するのは無法者ばかりです。 主人公はパイクを演ずるウィリアム・ホールデンを筆頭に、アーネスト・ボーグナイン、エドモンド・オブライエン、ウォーレン・オーツとどれも個性派ぞろい。 彼らは銀行強盗です。 そんな一行を追っかけるのが、鉄道会社に雇われたロバート・ライアン率いる囚人の一団。 こちらはパイク一味を殺すことによって多額の報奨金と自由の身が保証されてます。 パイクたちと丁々発止のやりとりをし、最後にパイクたちと壮絶な死闘を繰り広げるのが、マパッチ将軍のメキシコ政府軍。 これがまた、なんとも言葉にできないほどアホ軍団で、貧しいメキシコ貧民から略奪して生活する集団。 と、まっとうな登場人物は、力もなく、ただ略奪だけされるメキシコの一般市民だけなんですな。 それは「ガンスモーク」や「ライフルマン」と云った1950年代後半の西部劇でした。 サム・ペキンパーは「ワイルドバンチ」を撮った後、1972年にスティーブ・マックイーン主演の「ゲッタウェイ」を制作し、マックイーンはこのとき共演したアリ・マッグローと結婚しています。 この映画ではスローモーションによる強烈なバイオレンスを描いています。 これまでの西部劇では、銃を撃つ、撃たれる、倒れる...の1シーンが時間をかけて描かれ、まるで死さえも美学としてとらえられているのです。 「ワイルドバンチ」を鑑賞したジョン・ウェインは「これは西部劇に対しての冒涜だ!」と激怒したと云います。 これほど異質な映画を、それもほされている監督を使って撮らせた、弱小プロダクションではなく、大映画会社のワーナーブラザーズの英断に拍手を送りたいですね。 「ワイルドバンチ」のラストのバイオレンスシーンは、明らかに黒澤の「七人の侍」や「椿三十郎」を手本にしてます。 特に「椿三十郎」の三船敏郎と仲代達也のすさまじい決闘シーンは、この映画でよく再現されています。 このラストのパイク一味4名と200名を越すメキシコ軍との壮絶な死闘は、6台のマルチカメラで11日間ぶっとおしで撮影されました。 映画製作者たちは、この銃撃戦を「デス・バレエ」(死のバレエ)と呼んで評価しています。 「ワイルドバンチ」はメキシコ北部のパリスと云う、ほとんど廃墟の街で撮影がおこなわれました。 ここはメキシコ革命で、実際に戦闘がおこなわれた地域です。 ここに集結したメキシコ軍のエキストラは、実際のメキシコ兵ばかりです。 総撮影期間は70日。 サム・ペキンパーは毎朝、4時起きし、その日の台本の推敲をして、7時に俳優たちを起こします。 それから撮影にかかり、撮影が終わるとスタッフとミーティング。 それが終わって、やっと床に就けるのは毎日深夜だったそうです。 この映画で最も大切なシーンがあります。 ラストシーンで、パイク一味4名が売春宿から、メキシコ軍が駐屯している場所まで歩いて行くシーンです。 「ただ歩くだけ?」 そうなんです、このシーンは台本でたった3行のシーンなんです。 もともとアシスタント・ディレクターは、途中でメキシコ兵の裁判シーンかなんか用意してたのですが、サム・ペキンパーの一声で"ただ歩かせる"シーンにとって代わったのです。 酔ったメキシコ兵の間をかいくぐりながら、パイクたち4名が歩いて行く。 手にはライフル。 それを極めて遠くから、望遠レンズを使って、ロングショットでとらえています。 このシーンには、盗みしか頭になかった集団が、仲間やメキシコの寒村での経験から、心がかわっていく様子が物語れているのです。 やすものの日本映画のように、ワザとらしいセリフは一切なし。 ただ歩くと云うシーンだけで、ここに込められたパイクたちの心情が物語れているのです。 このシーンで、監督の意図が理解できたのは、撮影が済んでからだったとスタッフのひとりが供述しています。 歩いて来た先はメキシコ軍の駐屯地。 そこでメキシコ軍の将軍を撃ち殺したパイクたちに、メキシコ軍は一瞬凍りつきます。 ふてきな微笑みを浮かべるアーネスト・ボーグナイン。 それは自分たちの末路を知ってる人間の微笑みだったのです。 自動車が発明されて、無法者が排除される変わりゆく時代。 無法者の喪失感がみごとに描かれてるシーンです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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