耳(ミミ)とチャッピの布団

2017/12/14(木)05:30

天気予報とスーパーコンピュータ

いまのようにハイテク機器がない時代、人々は雲の動きや風の向きから天気を予想してました。 科学的な観測が始まったのは、17世紀初頭に温度計が発明され、1643年にトリチェリが気圧計を発明してからです。 天気予報が始まったきっかけは、フランスの戦艦アンリ4世号が暴風に襲われて沈没したことです。 天気予報を出してればこんな事故を避けることができたのにと考えたフランスは、1858年に天気図を用いて天気予報をスタートさせました。 それが世界に広まって、今日に至ってるのです。 現代の日本では次の3段階の工程を経て天気予報をおこなっています。 1.気象衛星ひまわりや全国20ヵ所のレーダー、1,300ヵ所のアメダスなどがデータ収集する。 2.それらの観測データをスーパーコンピュータ(スパコン)に入力。 物理学の方程式で風や気温などの時間変化を計算して将来の気象状況を予測する。 3.スパコンの出した数値予報と実際に刻一刻と変わる天気の様子を照らし合わせ、予報官の気象に対する知識や経験を総動員して、最終的に天気予報を作るのです。 つまり結局は人間が介在しないと正確な天気予報はできないと云う仕組みです。 きょうの題材は2.のスパコンでのデータ処理なのですが、日本の天気予報で使ってるスパコンと云うのは、よく知られている「京」と云う機械です。 ではスパコンそのものは、どんなものかと云うと、通常は個人が使っているPCの100倍~1,000倍以上の処理速度を持っているコンピュータです。 そのためにCPUも高速だし、OSもWindows ではなく、特殊なものを使うのですが、かと云って必ずしも普通のPC用を使ってはいけないと云う理由づけもありません。 実はスパコンの定義と云うのは曖昧で、機械の提供者側がスパコンと云えばそれはスパコンだと云って良いのです。 実際、過去には普通のPC用CPUにWindows でスパコンと云うのも販売されてました。 極端に云えばMac Proだってスパコンだと呼ぶ人が居ます。 しかし「京」クラスになると、とても個人のPCでは太刀打ちできません。 「京」は今、神戸市のポートアイランドにある理化学研究所計算科学研究機構に鎮座してます。 建物の3階、柱が1本もない50m ×60m の広々としたスペースに、「京」のラック、864台が整然と並んでいるのです。 「京」が誇るのは、1秒間に1京510兆回の計算速度です。 と云っても、普通の人にはピンときませんよね? これを分かりやすく例えると、地球上に居る人類(約70億人)全員が毎秒1回計算したとして17日間かかる計算を、わずか1秒でやってのけてしまうのだそうです。 1億2千万人の日本人だけで例えると、全員が1秒に1回、不眠不休で2年8か月かけて行う計算を1秒でやってしまう計算です。 「京」の開発費は1,120億円です。 それ以外に13メガワットの電気代と土地代と管理費で年間80億円の維持費がかかります。 実は、これだけ費用をかけてもメーカーはスパコンでは儲かりません。 ただ世界規模の高速コンピュータを開発できると云う技術力を鼓舞できるだけです。 これには蓮舫が事業仕分けで放った「2位では駄目なんでしょうか?」と云う有名な質問が関係してます。 当時、「京」を開発してた富士通以外に、日立とNECも別にスパコンを開発(させられて?)ました。 これが蓮舫の放った一言を日立とNECは撤退するチャンスにしてしまったのです。 ひとり残ってワリを食ったのは「京」を開発していた富士通と云うワケです。 そんな高速なスパコンが天気予報に必要なのか? 要るのですね。 今の「ひまわり」は「8号」ですが、これが「7号」の約50倍のデータを送ってきます。 カメラが高精細になったからです。 みなさんのスマホも年々歳々、性能がアップしてるように、気象観測衛星のカメラもどんどん進化してます。 「ひまわり8号」は観測頻度が「7号」の3倍、分解能も2倍。 しかも世界初のカラー画像撮影です。 撮影するチャンネル数も約3倍に増えました。 その結果、データ量はひまわり7号の約50倍になったと云うワケです。 しかも必要とするデータは「ひまわり」からだけでは不足してます。 世界中の観測データがないと、正しい予報ができません。 世界中から「ひまわり」クラスのデータが送られてきて、それをビッグデータとして処理し、朝の5時、昼の11時、夕方の5時の3回「数値予報」と呼ばれる技術が使われた予報を発信しなければならないのです。 スパコンを用いて、未来の大気状態をシミュレーションすることを「数値予報」といいます 数値予報と云うのは、世界中から集められた膨大なデータを、コンピュータで取り扱いやすいようにするのです。 具体的には規則正しく並んだ格子で大気を細かく区切り、そのひとつひとつの格子点に山岳などの地形の影響、太陽からの放射、地表面の摩擦、大気と地表面の熱や水蒸気の交換、雲の生成・消滅や降水などのさまざまなデータをあてはめます。 これをもとにして、さまざまな大気の現象を表現する数式をあてはめ、未来の大気の状態を計算するのです。 処理ソフトの中核は気象庁の職員が自ら開発しています。 「宇宙から届いたデータをできるだけ早く処理して天気予報に使える形にすることが天気予報作業の迅速さに直結します。つまり"時間との闘い"なのです」 現在は宇宙から生データが届いてから約10分で処理を行う仕組みになっています。 人間の手で天気図を書き予報するのと比べて、スパコンで計算するスピードは圧倒的です。 予報に不可欠な情報量も段違いです。 なのに最後の最後の段になって、人間の経験とカンに頼らないと正確な天気予報が出せないのです。 特にゲリラ豪雨など小さいスケールで発生する現象はスパコンはめっぽう弱いのです。 コンピューターには誤差があり、季節ごとの傾向も反映するようプログラムされているので、小さいスケールで発生する現象や異常気象の時期は逆に予報が苦手なんですな。 そこで、最後の最後のサジ加減は人間の手でと云うことになるのです。 要するにスパコンと人間の二人三脚で現在の天気予報は行われているのですね。

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