耳（ミミ）とチャッピの布団

昔、「天使のささやき」と云う大ヒット曲がありました。
１９７４年のシングルで、歌ってたのは"スリー・ディグリーズ"と云うトリオの女性ボーカルグループ。
１９７１年に主演のジーン・ハックマンが"ポパイ"刑事役で公開された映画「フレンチ・コネクション」にこのスリー・ディグリーズが出演してて、「Everybody gets to go to the Moon」と云う曲を披露してます。
そのスリー・ディグリーズのシングル第１弾が１９７４年に発売した「荒野のならず者」。
これの原題は「Dirty Ol' Man」ですから、直訳すると「いやらしいだけのオヤジ！」（笑）
歌詞の中で「You're a dirty old man！（あんたはいやらしいだけのおっさん）」が何回も繰り返されて、オヤジとしては居たたまれない楽曲なんですな。
ならず者と云えば西部劇がつきものですが、たまたま昨日は実際の西部開拓時代の生活に触れましたので、きようは西部のならず者についてのお話を。
西部劇でならず者と云えば、先ず筆頭にあげられるのが"ビリー・ザ・キッド"でしょう。
きょうは実在の人物ばかり取り上げるので、このビリー・ザ・キッドも実在です。

ビリー・ザ・キッドは意外にもニューヨーク生まれなんですよ。
育ったのはニューメキシコ州です。
１２歳の時に、母親を侮辱した男を殺してアウトローとなってから、２１歳で撃たれて殺されるまでに２１人を殺害してます。
キッドはなんども強盗を働いたあげく、１８８１年に丸腰で、寝室から食べ物を取りに部屋を出たところをパット・ギャレット保安官に闇討ちされて殺されたと云う話ですが、異説が数多くあり真相は分かりません。
キッドを射殺したギャレットも１９０８年に、土地売買のトラブルで背後から銃撃されて死亡しました。
お次は"ブッチ・キャシディ"。
１９６９年にポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが主演して公開されたアメリカン・ニューシネマの代表作「明日に向って撃て！」のモデルになった人物です。
ポール・ニューマンの演じてたのがブッチ・キャシディで、レッドフォードの演じてたのがザ・サンダンス・キッドです。
ふたりは強盗団「ワイルドバンチ」を結成してネバダやモンタナで銀行強盗や列車強盗を繰り返したのですね。
ブッチ・キャシディは官憲や鉄道会社から雇われた探偵に追われて、サンダンス・キッドとともに南米ボリビアに逃亡しましたが、隠れ家を包囲されて殺害されたとされてます。
しかし、ボリビア以降もブッチ・キャシディが生きていると云う証人が幾人もいて、これまた真相は闇なんですな。
特にアメリカの法医学人類学者クライド・スノーが１９９１年に遺品のＤＮＡを調べたのですが、ふたりに合致するＤＮＡが全く見つからなかったのです。
ブッチ・キャシディが結成した強盗団「ワイルドバンチ」は先程ご紹介した「明日に向って撃て！」のモデルとともに、１９６９年にサム・ペキンパーが監督した傑作映画「ワイルドバンチ」のモデルでもありました。

実際の「ワイルドバンチ」メンバーは、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドの他に、ベン・キルパトリック、ブッチ・キャシディ、ウィリアム・カーヴァー、キッド・カーリー、ボブ・ミークスなどがいました。
このワイルドバンチ メンバーと密接な関係にあったのが女性のならず者、バセット・ガールズ姉妹（ジョシー・バセットとアン・バセット）です。
このふたりは両親から広大な牧場をひきつぐと、一味に活きの良い馬や牛肉を提供していました。
その見返りは盗んできた馬や牛で、妹のアン・バセットはブッチ・キャシディの恋人でもあり、キャシディが１８９４年から１８ヶ月間投獄されたときは、別のワイルドバンチ メンバーと付き合ったりしてました。
ジョシー・バセットも数人のワイルドバンチ メンバーと付きあってます。
こうした女性のならず者も数多く居て、西部では普通のことだったようです。
ワイルドバンチ メンバーそのものにも女性のならず者"ローラ・ブリオン"と云うのもいました。
ローラ・ブリオンの肖像画には番号２１２２に取り消し線が引かれ、手書きの４７０９に置き換えられてます。
この写真は身分証明書に使われました。
この辺で女性で、ならず者ぢゃない方の有名人に触れましょう。
どちらも名前くらいご存知だと思います。

先ずは"アニー・オークレイ"。
カウボーイの女性版「カウガール」です。
アニーは１５,０００人以上の女性に銃の使い方を教えたと云われていて、６２歳のときでさえなをも記録を破り続けたそうです。
「私は、すべての女性が赤ちゃんの扱い方を知っているのと同じくらい、自然に銃の扱い方を知っていることを望んでいます」これがアニーの信条だったのです。
もうひとりは"カラミティジェーン"。
ワイルドウェストショーで名高い"ワイルド・ビル・ヒコック"の奥さんです。
ジェーンは脚光を浴びて、１８９６年～１９０１年までワイルドウェストショーに出演してました。

１８７６年、ヒコックはデッドウッドでポーカーをしている時に背後から射殺されました。
この時の彼の手役が「Ａ」と「８」のツーペアだったことから、この手役をデッドマンズ・ハンド（死者の手）と呼ぶようになりました。
このように、この時代の西部では女性も男に負けず銃を手にして生活してたようで、映画で観るような大人しいのではなかったようです。