2008/09/11(木)22:31
私の男 直木賞作品を読みました。
ちょっと遅ればせながらの感はありますが、読んでみました。
作者が桜庭一樹さんで、はじめこの人のことは知らなかったので、
てっきり男だと思っていたのですが、読み出してすぐに女性だと
わかる文章ですね。すごくディテールが細かいです。緻密な表現で
リアルに心情が伝わってきます。
ストーリーは、幼い頃災害で家族を亡くした少女が主人公で、若い養父と
彼女のフィアンセの結婚式前夜から始まります。
全体を包む重く暗いトーンとすごく丁寧な表現で独特の雰囲気が
づっと続きます。しかしともすればしつこくなりすぎる細かい表現も
一歩手前で急展開したりするところは、なかなかやるね、と感じさせます。
若い女、若い男、若い父親(私の男)の感情と生き方。また彼らを取り巻く
人間模様と北の国のグレーな感じがとても素直に表現されています。
さらに殺人事件のサスペンス的な要素も少し取り入れていて、これが
作品の幅を広げていますね。
作者は鳥取出身のようですがこれほど北の港の雰囲気を表現できるのは
かなりフィールドワークをしたのだろうなと想像します。
また、娘と父親の微妙なセクシャルな表現もさすがに女性的で感心しました。
私はこういう感じの小説はあまり読んだことがないので、非常に
新鮮で、没頭できました。秋の夜長、かなりオススメですね。