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テーマ:洋楽(3281)
カテゴリ:60年代洋楽
特にマイク・ラヴは「こんなもん誰に聴かせるんだ?犬か?」という名言を残しているが、「ペット・サウンズ」というタイトルもそこから来ているという逸話にはチト笑った。 名前なんて後からついてくるもんですねえワンワン このアルバムのトップを飾る「Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)」は、地味な曲が大半を占める本作の中でもほとんど唯一と言えるアップテンポのナンバーだが、この曲からしてそれまでのビーチボーイズとは違う感触を持っている事は容易に分かる。 ハープシコードの美しい響きから始まり、「一緒にいられるなんて素敵じゃないか」と陽気に歌うこの曲は、冒頭から飛びだすフックの効いたメロディ、2分28秒という短さながらも凝りに凝った展開とアレンジが素晴らしく、まさしくポップ・シンフォニーと呼ぶにふさわしい仕上がりになっている。 ルート音を意図的に外すベース・ラインも曲に奥行きを与えており、これはポール・マッカートニーにも影響を与えた。 ただ、ポップで楽しい曲ではあるのだが、同時にここには言いようのない孤独感や繊細さも感じられた。 そして、それはこのアルバム全体を支配するものでもあった。 人が子供から大人になる時に誰もが多かれ少なかれ感じる哀しみ、孤独、挫折…ブライアンはそれをポップでみずみずしく表現する事に成功した。 「美しい」とよく形容されるこのアルバムに心惹かれる人は、音楽の中にそれを感じとっているのかもしれない。 かく言う僕も「ペットサウンズ」は大好きな人間の一人だが、それでもビーチ・ボーイズの名盤というと真っ先にこのアルバムが挙げられる風潮にはどうも違和感を覚える。 このアルバムをして「ブライアンのソロ的要素が強い」という指摘はよく言われる事だが、確かに僕もこのアルバムにはあまり「ビーチ・ボーイズ」を感じない。 また、このアルバムによってビーチ・ボーイズの音楽は、それまでの彼らにはない「美しさ」を得たが、代わりにそれまでにあった「楽しさ」が失われたのも事実だと思う。 そう考えると、ビーチ・ボーイズの「陽」の部分を受け持っていたマイク・ラヴ(彼も優秀なソングライターだ)がこのアルバムに否定的だったのも分からなくはない。というか、ある意味真っ当な批判だったのだ。 さらに言うなら、アルバムとしての完成度でいったら、「Today!」「Summer Days」「Sunflower」といった作品も決してひけを取らないと思うし、そういう意味では「Pet Sounds」を簡単に「ビーチボーイズの最高傑作」みたいに言うのはやはり片手落ちな気がする。 そんな複雑な思いもあってか、僕はある程度距離を置きながらこのアルバムと付き合っているのだが、それでも未だによく聴く一枚であり、何回聴いても飽きないこの作品を「素敵じゃないか」と思うのも事実なのである。 それではここをクリックして「Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)」を聴こう! なお、この曲はシングル発売されて全米8位を記録。 そしてカップリングだった曲は「God Only Knows」(全英2位)… ビートルズの「Penny Lane/Strawberry Fields Forever」と並ぶ史上最強シングルじゃ… ※ポム・スフレのホームページではBeach Boysの名盤「Sunflower」について取り上げています! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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