ポムブログ~ポム・スフレの名曲大百科

2007/10/25(木)20:09

ヴァンゲリス 「炎のランナー」

80年代洋楽(119)

1982年、5月。 7週連続全米1位を記録したジョーン・ジェットの「I Love Rock'n Roll」と、同じく7週連続1位を記録したポール・マッカートニー(とスティーヴィー・ワンダー)の「Ebony & Ivory」との合間をぬって、一週だけひっそりと全米No.1に輝いた曲があった。 その曲の名は「Chariots Of Fire」。 ギリシアが生んだ天才音楽家ヴァンゲリスの代表曲にして、現在も様々な形で聴き継がれるスタンダード中のスタンダードである。 実話を元にした映画「炎のランナー」のメインテーマであるこの曲は、当初、文字通り「Titles」と名付けられてシングルリリースされた。 '81年12月12日、ビルボードHot100の94位に登場。その後、じわじわとチャートを上昇し、8週目にはタイトルも「Chariots Of Fire」に変えられた。 そして'82年5月8日に全米1位を記録。曲がチャートに登場してから、実に21週目の事だった。 ヴァンゲリスは1943年、ギリシアはアテネの港町ヴォロスで生まれた。 本名は、エヴァンゲロ・オディスィア・パパサナシュー。"いい知らせを伝える天使"の意だという。 音楽家の両親を持つ彼は、4歳でピアノと作曲を始め、6歳の時に演奏会を開いたと伝えられる。 高校時代からプロとしての音楽活動を開始。'68年に組んだバンド、アフロディティス・チャイルド名義で発表したシングル「雨と涙」('69年)は、ヨーロッパで大ヒットとなった。 が、70年代初頭にバンドは解散('72年に一時再結成)。その後、パリを拠点として、今日までつながるヴァンゲリスのキャリアが始まる。彼がはじめて手掛けたサウンドトラックは、フランスのテレビ番組「動物の黙示録」(1973年)だった。 '75年にはRCAと契約し続々と作品をリリース。同時期、リック・ウェイクマンの後任としてYesへの加入を打診された事もある彼は、一時期ジョン・アンダーソンと共同名義で作品を発表していた。「Short Stories」(1979年)、「Private Collection」(1983年)などのアルバムがそれである。シングル"I'll Find My Way Home"(1982年)は全米チャートに入ったりもした。 70年代には「天国と地獄」(ジョン・アンダーソン参加)「反射率0.39」「螺旋」などの傑作を発表。TVドキュメンタリー「コスモス」('80年に日本でも放映された)でも、曲が印象的に使われていたヴァンゲリスだったが、そのサウンドに注目していたのは一部のマニアおよびプログレ・ファンだけだった。 彼の名前が広く知られるようになるのは、やはりこの「Chariots Of Fire」によってであろう。今では映画音楽の大家として知られる彼にとって、最初の大きな仕事でもあった。 『1924年のオリンピック・パリ大会に青春を捧げた、二人の若者の話だった。いい話だと思ったので、僕は契約した。オリンピックは好きだし、楽しい仕事だった』-----ヴァンゲリス 壮厳な響きを持つサウンドと共に、ゆったりとフェイド・インしてくるこの曲。 地中海的な叙情性も感じさせるシンプルで美しいメロディ、穏やかに反復されるシーケンス・リズム、そして重厚かつ温かみを持ったシンセ・オーケストレーション(ほとんど彼ひとりによるもの)の音色は、まさにヴァンゲリスの世界。 じわじわと盛り上がる構成も静かな高揚感を呼び覚ます。 長年培ってきた彼の感性が大衆的な形で結実した素晴らしい一曲となった。 この曲が流れる映画の冒頭部分は、走る事に青春を賭けた若者達の姿と重なって非常に感動的だ。 本編も、派手さはほとんどないものの、長回しやスローモーションを効果的に使った演出も相俟って、見る者の心にどっしりとしたものを残してくれる内容だった。 「Chariots Of Fire」は、その年のアカデミー作曲賞を受賞。受賞した日は彼の誕生日だった。 その時の彼は、前夜の誕生日パーティの後でぐっすり眠っており、吉報を受けたのは早朝の友人の電話によってであった。 『遅い誕生日の祝いだったね。電話を切ってからテレビをつけたんだけど、僕がベッドの中にいる最中、信じられない事が起こっていたんだ』------ヴァンゲリス チャート上におけるヴァンゲリスのヒット曲は事実上これだけだが、彼はその後も映画音楽家、舞台音楽家として数々の素晴らしい仕事を残している。 「炎のランナー」の翌年にあたる'82年には映画「ブレードランナー」の音楽を担当(ただしサントラが発売されたのはだいぶ後)。 さらにその翌年には、日本製作の映画「南極物語」の音楽を担当。雄大な映像にふさわしいヴァンゲリス・サウンドを聴かせてくれた。 2002年には、FIFAワールドカップのテーマ曲も担当。その曲はオリコンでもトップ10入りを果たした。 音楽家としての良心を保ちつつ、今も精力的に活動を続けるヴァンゲリス。 日本公演はやらんのか~!?(公式な来日は未だナシ) 「Chariots Of Fire」を聴くにはここをクリック! 「南極物語」のテーマ「Antarctica」はこちら。 TV番組「コスモス」で使われた曲(『天国と地獄』より)はこちら。 ドラマティックで美しいヴァンゲリス・ワールドに萌えろ!

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る