2008/08/09(土)05:05
EL&P 「Hoedown」
『Trilogy』が好きな人、いませんか?
エマーソン、レイク&パーマー(EL&P)四枚目の作品ですがな
'72年に"来日記念盤"として発売された、長島茂雄も所有している(はず)という、あのアルバムですよ(※)。
EL&Pの代表作として名高い『Tarkus』、『Pictures At An Exhibition(展覧会の絵)』、『Brain Salad Surgery(恐怖の頭脳改革)』などの間にはさまれたこのアルバムは、比較的「地味」な印象を持たれることが多い。
確かに、彼らの"静"の部分が出た作品であり、スパニッシュ・ボサっぽい「From The Beginning」などは彼らのイメージからすると異色に聞こえる。
だが、個々の楽曲は充分なクオリティを持っているし、気品と円熟味をたたえた演奏は、先述の他のアルバムにはない魅力だ。
実のところ、今の自分がいちばん好きなEL&P作品がこの『Trilogy』なのである。
ヒプノシスのデザインによるジャケットが、某国のモーホー雑誌に無断転用されたというエピソードも大好きだ(笑
「Hoedown」は、このアルバムに収録されたEL&Pの名演のひとつ。
アーロン・コープランドの「Rodeo」を下敷きとした、彼らお得意の「クラシック名曲をプログレで聴こう」な一曲だ。
演奏時間は3分45秒とプログレにしては短く、そんな所もあいまって聴きやすい作品に仕上がっている。
ライヴ向きのホットな演奏で、'74年の二枚組ライヴ・アルバム『Ladies And Gentlemen』の冒頭をかざっているのもこの曲だった。
イントロからしてケレン味たっぷり。
ムーグ・シンセサイザーの音がサイレンのごとく唸りをあげる。
つづいて飛び出すは、ハモンド・オルガンのファンファーレ。
ディス・イズ・キース・エマーソン節。
ELP的ハッタリはここでも健在です
リズム隊の登場と共に、ほどよく歪んだ音色のオルガンがコミカルに暴れだす。
キースの流麗な指さばき、アッパーで人懐っこい響きには、いやおうなしに心がはずむ。
豪快な弾きっぷりなのにリズム感も正確じゃな~い♪
3ピースによるストレートなビート。曲が短いぶん、密度は濃い。
カール・パーマーのドラムはいつもに比べておとなしめだが、それでも躍動感は充分。
グレッグ・レイクのベースも、ユニゾンをしつつハードに唸っている。
終盤にはどこかで聴いたフレーズも出てきて思わずニッコリ
楽しい。そしてカッコいい。その印象はジェットコースターと言うべきか。
プログレ的ダイナミズムとパンク的なスピード感を持ちあわせたこの曲は、彼らの魅力を4分足らずに凝縮した傑作だと思う。
プログレ・ファンならずとも楽しめる痛快な一曲と断言したい。
EL&Pは、英国プログレ・バンドの中では、ある意味、特殊な位置にあると思う。
彼らの特徴を一言であらわすなら、それは"分かりやすさ"だろう。
プログレというと、小難しさとか知性だとか哲学っぽさなどがイメージとしてあるが、この三人組にはそうしたものがほとんどない。
単純でゴリ押し気味な演奏はアメリカン・ハード・ロックにも通じるものであり、クリムゾンやフロイド、ジェネシスなどのバンドとは対極といえる。
それはスポーツ感覚で楽しめる音楽であり、よい意味で「お子様向け」だ。
オルガンに日本刀を突き立てるという見世物っぽさ全開のパフォーマンスも、エマーソンの芸人根性からくるものだろう。
プログレッシヴでエンターテイメントなロック。
トリッキーでいて、とてもポップなEL&Pの音楽は、僕の感性にダイレクトに訴えかけてくる。
何気に幅広い曲調、無駄にテンションが高いところなんかも大好きさ♪(´ー`)
プログレが好きじゃない人でも聴けるプログレ、それがEL&Pです。
つーコトで「Hoedown」を聴くにはここをクリック。
映像はラピュタだぜ!
※ 来日した際にメンバーは、長嶋茂雄宅を訪問して、このアルバムをプレゼントしたという。