Doobie Brothers 「The Doctor」
ドゥービー・ブラザーズの音楽性は大ざっぱに言って、前期と後期に分けられる。前期はトム・ジョンストン(Vo,G)をメインとしたR&R、後期はマイケル・マクドナルド(Vo,Key)を中心としたAOR風ポップスだ。両者にはまったく通じるものがないというわけでもないが、基本的には別の音楽だ。だから優劣をつける意味はないし、どちらを良しとするかは単純に個人の嗜好による。で、ある愚か者の場合……もとい自分の場合はというと、聴くことが多いのは前期の方だ。トム・ジョンストンのおおらかな歌声と豪快で泥臭い演奏は、聴いていてなんとも気持ちいい。曲は分かりやすくてポップ。時には切なかったりもする。適度にハードでコーラスもバッチリな彼らは、イーグルスとはまた違った意味での偉大なウェスト・コースト・ロックだ。浴びるように聴いた3rd『Captain And Me』('73年)なんかは、今でも全曲歌えますぜ(…たぶん)そんなドゥービーだったが、'74年にはトム・ジョンストンが病気のために離脱。バトンは、代わって加入したマイケル・マクドナルド(スティーリー・ダンのツアー・メンバーだった)に引き継がれることとなる。以降も'78年の「What A Fool Believes」(全米1位)を頂点として成功をおさめていくが、音楽性の変化に伴うようにメンバーもどんどん入れ替わっていく。結局、オリジナル・メンバーで最後まで残ったのはパット・シモンズ(G,Vo)だけだった。そしてバンドは'83年に解散を宣言。「フェアウェル・ツアー」と銘打った大規模なラスト・コンサートにはトム・ジョンストンもゲスト参加し、盛大に幕を閉じた。それから六年後の'89年にドゥービーは再結成する。メンバーはトム・ジョンストンを中心とした前期の面々だった。当時は、往年のバンドが次々と再結成したり人気を再燃させた時期だったが、ドゥービーもそのひとつと言えよう。通算十枚目のオリジナル・アルバム『Cycles』(上ジャケット)もこの年に発表された。「The Doctor」はそこからのシングルで、全米9位を記録したロック・ナンバーだ。ポップな楽曲、全盛期を思わせる歌と演奏は、往年のファンだけでなく自分のような(当時の)新しいリスナーも魅了するものだった。イントロの躍動感あふれるピアノとギター・リフでツカミはばっちり。ツイン・ドラムの音色は重厚で頼もしい。張りのあるトムの歌声、ダイナミックなバンド・アンサンブルには有無を言わさず引きこまれる。コーラスを効かせたサビも最高。むくつけき親父たちの「Music Is The Doctor」というフレーズに心がおどる。今でも聴くたびに元気をもらえる、パワフルで楽しい一曲ですアルバムもそこそこのヒット(全米17位)を記録し、再結成はひとまず成功。バンドは'89年、'90年と来日も果たし、さらにファンを喜ばせた。その後もバンドはライヴを中心に活動を続けていく。21世紀に入ってからはメンバーの死去に見舞われるなどのアクシデントもあったが、現在でもトムとパットを中心にドゥービーは健在のようだ。彼らの音楽には、ポジティヴな響きと頭の中を駆け抜けるような爽快感がある。アメリカン・ロックの醍醐味を伝えてくれる、愛すべきマリファナ兄弟たち。つーコトで「The Doctor」を聴くにはここをクリック!Music Is The Doctorいい音楽は、健康にも良いのだ\(´ー`)ノ