菊姫・菊
「加賀の菊酒」菊姫は石川県白山市の蔵であるが、20年以上も前から兵庫県吉川町(山田錦の特AAA産地として名高い)に通い詰め、「姫と語る会」などを組成して生産者との絆を強くしてきた。従って、日本酒の生産量は菊姫は全国の中で千分の一にも満たないが、山田錦の買い付け量は全国の30分の一という、極めて山田錦に思いの強い酒造場である。そんな菊姫合資会社の先代の社長は、「醸造用アルコールを添加してこそ酒は旨くなる」と主張していたらしい。(モノの本に書いてあっただけなので、真実かどうかは確認していないが。)そんな菊姫だからアル添酒もそれなりにいけるのではないかと想像していたちょうどそのタイミングで、東京・蒲田のスーパーで普通酒「菊」と「姫」を見かけた。普通酒を購入するというのは、ここ何年も記憶が無いので躊躇する。最近はカップ酒でさえ純米酒の時代だ。価格は4合瓶で菊が980円、姫が780円。そのスーパーの特売商品となっており通常価格より安いが、瓶詰め月はこの6月下旬で新しい。裏のラベルを見ると、「姫」には糖類の添加があるが、「菊」にはそうした添加物はなく、表示上は本醸造酒と変わらない。白米重量の10%以上をアルコール添加しているので普通酒なのだろう。ただし、麹米は山田錦、酒母は山廃仕込と記載され、普通酒としては贅沢な造りである。例によって4人集まったときに開栓して飲んでみたが、米の旨味をしっかりと感じさせ総じて評判は良い。普通酒ながら、濃醇で力強い。もちろん、居酒屋チェーンなどの飲み放題日本酒とは全然違う。これだったら日常酒として愛用者が多いというのもうなずける。あとは個人的な好みの問題ではあるが、山廃でアル添しているわりには少し甘く感じられたのは、この蔵の造りの方向性なのだろうか。もっとも人によっては「山廃しながらアル添するのはどういう意味だ」、との指摘もあるだろうが。