道後蔵酒 大吟醸酒三十五(愛媛県松山市・水口酒造)
松山城の北西、伊予鉄・道後温泉駅に近い水口(みなくち)酒造。創業は明治28年というから、日清戦争の翌年。松山出身のかの秋山兄弟が頭角を現してきた頃だろうか。司馬遼太郎原作「坂の上の雲」のNHKドラマスペシャルで、大いに盛り上がっていることでしょう。司馬遼太郎は「坂の上の雲」の映像化は「一切ダメだ」と生前に言っていたのですが。「戦争賛美」だとか、「明治の時代を美化しすぎ」だとか、「乃木希典をこきおろし過ぎ」とか、いろいろと議論や解釈を生んできました。私は戦前昭和の伏線は、山県有朋を中心とする明治の軍閥の時代にあると思っているので、「欧米列強に抗して」などとまるで何でも有りのように美しくこの時代を言い過ぎるのには組みしません。さて、この蔵では15年前より「道後ビール」を発売して、一時期ブームになったりしました。清酒では「仁喜多津」が明治28年からの銘柄です。今では「坊っちゃん列車」とか、当地にふさわしい銘柄もだしています。こちらは「道後」の酒を強調した商品。「大吟醸酒三十五」とは、山田錦を35%まで精米したゆえの、ある意味単純な命名です。個性を強調するのを抑えた、まろやかで優しいお酒という印象です。