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カテゴリ:思ひ出
先日の「亀事件」のこと書いてて思い出したことをひとつ。
小学生の頃、夏休みになると毎年、団地の広場に「金魚すくいのおっちゃん」が来てた。 麦わら帽に白いランニングシャツ、年の頃は60~70ぐらいの、ハイトーンハスキーボイスのおっちゃん。 亀は、その金魚すくいで手に入れたやつだったんです。 どういうことかってー言うと、その金魚すくい、すくった金魚に点数が配分されておりまして。 小さいやつは1点、デメキンは3点、中くらいのが5点、でかいのが15点、とか、確かそんな感じ。 で、点数チケットを集めると、点数に応じて何かしらの生き物をもらえるんです。 何があったかな。 金魚、イモリ、沖縄かどこかの大きくて綺麗なヤドカリ、カブトムシ、クワガタ各種、ミドリガメ、ゼニガメ、イシガメ、インコ、文鳥、珍しい鳥、ハムスター、リス、うさぎ・・・ まだあったかもしれんけど、ずらっと並べられた生き物を見るだけでも楽しかったもんです。 このおっちゃんは反則技にかなり厳しくて、金魚の泳ぐ水槽の壁を使ったり、ポイの裏に指を回してたり、おっちゃんの目を盗んでおわんですくったり、そういう悪さをしているこどもをみつけると、叱り飛ばしてげんこつ喰らわせたりしてました。 厳正なるジャッジの元、生き物が欲しいこどもたちはポイを握り締め、全ての知恵とテクニックを駆使し、勝負に出る。 僕は小さめの弱ってそうなやつを確実にすくって、ちまちま点数を稼ぐタイプ。 たかしはでかいのを追いまわして失敗し、0点で終わるタイプ。 幼馴染たちもチャレンジするが、なかなか点数がたまらない。 ミドリガメが確か30点ぐらいだったんですわ。 しかしながら、こういうことに秀でたこどもってのはいるもんで、僕の同級生の「おもち」ってやつが“神の手”を持っていた。 おっちゃんから見えない離れたところで僕らは彼になけなしの小遣いを預け、「頼んだ、おもち!」と。 おっちゃんの目の前でやったらおもちがマークされるけんね。 「友達同士の代理はダメよ!」みたいなルールもあったような気がする。 おもちは見返りも要求せずに引き受けてくれていた。金魚すくいが好きだったのでしょう。 すぐに行くと怪しまれるので、数日経ってから集めてもらった点数チケットと生き物を交換。 同じ亀にも色とか表情とか活発さとか、そういう好みがあったので、そこは自分らで。 おっちゃんも僕らの累積点数までは覚えていまい、という魂胆。 ミドリガメの他にヤドカリとかカブト、クワガタなんかをもらった記憶がある。 おっちゃんは厳しかったけど、基本的に明るく優しい人気者でした。 甲高いしゃがれた声で軽快に点数を数え上げる様が心地良かったなー。 「ハイ、いって~ん、いって~ん、いって~ん、しゃんて~ん。ハイっ6点!」 機嫌がいい時には 「アンタはいっつも来て頑張りよるけんサービス!」とか。 僕らが裏でこっそりおもちに頼んだりしてたのも気付いてたのかもしれんですね。 夏休みになるとどこからともなく軽のワゴンに乗ってやって来る、団地のこどものヒーローでした。 【古賀拓也】 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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