カテゴリ:フィギュアスケートの部屋
雫井脩介さんの「銀色の絆」、フィギュアスケート選手の母と子の物語、
という事で期待して読み始めたのですが、現在から過去を振り返る構成で、 最初から結末が読めてしまうという、作者の力量を問われる造りでした。 残念ながら、その構成の難しさをはねのけるだけの深さはなかったかな。 主人公は、高校生にもなろうという年齢で才能を見出される、遅咲きの選手。 競争心がうすくメンタルも弱いのに、なんと四回転が跳べてしまう。 そんな娘以上に、娘のスケートにのめり込み、人生を賭けていく母親。 そういうと、娘にまとわりつくうっとおしいステージママみたいだけど、 この母親は、娘以上に成長し自立し、ある時点でさっと身を引く潔さがある。 子供の送り迎えだけでなく、練習につきそい声をかけ、コーチのお弁当を作り、 学校との交渉、夜はマッサージ、衣装のデザインと、マネージャーのような母親達。 しかしこの作品はありがちなライバル物語ではなく、足を引っ張り合ったりせず、 選手も母親たちも、お互いに尊敬しあい高め合う、とてもきれいなお話でした。 でも、そんな年齢まで無名の選手が、四回転トゥループを跳べるなんて。 そして中途半端な成績のままスケートを引退してしまうのも、なんだかなあ。 結局彼女にとってはスケートは、人生を賭けるにたる魅力のないものだった。 この作品の主人公はむしろ母親で、娘のスケートはその起爆剤といった所か。 親子の絆を描くというより、それを結びつつ互いに自立していく物語なのかな。 それにしても、浅田真央選手をほうふつとさせる天才選手の母親が、 若くして病に倒れ亡くなってしまう、という、これは予言の書なのだろうか。 その後浅田選手に起こった運命の辛さを思うと、胸がつまる思いがした。
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