カテゴリ:本の部屋
ずっと本を読んではいたけれど、感想を書こうかという気にはなれなかった。
久しぶりに、これは面白い!という本に出会ったのが「十二単衣を着た悪魔」。 その悪魔は「源氏物語」の弘徽殿女御の事なのだが、気が強くて嫉妬深い、 父親の権威を笠に着た嫌な年増女、という彼女のイメージを見事覆してくれた。 なんといってもこの本は、荒唐無稽とも言える設定で、少しも堅苦しくない。 就活に失敗した冴えないフリーターが、源氏物語の世界にタイムスリップする。 現代の典型的な若者であろう彼の眼を通すため、物語が実に解りやすく親しめる。 この彼がまた都合のいい事に、源氏のあらすじ本を持っていて物語の先が読め、 薬も持っていて病気を治してしまい、陰陽師として重用され女御お抱えとなる。 悪役の代表のような弘徽殿女御が、実に聡明で意志のはっきりしたできる女、 物事の裏の裏を読み取り、本質を見抜く優れた女として、説得力を持って描かれる。 今に生きればちょうどヒラリー・クリントンみたいなんだろうな、と思った。 しかしヒラリー・クリントンと仲良く付き合えるかと聞かれたら、それは困るわけで。 色恋の話と思っていた源氏が、実は根深い政争、皇位継承権の物語であったり。 兄弟の優劣にまつわる葛藤や、誰にでもある劣等感は、現代と変る所がない。 失礼ながらそんなに期待せず、なにげなく手に取った本なのに引き込まれた。 あえて言うなら、「~のタイプ」と人物を断ずるのはあまり好きじゃないかな。 脚本家・内館牧子さんの作だけに、ドラマや映画になればきっと面白いと思います。
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