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「母性」とはまた何とストレートな、恥ずかしげもないタイトルなんだろう。
しかしこの作品に描かれているのは本当に「母性」なのだろうか。 ここにあるのはどこまでも逃れようのない、息が詰まるような「母と娘」の物語だ。 最初に提示された「愛能う限り」という言葉の持つ違和感。 まるで、もちろん愛には限界がありますよね、と宣言しているようだ。 母の愛はねじれ、歪み、独占し、束縛し、阻害し、惜しみなく奪う。 自分の娘が、自分とは異なる人格を持つ存在であることを受け入れられず、 母の愛を求める娘の心情を推し量れず、拒絶するしかない母の悲劇。 湊かなえさんの作品がほとんどそうであるように、この作品も、 後味悪く終わるのかと思ったら、不自然なほどにハッピーエンドだった。 これには裏の裏があるのでは、それを解く鍵はリルケの詩だ、と思うけど、 リルケの詩はどうにも気持ち悪くて、読み込むことができなかった。 それは「愛能う限り」の自己愛、自己陶酔が気持ち悪いのと同じみたいだった。
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Last updated
2012年12月19日 11時38分56秒
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