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東方見雲録

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2023.03.29
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カテゴリ:宙(そら)学入門


宮本 太陽系が形成された時、残されたガスやチリが冷却・凝縮したものが小惑星で、ほとんどは火星と木星の間に小惑星帯として存在しています。地球の近くにもあり、少なくとも300万個はあると想像されています。そのうち約80万個は軌道も分かっています。
種類別では、地球近傍にはシリカと鉄やマグネシウムの酸化物でほぼ構成されるS型が多く、火星以遠では炭素、水、有機物などを含む黒色のC型が大半です。他に鉄やニッケルを多く含むと想定されるM型などがあります。

先ほど言いましたように、現時点では宇宙資源は宇宙で使うというのが大前提です。ただ、何百年先になるか分かりませんが、科学技術が進歩して、仮に直径3kmのM型の小惑星を地球に持ち帰ることができれば、200億トンの金属鉄と1億トン以上のプラチナを手に入れることができます。これは産業革命以来200年をかけて人類が利用した金属鉄の総生産量を上回り、プラチナも総生産量の2倍以上に匹敵する量です。

地球外でしか見つからない特殊な物質を地球に持ち帰る時代が来るかというと、これは考えにくいです。というのも、小惑星は300種類程度、月や火星でも1000種類程度の鉱物でできていると考えられていますが、地球には5000種類ほどの鉱物があると考えられているからです。これは地球の歴史が原因です。
小惑星イトカワはS型、つい先日の2月22日に「はやぶさ2」が着陸した小惑星リュウグウはC型ですが、地球はこのS型とC型の小惑星が集まって出来たようなものと考えられております。すると46億年前に誕生した直後の地球には、こうした隕石に含まれる程度の鉱物しかなかったでしょう。
ところが、地球形成後に中心核の形成やプレートテクニクスの影響でもみくちゃになり、火山噴火、熱水、放射線、生命活動などの影響を受けて変性し、その過程で多くの鉱物が生まれました。そのため太陽系の固体天体の表面に見つかる鉱物のほとんどは、地球でも見つけることができると考えられています。

地球中心部の鉄に溶け込んだプラチナやニッケル
――プラチナやニッケルはレアメタルと呼ばれ、地球上では希少な物質です。宇宙にはたくさんあるのでしょうか。

宮本 プラチナやニッケルは鉄に溶けやすい性質を持ち、地球形成の際に、中心部にある鉄の中にたくさん溶けてしまったのです。鉄に溶けずに残ったごく少量のプラチナやニッケルが地殻に存在し、レア扱いされているのです。
コンドライト隕石という、地球形成時の平均的な成分組成を持つと考えられる隕石を調べてみると、プラチナ族の元素や金が、地殻の数十倍から数千倍も多く含まれる場合があります。といっても、他の構成元素と比べると遥かに含有量は少ないのですが、地球ほど極端にレアでない場合もあります。
ただしレアかレアでないか、という議論は不毛です。太陽系全体の質量のうち、99.86%は太陽の水素とヘリウムが占めています。残りの0.14%が太陽以外に存在する質量であり、そのほとんどが水素とヘリウムです。つまり私たちは太陽系でみれば、ごくレアな元素を使って生きていると言えます。

引用サイト:宇宙資源の開発に挑む―東京大学・宮本英昭氏へのインタビュー記事 こちら





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Last updated  2023.03.29 08:00:06
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