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PPK手帳 2024

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2020.05.12
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カテゴリ:国東半島

ステイ・ホーム数か月。普段使わぬ外​付けHDを起動すると、10数年前にやめたホームページ(HP)のデータの断片。ふるさと国東半島の「六郷満山峯入り」の秘事やラテン歌手との「歌の巡行」などの「二住生活」の記録などである。新しいパソコンに入れ替え中、瞬時に蒸発したと諦めていたデータである。画像はないが、原画は写真倉庫にあるはず。新型コロナウイルス終息はるか先。気分転換に「復刻」してみようと思ったがHPアプリはなく楽天ブログに取り込むことにした。数字・氏名などは当時のまま。


ギター、ホラ貝、春の声… 2001年春
​​
 先年、兄から田舎の家作を引き継いだ。屋根の一部を葺きかえ、シロアリにやられた床を補強し、住めるようにした。

 「仕事が終ったのだから、あなたの気に召すまま1か月でも2か月でも過ごしたら…。余暇の専門家でしょう」とのたまう家人のおかげで、二住生活をはじめた。の自炊生活であった。最長一か月過ごしたことがある。
 
 20013月下旬、花のつぼみがほころびはじめたころの話。
 見わたせば一面やわらかな緑。小鳥のにぎやかな声。草刈りにつかれると広縁に寝そべって焼酎をなめ、雲の流れを観察し、日が暮れると囲炉裏の火を見ながら行く末を考える。
至福のきわみではあるが。傍に人気がほしい。
 ある日、世話をしてきた異業種交流会で帰省計画を語ると同行希望者が現れた。
 アルバーソ・チカさんである。かれは、1995(平成7)年117日の前日まで、宝塚で理美容店を営んでいた。若い頃からトリオ・ロス・パン チョスに傾倒し、本業の合間にギターを奏で唄った。
 その日、店は半壊。再開不可と判断し、ハサミを捨てギターに持ちかえたという。
家族はいない。知人の経営しているレストランで演奏し、イベント会場に出向いてしのいでいた。知り合ったのは偶然である。以後、例会のたびに甘い歌声を披露してくれた。
 
  
2001323日、自家製の漬物や煮物など「一人一品」を持参した20余人があばら家に来宅。奥の間がステージに。急造のスポットライトの光輪にチカが浮かび上がり、「その名はフジヤマ」「ベサメ・ムーチョ」などを唱った。
 翌日は「いこいの村・国東」に招かれ、130名の方々に聴いていただいた。町の観光協議会がバッ クアップしてくれたのだ。
 
陽気であったかい声。50歳とは思えぬ歌声にア ンコールの拍手が続いた。2日後、地元大分合同は「阪神大震災で転身の歌手、国東町で熱唱」と伝えた。

 彼を空港に送ったあと9年ぶりに行なわれている「六郷満山峰入り」の一団を追った。峰入りは国東半島六郷の寺院や霊場や険しい峰々約160キロを4日間で踏破する天台宗僧侶と信者たちの山岳修業である。社会人も参加できるということで、わたしも行に加わりたいと思ったが、行く手に断崖絶壁が待ち構えているので断念した。一部でも見たい。そんな思いだった。

 
 私は山寺近くで一行を待ちうけた。やがて菜の花が揺れるたんぼに白い浄衣に身を包んだ人々が現れた。80人はいただろう。と、お迎えの鐘の音がカーンと響き、ブウォーというホラ貝の音。

 山寺の桜のつぼみが、ひとまわり膨らんだように見えた。
 






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最終更新日  2020.05.12 21:50:07


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