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「名曲100選」 ベルリオーズ作曲「幻想交響曲」 ベートーベンが57歳で亡くなったのが1827年、その翌年1828年にシューベルトが亡くなっています。 今日の話題の「幻想交響曲」はベルリオーズによって、これら先人の偉大な作曲家の死後からのすぐの1830年に書かれています。 このことが凄いことなんです。 何が「凄い」のか? 彼がこの曲を書くまでは絶対音楽の象徴のような存在だった交響曲に、標題と物語性を表したことです。 音楽史上、交響曲を「標題音楽」とした最初の作曲家で、現代でもオーケストラ作品として最も人気の高い曲の一つです。 この曲を書いた当時、パリ(彼はフランス人です)にシェイクピア劇を公演する劇団が英国から訪れていて、彼はその劇団の花形女優ハリエット・スミスソンに強烈に恋心を抱いたのですが、彼女からは鼻もひっかけてもらえぬままにパリから劇団は次の公演地に行ってしまって、ベルリオーズは失恋をしました。 その時の失恋感情を音楽に表したのが、1830年に完成した「幻想交響曲」です。 ある芸術家が恋に狂い、失恋して人生に飽きてしまってアヘンの毒物自殺を図るが、致死量でなかったので重苦しい夢を見て異常な幻影に悩まされてしまい、その幻影の中で常に現れるのが「固定観念」のようになった恋人の旋律である、と彼自らが書残しているように、この曲は「ある芸術家の挿話」と副題が付いています。 第1楽章 「夢と情熱」 狂おしい恋の情感を描いており、ここで表れる「恋人の旋律」は以降の楽章にも出てきます。 第2楽章 「舞踏会」 華やかなワルツの調べで舞踏会に現れてくる恋人を予感しています。 交響曲にワルツを用いる発想がベルリオーズの異才たる面目躍如といったところでしょうか。 第3楽章 「野の風景」 夏の夕暮れに田園で休む芸術家の胸によぎる恋人の姿。 雷鳴と孤独が暗い将来を暗示しています。 第4楽章 「断頭台への行進」 とうとう彼は彼女を殺してしまい、処刑場へ進むさまを描いています。 ここでの行進もあくまでも不気味です。 ギロチンの降りる前にちらっと恋人が脳裏をよぎるかのように「恋人の旋律」が現れます。 第5楽章 「ワルプルギスの夜の夢」 彼を弔う魔女の饗宴の模様がグロテスクに描かれています。 審判の鐘と魔女のロンドが交錯するフィナーレです。 これほどの曲をベートーベンの死後3年ばかりで書いたベルリオーズはやはり「鬼才・奇才」なのでしょう。 この曲を聴いたリストが交響詩を創始するきっかけになったと言われています。 ちなみにこの曲の成功で、ベルリオーズはやがてスミスソンと結婚することができたのですが、二人の生活は10年くらいで破綻をして、その後ベルリオーズは2度結婚しますが妻に先立たれて、最後は一人寂しく67歳の人生を終えたそうです。 愛聴盤 (1) チョン・ミュン・フン指揮 パリ・バスティーユ管弦楽団 (ドイツグラモフォン UCCG70062 1993年10月録音) どのフレーズにも輝かしい生命力が感じられて、生き生きとした音楽の精彩が始まりから終わりまで一貫しており、所謂楽譜が透けてみえるという演奏で、熱に炙られる若き芸術家の心情を見事に音で表した演奏。 不滅の名演奏のシャルル・ミンシュの豪快なスケールとフランスらしい明るさと輝きのある録音盤とは、少し違う趣きがあるミュン・フュンの素晴らしい名演奏だと思います。 (2) シャルル・ミュンシュ指揮 パリ管弦楽団 (EMI原盤 EMIジャパン TOCE14001 1967年録音) LP時代から聴き親しんだ盤。 燃焼度の高さでは聴いたこの曲の中ではピカイチの演奏。 ミュンシュとパリ管弦楽団の録音が、この曲とブラームスの交響曲第1番のみとは非常に残念。 (3) ジャン・マルティノン指揮 フランス国立管弦楽団 (EMIレーベル 517 6542 1973年録音 海外盤) 爽やかさとどろどろとした感じがないすっきりとした演奏。 マルティノンの遺産。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年10月14日 00時43分26秒
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