080705 EURO2008
「MVPは誰?」「シャビだよ。」「違うよ。おまえが見て、誰が一番良かったか。おまえのMVP。」「んー。フェルナンド・トーレス。」「そっかー。おまえと同じ9番だしな。ハイライトだけだとそうなるかな。決勝戦のゴールは、速かったし、うまかったもんなー。オレは、19番。」「だれそれ?」「なんちゅーこっちゃ。おまえと同じワンボランチのマルコス・セナやんか。黒人のボーズのおっさん、いたろ?」「あー、いたいた。決勝戦で、クロスに足が届かなかった人ね。」「あのなー、覚え方が気に入らんな。4-1-4-1システムのワンボランチやで。スーパーボランチ。あそこまで、長い距離を走って、シュートに行ったのに感心してほしいな。」「でも届かなきゃ、だめじゃん。」「厳しいね。あれが、ボールじゃなくて敵の足だったら、必ず届いて、削ってたんだけどな。」:「もっとダメじゃん。」「そー言うな。セナは、何が素晴らしいって、敵の司令塔をきっちり抑えて、効果的なパスを出させない。フォローもカバーも素晴らしい。敵の次の動きを読める。パスを出そうとする選手とパスを受けようとする選手を両方、感じて押さえてしまうんや。セナがいるだけで、ロシアのアルシャビンなんか、ぜんぜん働けなかっただろ。」「クリだって、やってるよ。」「まだまだ。」「守備だけやってれば、できる。」「アホな。小学生のうちから、守備に徹してどーすんじゃ。守備もきっちり、攻撃にも全面的に参加して、バシバシ、シュート狙わんかい。」「疲れるじゃん。」「小学生の狭いピッチで、端から端まで走ったって知れとるわ。ピッチのスミからスミまで動いたって、セナとか、シャビの行動範囲には、かなわん。人は、使ってもいいけど、人に任せちゃいかん。自分で自分のためにやれ。」「・・・?」「ピッチ全体走り回って、奪い、攻撃になったら、自分で突破してシュートする。それぐらいでないと上に行って通用せんぞ。」「ふん。」「それぐらいの選手が集まって、それぞれ、役割をしっかり果して行くのが、上のレベルなんや。」「ふーん。」「コーチに言われたことだけ、ちまちまやって、狭い範囲の自分の役割だけ、こなしてても、上で活躍できる選手にはなれん。」「はーい。」「セナを見てると、あいつの状況判断の方が、監督やコーチの上を行ってるような気がする。監督やコーチから、なんだかんだと怒られるようでは、まだヘタだからだ。監督やコーチの言う通りにしなくても、チームのために、労力を惜しまず、正しいことをこなしていけば、文句は言われん。任せられる。そのレベルまで行くのには、今のうちから、いっぱいトライして、失敗して、経験を積むことだ。」「ふぁーい。」「これからは、4-1-4-1が主流になるかもな。オランダだって、4-2-3-1だけど、流動的に攻撃の人数が増えていくから、4-1-4-1の時間も多い。」「ふーん。」「スペインのセナ、オランダのヨンク、攻撃的な面白いサッカーは、そういう働き者に支えられて初めてできる。」「ふーん。」「スペインのDFには、プジョルがいるけどそんなに強いわけではない。それでも勝てるのは、動けるMFが、高い位置でボールを奪えるからだ。中盤の誰かが、奪いに行くと必ず、スルスルっとセナが寄ってきて、2対1を作る。」「ふん。」「スペインのパスサッカー、細かいダイレクトパスを回している間に、中盤や、底の方から、どんどん前に上がってきて、攻撃に参加してくるから、面白い。」「うん。」「そんなサッカーをやる選手が、“疲れるじゃん。”なんか言うわけねーだろ?」「ふん。」「足を止めずに、切り替えを早く、攻撃も守備にも活躍できる人になれ。ロッペンなんかも、左サイドの上がりが目立つけど、右にも左にもいて、撹乱している。」「オランダは、トータルサッカーって言うんでしょ?」「まー、クライフの昔はそう言われたけど、今はどこもそーなってる。空飛ぶオランダ人って言われたクライフと同じように自由に動き回って、どこにでも顔を出す選手がいっぱいいる。そのフォローやカバーをみんなでし合って闘うんや。働き者軍団でないとだめ。」「ふーん。」「チームのために労力を惜しまない勤勉な日本人なら、もっとできるはずや。」「けんべん?」「勤勉。今の日本人は勤勉とは言えないが、素質は十分持ってる。“ONE FOR ALL”っつうこっちゃ。」「それ知ってる。“ルーキーズ”でしょ。」「そーです。もともとはラグビーで言われていた言葉で、“ONE FOR ALL, ALL FOR ONE”って言うんや。仲間のために、チームのために、自分を犠牲にして痛いのや苦しいのに耐えて、がんばる姿は、カッコいいってこっちゃな。モテるね。」「わかった。」(わかってくれてうれし。・・・。)