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2012/09/07(金)05:14

ブッククラブなるもの

教授の旅日記(134)

 今回、短期滞英の理由の一つは、イギリスの読書事情を調べる、ということだったのですが、中でも「ブッククラブ」というものに興味がありまして、イギリスに多いブッククラブとはいかなるものか、というのを現在調査中なのでございます。  で、文献を調べるのもいいのですが、実際にブッククラブに参加しちまえば、一番手っ取り早くブッククラブの何たるかが分かるのではないかと。まあ、そのように思いまして、とあるブッククラブに飛び入り参加して参りました。  日本では、「読書」と言いますと、個人個人の営為、という感じがします、よね? それぞれが好きな本を買うなり借りるなりして読む。以上、終わり、みたいな。もちろん、文学には「研究」という側面がありますから、文学研究者が学会などで特定の文学作品を論じ合うということはあります。しかし、それはかなり特殊なケースなので、普通の人は、文学作品を読んで、それについて語り合うということはまずしない。  ところが、イギリスではブッククラブというのがかなり定着しておりまして、探せば無数にある。文学作品の王道を読むブッククラブ、SFを読むブッククラブ、ロマンスを読むブッククラブ、探偵小説を読むブッククラブ・・・と、よりどりみどり。で、そういうクラブのメンバーとなって、例えば月一くらいのペースで会員が集まり、読んだ本について語り合うという場がある。  で、先日私が参加したブッククラブは、割と真面目な小説を読むクラブでして、今月の課題作品はアメリカのユダヤ系作家シンシア・オジックの『Foreign Bodies』でした。  ま、私はこの作品を読んでいないので、メンバーの討論の細かいところまではついて行けませんでしたが、それでも討論は活発。といって、学会のような雰囲気ではなく、ごく普通の本好きが、この本のこういうところが好き、だとか、この辺の書き方がどうも下手なんじゃないかとか、自分としては全然共感できなかったとか、そういうごく自然な好悪を披瀝し合うわけ。個人的な経験に引きつけて作品を語る人もおり、まあ、話題百出と言う感じ。  で、最後に皆でこの作品に点数をつける。「私は10点中7点」とか、「私はもうちょっと低い。5点」とか。で、一通り論じ合ったところで、次の会合までに読む本を決め、そして解散と。そんな感じでございました。  とにかく、難しいことはなんにもなくて、ただ読んだ本について自由に語り合い、互いに意見を交換しあう。そういうのを楽しむわけですな。  その意味で、この地では、読書はきわめて社会的な経験である、と言ってもいいでしょう。  とまあ、その辺の感覚を、実際にブッククラブに参加してみて、私はひしひしと感じたのでございます。ま、この先、この話題について書く時に、今回の体験は非常に役に立ちそう。旅の恥はかき捨てといいますが、思い切って見知らぬ人たちの間に飛び込んでみて、面白い経験をさせてもらいました。

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