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August 13, 2016
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カテゴリ:教授の読書日記
ノーマン・カズンズという人の書いた『笑いと治癒力』という本を読みましたので、心覚えをつけておきましょう。

 ノーマン・カズンズというのはアメリカの有名な評論誌『サタデー・レビュー』誌の編集長を長く務めた人。だから、アメリカ文学とかやっている人には割と親しみのある名前なんですけど、あともう一つこの人が有名なのは、原爆でケロイド状の火傷を負った日本人女性をアメリカに呼んで、その治療に尽力したこと。そういう意味では、日本人としては親しみを持たざるを得ないところがありますな。

 で、この本なんですけど、これは一種の闘病記でね。

 1964年、ソ連を旅したカズンズは帰国直後、体調不良を覚えるんですな。で、調べてみたら深刻な膠原病であったと。しかも、このレベルの病状から回復した患者というのは、過去、500例に1例程度の割合でしかない。カズンズは、当然、死の恐怖に陥ります。

 が、そこからがカズンズの独壇場というか。天性のポジティヴ志向から、よーし、それなら一つ、自分がその500例の中の1例になったろやないか! と思うわけ。

 で、そこはジャーナリストですから、医学雑誌を含め、膠原病の治療例を扱った様々な記事をかき集め、独自に研究を始めるんですな。で、まずビタミンCがこの種の病気に有効なんじゃないかと思い、自分の判断でビタミンCの大量投与を開始! さらに「笑い」が免疫を高めると聞いて、マルクス兄弟のドタバタ喜劇の映画を取り寄せて病室で上映、さらにE・B・ホワイトだとか、ジェイムズ・サーバーだとか、ベネット・サーフだとか、アメリカの有名なユーモア作家のジョーク集なんかを取り寄せて読み、毎夜、爆笑しながら過すことに。

 また、当時の病院の入院環境自体が病人をさらに病気にするんじゃないかと判断し、病院ではなくホテルに入居することにしたところ、かえってその方が入院費よりも安くついたと。

 幸いなことに、彼の主治医が理解のある人で、カズンズの場合、下手に通常の治療を施すより、カズンズのやりたいようにさせて、カズンズ自身の生きることへの欲望を活かした方がいいと考えてくれたんですな。だからカズンズは、思う様、自分で自分を治療できた。

 そしたら、ほんとに奇跡的に膠原病が治ったと。「ビタミンC」と「笑い」でカズンズは難病をやっつけてしまったんです。これが彼の闘病の顛末。

 もちろん、カズンズはアホじゃないので、自分の体験を通じて、現代医学を全否定したりはしません。それに「ビタミンC」や「笑い」が本当に効いたかどうかについても、自ら疑うところもある。結局、「生きたい」という彼の生命力が病の勝っただけで、その意味ではビタミンCを投与しなくても、笑わなくても、治ったかもしれないと思うところもあるわけ。つまり、ビタミンCや笑いは単なるプラシーボの役割を果たしただけなのではないかと。

 だけど、やっぱり自分で体験してみて、現代医学の方にも反省すべき点は多々あるのではないか、というのが、この本を通じてカズンズが言おうとしていることなんですな。

 例えば「薬」への過信とか。もともとある病気を治すためだけに作用する薬なんてあるわけはなく、ある症状の改善にはつながっても、副作用によって健康な身体を害することもある。しかし、そういうことを医者は患者に伝えないので、患者は「薬を出してくれる医者は良い医者」と考え、患者自身も薬に依存するようになってしまう。

 また様々な最新医療機器の発達によって、医者は患者を直接診る時間が少なくなったということもある。もっともこれは患者を診る時間がなくなったから、機械に頼らざる得ないという側面もあるので、どっちが先でどっちが後ということもないのですが、とにかく、患者と医者が親しく接して、親身になってその人の具合の悪いところを聞く、なんてことが少なくなってしまった。

 カズンズは、こういった一連の治療現場のあり方に、異を唱えるんですな。医療で本当に必要なのは、自分の具合の悪さを本当に理解していて、自分と一緒に闘ってくれる、信頼に足る同志としての医者なのであって、この信頼感こそが、本当に役に立つ医術なのではないかと。

 で、このカズンズの闘病記は、その後医学雑誌に発表され、当時の医学界に大きな波紋を投げ掛けることになるわけ。そして、カズンズはその後、話題となった自分の闘病記を補完すべく、医療と人間というテーマのエッセイを書き続け、それをまとめたのが本書なんですな。

 ですから、本書冒頭のその闘病記に続いて、同じテーマを扱った幾つかのエッセイが並んでいるんですけど、そのどれもが結構面白い。

 例えば自分の病気の治癒が、プラシーボ効果の賜物であったのではないか、ということから、プラシーボ効果について色々と調べ上げたエッセイとか。

 あるいは、「生きる意欲」こそが人の健康にとって重要なのではないかという自身の体験から、老齢に至っても有意義な仕事をし続けた人に取材したエッセイなんかも面白かった。何しろその取材した相手は、アルベルト・シュバイツァー博士と、チェリストのバブロ・カザルスですからね。実際、カザルスの言葉「人はみな自分の内部に根本的な道理の観念を持っています。その観念の告げることに耳を傾け、その通りに行動すれば、その人は世界が一番必要とすることを大きく果たしているのです。それは別にこみいったことではないが、勇気が要ります。人が自分自身の善性に耳を傾け、それに従って行動するのには勇気が要ります。われわれは自分自身になり切る気があるかどうか。これが大切な問題です」(67頁)は、それこそ昨日読んだ「トランスパーソナル心理学」の主張をそっくり先取りしています。

 あとね、ランバレーネのシュバイツァー博士が、現地の呪術的医師の役割を決して軽視していなかった、という話なんかも、実に興味深い。現代医学とは別のアプローチがあり得るということを、アフリカの呪術師の治療の中に、ちゃんと見て取っていたんですな、博士は。

 それから、現代アメリカでは「鎮痛剤」が万能薬のように用いられ、「痛み」を忌避する風潮が強いけれども、本来痛みというのは、人間にとって非常に有意義なものなのだ、ということを、ハンセン氏病の治療に活躍されたポール・ブランド博士の体験から説き起したエッセイも面白かった。

 そして、最後の最後、ニューヨークの街角で、かつて自分に死の宣告をしたある医者とカズンズが偶然出くわす場面で本書は終るんですけど、この場面が良いんだ! すごく良い。迫力あるよ! そこで何が起ったか・・・それは実際に本書を手に取って読んでみて下さいな。


 自己啓発思想というのは、思考の持ち方によって病気も治すことが出来る、というのが大きな主張になっていて、その科学的後楯が「プラシーボ効果」という現象なんですが、私が本書を読んだのは、本書がまさに「プラシーボ効果」についての有名なエッセイだから。しかし、そういったことを除いたとしても、面白く読める本ですし、私は結構感銘を受けながら読みましたね。仮に私が難病にかかったとしたら、多分、カズンズと同じような行動を取るだろう、という感じもして、何となく親近感が持てますし。というわけで、この本、教授のおすすめ、と言っておきましょう。


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Last updated  August 24, 2016 01:48:53 AM
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