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2017/02/26(日)10:52

リアリティの線引き

 私、小説を読むにしても、映画を観るにしても、結構「リアリティ」というものを重視するんです。リアリティがない小説とか映画って、私にはまったく興味が持てないんですな。これはもう、子どもの時からそう。  ただ、私が言う「リアリティ」のあるなしを人に説明すると、かなりの頻度で受け入れられないことが多い。つまり、私と他の人の「リアリティ」についての感覚が、どうもズレているらしいんです。  それがね、ワタクシ的にはどうも納得できない。どうして人は、ワタクシのリアリティ感覚を共有できないのかと。  例えば先日このブログでも紹介しましたが、昨年の話題作『ルーム』は、私にはまったくリアリティがない。あんなゆるゆるな監禁のされ方をして、7年も閉じ込められていたなんて「あーるわーけなーい!」と思っちゃうので、映画自体、まったく評価できない。  だけど、『ホームアローン』で、家族旅行をする時に、一番下の坊やを家に忘れてきてしまう一家の話は、私にはすごくリアリティがあるので、まったく気にならないわけ。ありますよ、大事な人のことを、うっかりスッコーーーンと失念してしまうことは。例えば、Aさんのためにサプライズを仕掛けようとして、友人たちとさんざん打ち合わせしておきながら、肝心のAさんに連絡するのを忘れて、当日、Aさんが来なかったとか。そういうことってあり得ると思うんです。  だから、ここに私にとっての、リアリティの明確な線引きがあるわけですな。  だけど、いつもいつも明確にリアリティのあるなしが分れるわけではない。グレーゾーンもある。  例えば、『超人ハルク』はどう? あれ、通常の状態とハルク状態では、図体の規格がまるで変ってしまうでしょ? その場合、リアルに考えれば、ハルクは下半身も剥き出しになるのではないかと。だから、ハルクがハルクに変身した後もズボンだけは履いていることは、リアリティがないのではないのか?  それは私もそう思います。だけど、まさかすっぽんぽんのハルクをスクリーンに出すわけにはいかないでしょ。その辺の大人の事情は私にも理解できるので、「この映画、リアリティないな=つまらないな」とまでは思わない。許せる範囲、っていう感じ。  じゃあ、アレはどう? 『ちびクロサンボ』。  あの小説で、何匹かのトラがグルグル回っているうちにバターになるでしょ? トラバター。で、サンボはそのバターでホットケーキを169枚くらい食べる。  さて、この小説、ワタクシにとってリアリティはあるでしょうか、ないでしょうか?  あります。めちゃくちゃ、ある。そりゃ、トラがあんなスピードでグルグル回れば、バターになっちまうでしょうよ。それもすごく美味しいバターに。だから、小さな少年が自分の身長の何倍もの高さに積み上げられたホットケーキを平らげたことも、すごくリアリティがある。  だから、リアルかリアルじゃないか、というのは、物理的な理屈じゃないわけよね。少なくとも、ワタクシにとっては。  この感覚、分かるでしょ? 分らないのかなあ?   だから、あり得る話であろうと、あり得ない話であろうと、リアリティというのは作れるということですな。  だからこそ、リアリティを作れない作品っていうものを、私は評価しないわけ。リアリティは、作品の基本よ。  ま、どうでもいいことですけれども、あまりにも私の「リアリティ基準」が人に受け容れられないもので、一応、自分として、明確にしておきたかったということなんですけどね。

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