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2019/02/04(月)18:51

日本人のエマソン好き

教授の読書日記(1114)

秋に某学会で、エマソン関連のシンポジウムに参加することになったので、少しずつ資料を集め始めたのですが、その過程で今から百年以上も昔、日本で出回っていたエマソン関連の本に『エマーソン氏一語千金』なるものがあると気づきまして。  これ、1897年に日本で出た本なんですが、W・C・ガンネットという人のエマソンについての本を、蓮沼磐雄という人が翻訳したものらしい。  ま、それはいいのですが、私がこの本に興味を抱いたのは、そのタイトルゆえ。  『エマーソン氏一語千金』。  すごいタイトルだよね!  で、おそらくこれはエマソン語録なんだろうと見当をつけ、国内では同志社大学の図書館がこれを持っているらしいので、それを取り寄せようとしたわけ。そしたら、図書館の司書の人から、「取り寄せなくても国会図書館のデジタル・アーカイブ」に載ってますよと指摘されてしまった。  で、デジタル版ならすぐ読めるということで、実際にチラ見したんですけど・・・ これこれ!  ↓ ​エマーソン氏一語千金​  なるほどね。  想像していた通り、これはエマソンの諸著作の中から、そのエッセンスとなるような文章を取捨選択して選び出したエマソン語録ですな。  で、訳者の方も「序」に書いているけれども、エマソンの文章は論理的な起承転結がなく、いきなり核心を突くような言葉で始まって、ふいっと終わってしまうと。だから、西欧人の文章の中でも一番読みにくいのだけれど、その幽玄な思想を読まず嫌いするのはいかにも惜しい。だから、その語録を集めた本書を苦労して訳したので、もってエマソンの神髄に触れていただきたいと、まあ、そんな趣旨らしい。  思うに、エマソンは文脈ではなく、箴言として読め、という流れは、明治時代から既に日本に定着していたのであって、この本なんぞはその証拠になるんじゃないかなと。  で、本書の中で著者のガンネットが言っているんですけど、エマソンの著作は数あれど、もし一つだけしか読めないってーのなら、『処世論』を読めと。  そのせいかどうか、エマソンの『処世論』は、1910年という早い時代に高橋五郎という人が日本語に訳しているんですな。  で、ここでも私は『処世論』というタイトルが気になるんですけど、これって要するにいかに世過ぎをするか、という論、つまり自己啓発本なんじゃね?   つまり、エマソンは語録で読め、それも、自己啓発本として読めと。そういう話なんじゃないかと。それが20世紀初頭の日本で、既に定まった見方だったんじゃないのかと。  どう、この見立て?  ま、とりあえず高橋五郎訳の『処世論』を取り寄せているところでございます。

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