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カテゴリ:教授の雑感
トランプ大統領が、またまた物議を醸すツイートをし、民主党が中心になって非難決議を出したりしてお騒がせしておりますが、ああいうのを見るにつけ、トランプという男がいかにしたたかな奴か、という思いを強くしますなあ。
というのも、トランプ氏、あれ、わざとやってるからね。決して「失言」ではない。その点、失言で失敗するどこかの国の政治家どもとは大違いよ。 わざとやっているということは、ああいうツイートをすることにメリットがあるからやっているということだからね。 そもそも、共和党支持者・・・というか、過半数を占める保守的なアメリカ人は、トランプ氏のツイートと同じようなことを常日頃、感じているわけよ。だけど彼らはコンプライアンスを遵守する良識人であって、もちろん公けの場でああいうことを発言しないし、出来るとも思ってない。 それを、こともあろうに公人中の公人である大統領が、自分たちに成り代わってツイートしちゃうんだから、表向きには眉を顰めこそすれ、心の中ではあっはっはと笑っているわけですな。 笑っているったって、トランプ氏の支持者たちが人種差別的な発言に賛同しているわけじゃないよ。そこを間違っちゃいけない。彼ら全員がゴリゴリの白人至上主義者だなんて思ったら、それこそ大偏見というもの。ただ、言ってはいけない、思ってもいけないと分かっていることを、あっけらかんと大統領が言うから、ちょっとせいせいした思いをしているだけのことであって。 で、その辺のことも考えず、民主党やその支持者たちはしゃにむに怒髪天の勢いで怒り出すわけですけれども、トランプ氏からすれば、それも最初っから計算済み。そもそも反対党を怒らせるのが面白いから、わざわざやっているのだし。だから民主党が非難決議なんか出そうものなら、トランプ氏としてはまさにしてやったりというところでしょう。トランプ氏とその支持者たちは、互いに目配せし、ウインクし合って、「あいつら怒らせるの、面白いねえ! これからも時々やるから、期待して待っててね!」って、内心、大笑いしているんじゃないすかね。そしてそのことによって、トランプ氏とその支持者たちの連帯感はますます強化されると。 だからトランプ氏としては、民主党が怒り狂って非難決議を出すほどに、選挙戦ではより有利になっていくという。物議ツイートのメリット、ありありよ。となれば、今後も選挙を有利に進めるために、あの種の発言を定期的にやらかすことでありましょう。 となると、いくら民主党がトランプ氏を下衆と決めつけ、「こいつ、こんなに最低な奴なんですよ!」と主張しようが、それはトランプ氏の支持層を突き崩すためには何の役にもたってないってことだよね。 むしろ研究すべきは、トランプ氏の人心掌握術よ。民主党からすれば、存在すること自体信じられないような下衆に見えるかも知れないけれど、その程度の認識では、彼にはとうてい勝てないと思う。 そもそもトランプ氏=最低の下衆、という認識はおかしいし、彼の支持層が一人残らず下衆である筈がない。彼らもまたごく普通の良識あるアメリカ市民なんだ、という認識からスタートしなくちゃ。 で、そのごく普通のアメリカ市民たちには現状に不満があると。そして民主党は、彼らの不満をまったく理解してないと。だから民主党を手玉にとってからかうトランプ氏に共感しているのであって、問題はトランプ氏ではなく、民主党の方にこそある。そもそも人種差別とか、そういう問題ではないわけよ。 だから本当に次の大統領選で勝ちたいなら、民主党はもっと勉強しなくちゃダメ。トランプを支持する過半数のアメリカ人の不満の在り処をしっかり把握して、それを解消する上で共和党の政策よりもさらに優れた案を出さなくちゃ。トランプはアメリカを分断しようとしている! 民主党の大統領候補者は清廉潔白な人格者だ、なんて繰り返したところで、トランプ陣営としては痛くも痒くもないでしょうよ。 それに、もともと民主党の政策ってのは、アメリカの保守層にとってはまったく魅力がないからね。 民主党が大統領戦で勝つ時は、現状の不満への解消法ではなく、何だかよく分からないけれども、民主党候補を選んだらなんとなくより良い未来がやってくる・・・んじゃないかな・・・という漠然とした期待を抱かせるのに成功した時、いわば絵に描いた餅を提示して、それが受け容れられた時に勝つんだから。現状から目を反らす新味の魅力が旧勢力を上回った時に勝つのよ。そのためには若くてフレッシュな人たらしを候補に立てないとダメ。ケネディとか、カーターとか、オバマとか、みんなそうじゃないの。それなのに、バイデンだとかサンダースだとか、煮しめたようなお年寄り候補を立てているようじゃ全然話にならない。 だから、オプラを出しなさいって。それが唯一のチャンスだよ。 ま、とにかく、トランプ氏がおちょくり、それに対して民主党がくそまじめに烈火のごとく怒る、という図式をいつまでも繰り返しているなら、もう1期、トランプ政権が続くことへの覚悟をしておいた方が良さそうですな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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はーっ、なるほど。
鋭い洞察に目から鱗が落ちました。 読むほどに納得するばかりで、逆にそれ以外の理由が思いつかないほど腑に落ちました。 対岸の火事というと言葉が悪いですが、日ごろ人種とかをあまり意識せず生きる私からすれば何故あんな発言をするのだろうと不思議でした。 ですが、たった今、納得!! いいね!があったら押したいです。 (July 18, 2019 01:13:31 PM)
ぐうたらママさんへ
うひょ~、お褒めのお言葉、ありがとうございます。 小生、アメリカ文学の徒でありまして、アメリカの政治とか、そちら方面には疎いのではありますが、文学的に見るとこう見えるというところを披歴させていただきました。 民主党の人たちは、トランプ氏を蛇蝎のごとく嫌うし、日本のアメリカ学関係者もおおよそそんな感じですが、私はそこまで嫌いじゃない。葬儀とかでたまに会う親戚のおじさん程度には面白い人なんじゃないかと私は思っています。 不法移民の問題ってのは、実際に起ったら厳しいですよ。日本は島国だから、不法移民も少ないですけど、これが地続きでどんどん入って来られたらたまらない。 そのたまらない状況を、アメリカだけは我慢しろ、というのは虫が良すぎるような気が私はします。だから、トランプの言い分だって、基本的にはそんなにひどい話ではないと思うのですが、どうしてリベラルの人たちはそう思わないのか、私には謎ですね・・・。 (July 18, 2019 11:42:43 PM) |
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