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釈迦楽

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January 7, 2025
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カテゴリ:教授の読書日記
故・山口瞳の奥さん、治子さんが書いた(書いたと言っても、記者による聞き書きだけど)山口瞳伝、『瞳さんと』という本を、昨年末に読んだまま心覚えをつけていなかったので、忘れないうちにこのタイミングでチラッと書いておきましょう。

 ちなみに、何で今更山口瞳かというと、この人は常盤新平の文学上の、そして人生上の師だから。常盤新平のことを書くとなると、その師匠がどういう人だったかも、一応は知っておかないとまずいじゃん? だから読んだわけ。仕事がらみよ、仕事がらみ。

 だけど、この本自体はとても面白かったです。なるほど、山口瞳ってそういう人だったのか、というのがよく分かる。ある人のことをよく知りたかったら奥さんか娘さんに聞け、というのは、この本にも通用するようで。

 で、山口瞳と治子さんは、鎌倉アカデミアで出会ったのね。当時そこで短歌を教えていた吉野秀雄に可愛がられて、終生、吉野を尊敬していたらしいけど。ちなみに山口瞳の実家というのは、山師の家系というのか、景気のいい時はすごく景気がいいし、事業に失敗するとすごく景気が悪くなる。でも、お金を失っても意気だけは保持するので、全然落ちぶれた感じにはならなくて、次の山を当てに行く、的な家なんですな。一家そろって賭け事好きで、山口瞳もギャングラーとして相当な腕だったらしい。

 で、治子さんと出会った頃は、景気のいい時だったので、治子さんは颯爽たるお金持ちのお坊ちゃんとしての山口瞳に出会うわけ。

 で、結婚する。双方、惹かれ合って。その辺の恋愛経緯は、なんだかとっても昔の日本映画みたいよ。

 で、最初山口瞳はしがない出版社に勤めるんだけど、社長さんに「大学くらい出ておけ」(鎌倉アカデミアは大学ではないし、途中で無くなってしまった)と言われ、国学院大学に通いながら社員を勤めるのね。で、そこからサントリー(寿屋)に移籍して『洋酒天国』の編集かなんかやる。つまり、開高健の部下になるわけよ。

 で、その内、『江分利満氏の優雅な生活』で直木賞をとり、某出版社から「男性自身」というエッセイの連載をしてくれれば高給で雇うと言われ、寿屋を辞めて筆一本の生活になると。

 ちなみに、やっぱり直木賞をとるとスゴイもので、賞をとった後、玄関の呼び鈴が鳴るので、出てみたらそこにダークダックスのメンバーがずらっといた、なんてエピソードも書いてある。要するに、作詞をしてもらいたかったのね。断ったらしいけどね。

 で、その後、延々と「男性自身」を連載しながら、『人殺し』とか『血族』とか、そういう作品を山口瞳は書きます。

 だけど、山口瞳の書く小説ってのは、家族のこととか、自分が実際に体験したことを書くらしいのよ。つまりは私小説。『血族』というのは、自分の母親が遊郭を経営する家の娘だった、ということを暴露的に書いた小説だそうだし。『江分利満』だって、自分の家族がモデルだし。

 で、ここでなるほどと思ったのだけど、常盤新平と同じなわけですよ。逆か。常盤新平が師匠の山口瞳と同じことをしたのか。自分や自分の家族のことを小説に仕立てるという。ここに師弟のラインがあるわけね。ラインと言えば、山口瞳はギャンブラーだったけど、常盤新平も下手の横好きで競馬はやっていたみたいだし。

 ま、とにかくそんな感じで生涯売れっ子作家だった山口瞳は、前立腺肥大の検査入院したら、肺がんが見つかり、それであっさり亡くなりましたとさ。

 山口瞳は、治子さんに対して常に敬語というか、「○○してください」とか、そういう口調の物言いをしていたみたいで、その辺の夫婦像も面白い。

 でも、治子が二人目を妊娠した時、瞳が中絶を主張し、それを押しとおしたことで、治子の体調が悪くなり、そこは二人の間の宿痾となったらしい。聞き書きのせいもあって、この本の中にはあまり深くは書いていないけど、のちに二人の一粒種の正介さんが、『山口家の崩壊』的な暴露本を出しているみたい。そこまで読むつもりはないけど。

 ということで、とりあえず山口瞳というのがどういう人で、どういう生涯を送ったのかはおおよそわかりました。全体として、面白い本でした。興味のある向きにはおススメ、ということで。


これこれ!
 ↓

【中古】瞳さんと /小学館/山口治子(文庫)





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Last updated  January 7, 2025 11:45:27 PM
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誰も知らないCoffeeWorld@ Re:常盤新平著『姿子』を読む(01/24) トピックと関係ありませんが、自己啓発関…
釈迦楽@ Re[1]:再校作業に取り組む(01/23) まめたん20さんへ  あー、マイクさんの…
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