6809809 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

教授のおすすめ!セレクトショップ

教授のおすすめ!セレクトショップ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

釈迦楽

釈迦楽

Keyword Search

▼キーワード検索

Freepage List

Shopping List

お買いものレビューがまだ書かれていません。
October 15, 2025
XML
カテゴリ:教授の読書日記
やばいな、最近、高橋哲雄にハマってしまった。今日は高橋さんの『先生とはなにか』という本を読んでおりました。

 この本、タイトルの通りで高橋さんが「先生」という存在は、一体、何だろう?という自ら出した問いに答えんがためのもの。最初に高橋さんが中学時代に影響を受けたという「難波江通正」という先生のことがチラッと書いてあって、これはまさに心の師、メンターに相当したと。

 で、それを踏まえて、本書の本体では、大野英二という、高橋さんより9つ年上の、そして高橋さんが京大時代にゼミ生として師事した経済学者との学問的・人間的な関係を主として綴り、それと対比するように、大野先生以外にお世話になった色々なタイプの先生とのことも綴りながら、最初の問い、すなわち「先生って何?」という問いに深く深く考察していくわけ。

 で、その大野英二氏なんだけど、これが学者としては非常に優秀で勉強家なんだけど、人間的には少し硬いというか、清濁併せ呑むというところがなくて、なんでもシロクロハッキリさせたがる人なんですな。だから、弟子を見る目も、自分に完全に心酔していればよし、そうでなければ敵、みたいに二分してしまう。

 そういう先生に、高橋さんは振り回されるわけね。一時は心酔し、師事し、やがて兄事するようになり、批判し、破門され、復縁し、それでも時々、また破門か?というような冷やっとしたこともあり・・・というような付き合いが続くと。

 で、そういう一連の「先生ー弟子」関係の変遷を読んでいる内に、私は、「アレ? これって、あの本にそっくりだな」という思いが強まりまして。

 私が「あの本」というのは、四方田犬彦氏が、大学時代の恩師である由良君美との関係を綴った『先生とわたし』という本。あれも、若く眉目秀麗でキレ者だった由良と、そのゼミ生となった俊英・四方田との出会いと絶縁の物語だったわけですけど、由良ー四方田の関係性と、大野ー高橋の関係性って、ほんとそっくりよ。

 で、本書を読み終わって「あとがき」を読んでビックリ。

 そこには、この本の執筆動機が書いてあるのですが、それによると、高橋さんが四方田犬彦の『先生とわたし』を読んで、「これおもしろいよ」と親しい編集者に告げたら、その編集者は高橋と大野の関係を知っていて、「だったら、高橋さんも大野さんとのいきさつを書けばいい」と勧めた、というわけ。で、最初は断っていた高橋さんですが、その編集者が大病を患い、余命いくばくかとなったのを機に、その編集者との最後の共同作業としてこの本を書くことを決めたと。まあ、そういうことだったらしい。

 どうりで! 

 しかし、高橋さんがこの本の「終章」で書いている次の一節は、私としてもホントに納得っていう感じ。ちょっと抜き書きしてみましょう。

 先生がいろいろであるように弟子もさまざまである。どうもこの世には先生を必要とする人としない人、もちたいと思う人と思わない人の、二種類の人間がいるのではないかという気がする。それは先生をもつ人ともたぬ人の違ちがいとも微妙に重なる。
 私はこの本を書きながら、ほんんど会う人ごとに「あなたには先生と呼べるような人はいましたか」と訊ねてきた。何の留保もなくイエスと答える人はごく少なく、「先生が何かによるな」とためらいながらも「いた」と答える人は意外に少なくて、そのかなりは仕事の面で目標とする人、影響を受けた人を挙げた。つまり実際的な役割の、「余計でない部分」の先生を挙げた。「いなかった」という人の多さにおどろかされた。りっぱな学歴をもっている人でそうなのである。
 私の物語は前二者、つまり先生を必要とし、もちたいと思い、そして幸か不幸かもってしまった人だけに縁のあるお話である。後者の人びとは変化を望まず、「触媒」の必要を感じず、自分が別人になったという感動をしらないままに一生を終える。不幸とは言わないが、「ソクラテスの幸福」、すなわち己を知り人を知る幸せは彼や彼女のものではなかった。(239)

 
 これねー、ホントにそうなのよ。私も事ある毎に「あなたには先生と呼べる人、いる?」と訊ね、高橋さんが書いているのとまったく同じ回答を得てきたからね。人間には先生を必要としない人が大勢いて、ごく少数だけど、幸か不幸か先生を持ってしまう人がいて、その両者の間には深い溝があるの。もちろん私は後者で、だから高橋さんのこの本がよく分かるし、四方田さんの『先生とわたし』もよく分かる。私自身、私版の「先生とわたし」を二冊も書いたもんね。『S先生のこと』と『エピソード』の二冊。

 ということで、この本、分かる人には分かるし、分からない人には分からないんだろうなと思いつつ(実際、アマゾンレビューなんかみても、正反対のレビューが出ているもんね)、私にはとっても面白い本なのでした。高橋さんは、果たして、私の『S先生のこと』は読んでくれたかな?


これこれ!
 ↓

先生とはなにか 京都大学師弟物語 [ 高橋哲雄 ]





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  October 15, 2025 05:04:59 PM
コメント(0) | コメントを書く
[教授の読書日記] カテゴリの最新記事


Calendar

Headline News

Favorite Blog

庭の土佐文旦と茶の花 AZURE702さん

YAMAKOのアサ… YAMAKO(NAOKO)さん
まるとるっちのマル… まるとるっちさん
Professor Rokku の… Rokkuさん
青藍(せいらん)な… Mike23さん

Comments

釈迦楽@ Re[3]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  ああ、やっぱり。同世代…
丘の子@ Re[2]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 釈迦楽さんへ そのはしくれです。きれいな…
釈迦楽@ Re[1]:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 丘の子さんへ  その見栄を張るところが…
丘の子@ Re:『2001年宇宙の旅』を知らない世代(09/13) 知らなくても、わからなくても、無理して…
釈迦楽@ Re[1]:京都を満喫! でも京都は終わっていた・・・(09/07) ゆりんいたりあさんへ  え、白内障手術…

Archives


© Rakuten Group, Inc.
X