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カテゴリ:教授の読書日記
名著の誉れ高いE・H・キンモンスの『立身出世の社会史』を読んだのだけど、これがまたすごい本だったんですわ。
キンモンスはアメリカ人で、当然ネイティブではないのだから、日本語は大学生になってから獲得した外国語なわけ。にもかかわらず、19世紀後半以降の日本語の文献、それもお堅いところから雑誌の類にいたるまで、公的な統計から大衆小説の類までを博捜し、そういう現物の資料を駆使して、明治維新以降の日本人の立身出世へのアプローチの変遷を、まあ具体的に、圧倒的な説得力をもって、論じている。 で、その過程で、従来の日本人研究者の研究、それも丸山真男レベルの学者たちの研究成果の誤謬やら根本的な見当違いをばったばったと暴いているところがすごいのよ。まさに完膚無きまでに、エライ先生がたのお説を木っ端みじんに粉砕している。で、その批判があまりにも説得力があるので、日本のことを調べている日本人研究者がいかにダメか、ということが明白になるという。 しかもこの論文、キンモンスの博士論文を元にしている。ということは、これを書き上げた時、キンモンスは二十代後半だったっていうね。 これこれ! ↓ 立身出世の社会史 サムライからサラリーマンへ [ アール・H.キンモンス ] もう、こんなの読んだら、何も言えねー・・・。 日本人の大学院生が、アメリカ史の一側面、それも19世紀のアメリカ史の一側面、を調べて博士論文にし、それでアメリカのその分野を専門とする名高い研究者を完膚無きまでに遣り込める、なんてこと、あるかなあ? ほんっと、すごい人だわ。キンモンス。変な名前だけど。 差し当たり自分のことは棚に上げておくけど、今、日本のアメリカ文学の研究者で、こういう重厚な研究をしている人っているんだろうか。たまたまチラッと読んだそこそこ話題の作家・作品を気まぐれに選んで、ちょこちょこっと論じる程度のものしか最近読んでないぞ。論じている当の作家だって、10年持つかどうかわからないようなチンピラばっかだし。 キンモンスの本の中にラフカディオ・ハーンの話が出てくるのだけど、キンモンスが見たハーンって、ものすごい洞察力を持っているのよね。凄いな、この人って思う。 ハーンの本当のところを論じようとしたら、研究者が一生をかけるべき研究になると思う。でも、アメリカ文学研究者で、本格的にハーンを研究している人なんていないじゃん? アメリカの研究者だって、ハーンの日本観までは把握できないだろうし。 だったら、チンピラなんて研究してないで、ハーンを研究すればいいのに。二十年かければ、それなりにモノになる研究ができるんじゃないの? その辺の嗅覚のある若手も、今、アメリカ文学研究の世界で、いないんだよなあ。センスないよね。 とにかく、キンモンスはスゴイ。ビックリしました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
November 16, 2025 08:08:38 PM
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