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穂坂志木市長訪問記

 行政パートナーやシティマネージャー制の導入など<市民
の目線>での改革を進めてみえる埼玉県志木市の穂坂邦夫
市長を過日、知人とお訪ねしました。志木市の政策の詳細は
ホームページhttp://www.city.shiki.saitama.jp/ 参照
 自治体職員有志の会の第4回オフ会&講演会で穂坂市長
に講師をお願いしている関係もあり、穂坂市長にメルマガや
「私が好きな言葉」、政策提案、自治体プロ職員について
の考え方をしたためた拙稿をお送りしたところ、会っていた
だくことになったものです。
 質問にお答えいただいた内容を中心に共有させていただき
ます。(文責は山路にあります)

○日 時:平成16年1月27日(水)13:45~15:00
○場 所:志木市役所市長室
○面談相手:埼玉県志木市穂坂邦夫市長
○内容:以下のとおり
<はじめに>
・首長の多選には反対であり、自分はどんなに長くても二期ま
でと決めている。その意味では米大統領の二期八年という期限
はいい。
・自分がやるかどうかということではなく、市民が選択するべきだ。

<市民の関心を高める方策について>
・特効薬はない。市民の関心が低い理由は役所の閉鎖性、特殊
性、官主導が理由だ。例えば特殊性ということで言えば、予算の
「款、項、目」なんて市民は誰も知らない。
・市民にいきなり「市政に関心を持て」と言っても難しいので、まず、
情報公開と共有、次にコミュニティ活動の活発化(自然発生的な
口コミによる)と市民との協働を心がけている。協働は政策立案
過程への参画ではなく、市民運動、活動として官ではできないこと
をやってもらう。行政主導への参画ではない。

<新しい「公」の役割分担について>
・神野先生や西尾先生も言っていたが、公を担っている国と自治
体、その中でも都道府県と基礎的自治体である市町村を一緒に
するのはナンセンスである。
・基礎的自治体では「公」の領域は本来行政ではなく、民が決める
べきである。
・制度は時代とともに変わる。例えば議会と首長の二元性であるが、
都道府県は良いが、基礎的自治体にとってはどうか。
・公務員と行政パートナーとの役割分担の基準では、危険を伴うも
の、裁量権の多いもの、短時間で裁量権を伴うものは公務員がや
るべきである。また、別の基準としては公権力を伴うものとプライバ
シーに関することも公務員がやるべき。
・行政パートナーを役所に入れることで職員のモラール、士気が低
下するという問題では、同じように専門家を職場へ入れたら取り合い
になることと比較して考えないといけない。
・市民を入れた場合のデメリットというが、市民の目線を早期に意識
することの意義は大きい。
・キャノンの御手洗社長が言っていたが、民間では研修が一番多い
のはトップ自身である。

<教育委員会不要論について>
・市町村長の廃止論もそうであるが、55年前のシステムがうまく機能
するはずがない。理念は良いが、システム、制度といったものはつく
ったときから腐る。
・シティマネージャー制は現行制度では市民が仕組みを選ぶ術がな
いと思い、提案した。
・理想と現実があるが、いくら良い制度でも飯が食えなければしょうが
ない。
・教育委員は市民と身近でない。中立性を担保する必要はあるが、
それは現行の教育委員会制度でなくてもできる。
・教育委員会を市長部局へ入れようとは思わない。責任者がいれば
良いと思う。条例設置の審議会などで中立性は保てる。
・最終的には現行の教育委員会制度化、新しい制度かを市民が選べ
ば良い。

<行政パートナー制度等行財政改革、住民自治に関する取組みと
課題、方向性等について>
・志木市では、少子高齢化、歳入の減少等を見越して、ローコスト
で効率的な行政運営と行政サービスの提供を目指している。
また、本来、行政のオーナーは「市民」であることに原点回帰
するため、政策決定段階及び実施段階への市民の参画を積極的
に進めている。今後、増税ができず歳入が減少する中で住民自
治による持続的な行政運営を目指すため、「地方自立計画
(H14~33)」を作成した。
・政策決定段階への市民参画として「市民委員会」を設け、行政
側と並行して新規施策の提言、予算編成過程での参画などを進
めている。
・ 一方で、実施段階での参画を進めるための中核的な取り組みと
して「行政パートナー制度」を整備した。同制度は、住民自身が
行政サービスの担い手となることで住民自治の意識を高めること
や、行政職員と担い手を置きかえることで、行政運営のローコスト
化を実現し、歳入が減少しても持続可能な体制構築を目指してい
る。15年度から実施し、4業務(総合受付窓口、郷土資料館管理、
いろは遊学館受付、運動場施設管理)について実施している。具
体的な方法として、行政側及び市民側から提案があった業務につ
いてNPOなど希望者を募り、委託契約により執行をお願いして
いる。委託先は原則として市民公益活動団体に限っているので、
個人の希望者はまず市に予備登録をしてもらい、ある程度まとま
った希望者が集まった段階で団体を結成いただき、市から委託す
る方法をとっている。
・現在のところ業務上のトラブルはなく評判はよいが、責任の所在
や守秘義務などの課題を解決していく必要がある。担い手には
「業務+社会貢献活動」の意識で業務に当たって欲しいと思ってい
る。
・同制度が順調に導入されれば、20年後(H33年)には職員が半減
(619人⇒301人)になる。現在は新規に職員を採用していない。
最終的には現在の1/10程度(50人程度)の人数で運営可能と考え
ている。
・個々の職員に不満はあると思うが、リーダーとしての責任で実施
している。現在所属している職員の待遇を変えるつもりはない。
臨時に職員が必要となった場合、その都度募集する。
・自治体職員にはそれほど専門性を求めない。評価の基準として
「向上心」を挙げている。今後専門職が必要な場合もあると思うが、
任期付き職員採用などで対応する。職員には専門性よりむしろ、市
民と同じ目線でものを見れることを求める。そのことがあって初め
て市民ニーズに気づくことができる。
・市民の関心は低調である。しかし50年間行政中心の地域運営を
続けてきたので、粘り強く住民自治を訴えるしかない。また自治体
も規模や地域性が千差万別であり、同じ仕組みを全ての自治体が
持つ必要はない。市長を廃止、し議会が選ぶシティマネージャー制
度を特区として提案しているが、その意図は、制度の選択を含め、
住民が全ての仕組みを決定できることを提案したいためだ。

<感想>
・トップの重要な資質として退路を断ち、ビジョンを示すということが
ありますが、まさしく2期8年というデッドラインを引き、市民の目線
での改革を実践されています。
・決してトップダウンではない、職員と協働しているから実績が上が
るのだと思います。
・システムはつくったその時から陳腐化するとのご意見には共感し
ました。松下電器を回復軌道に乗せた中村社長が経営の神様
とされる松下幸之助氏を尊敬しながらも同氏が考えた事業部制に
ついて「古くて通用しない」とスクラップしたことが思い出されます。
  




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