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安延申さんのIT新時代と企業経営の講演

 【安延さんの講演】
 平成15年2月11日に、通産省(現経済産業省)IT政策の第一線で活躍されながら、電子政策課長を最後に辞職され、スタンフォード大学日本センターに籍を置きながら、自らITベンチャー企業(現在では合併して既公開企業になっている)を起こされて社長をされている、安延申さんのお話を聞く機会がありました。
 三重県の顧問と、志摩サイバーベース推進協議会委員をされている関係で「IT新時代の企業経営」と題した講演があり、私は以前からマスコミ誌上で存じ上げていてぜひお会いしたいと思っていたので参加しました。
 安延さんが通産省を辞めた理由には「役人あがりの自分が民間で通用すれば『霞ヶ関も口だけじゃないな』と思ってもらえるから」ということがあったそうで、スタンフォードに籍を置きながらも、「理論や研究ばかりでなく、現実のビジネスとリンクさせて考えたい」と企業経営に関わってきたとのことです。
 講演の内容は、ITに関するグローバルな話から身近な起業のことまで具体例を交え、わかりやすいものでした。
 会場で質問と名刺交換もさせていただくことができ、夜道に迷いながらも参加した甲斐がある内容でした。迷ったときには参加するというという選択をしてよかったと思います。
 以下に印象に残ったお話をお伝えしたいと思います。

<講演概要> 
・世の中の論調はきまぐれであり、1980年代までは、日本が賛美されたが、
1990年代になると、「役所をはじめとした日本のスピードが遅い」と言われ、
今や、日本の競争力は世界30位となっている。
・しかし、本当にそうか?基本的な競争力はそんなに短期間に変動するのか?かつての住み良い都道府県のランキングの実感がなかったのと同様に「うそではないが、あまり当てにはならない」ということが言えるのではないか。
・技術パラダイムが大きく変わるときに「既存の成功者」が、「革命の担い手」になるのは簡単ではない。
・近年では、企業間の競争はグローバルになってきているため、日本企業の優れた特質といわれていたものが通用しにくくなっている。
・「阿吽の呼吸」、「口述秘伝」の世界で行われていた、優れた生産技術がITの
進歩により、かなり普遍的に実現できるようになったからだ。
・ところで成功していたはずの米国でもNYダウやNASDAQの総合指数が低下しており、その結果、ITに対して懐疑的なことが言われ、そういった本がたくさん書かれてもいる。
・確かに米国のIT企業は大変そうだが、アマゾンなどビジネス・モデルの建て直
しに成功した企業は回復しているし、ITを抜きにしてはビジネスを語れない分野
がある。
・IT導入の経営的意味は、2つあり、一つは「既存の経済プロセスの合理化/効
率化」であり、もう一つは「新しいマーケットやサービス/製品の提供/創設」で
ある。つまり、ベンチャーにとってはコストを下げる意味があり、すべての企業に
とってITは生存競争の手段となっている。
・ITの導入事例とその効果については経済産業省関連のITSSPホームページ
http://www.itssp.gr.jp/を参照していただくといいが、エクセル・ソフトの活用などコストがかからなくてやれることがかなりある。
・2000年頃までは、ITはそれ自体が付加価値を創り出すと言われたが、そうい
うケースは、インターネット、携帯電話、プレステなどレアケースである。つまり、
すべての企業に普遍的に共通する課題ではないということが言える。
・むしろ生産手段として使うことで、リアルの時代ではできない、コストを下げるとか、連絡が密になるといったことにつながる。
・どう使うかということが、企業の競争力を考えるのに重要なファクターになる。
・携帯電話やテレビなどに比べるとパソコンはまだまだ不親切で、改善の余地が
ある。
<質疑応答>
Q)Winner takes allと言われるが、二番手には勝ち目がないのか?
A)単純で汎用性の高い製品ではそうだが、そこに戦略性が入ってきて、違いを求められるようになると、サービスやきめ細かさと言ったものが求められるので勝機はある。例えば、ゲームソフトなどの分野がこれにあたる。
Q)ITは地理的条件の不利を克服するか?
A)半分あたっていて、半分外れている。最先端の部分は東京の中でも局部集中があるほどなので、これはかなわないが、アメックスの「アジア・太平洋地域のコールセンター」がオーストラリアに置かれたり、一時、沖縄がコールセンターのビジネスで成功したように勝てる分野もある。




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