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名古屋大学後教授のNPO講演録

【名古屋大学後教授のNPO講演録】

○日 時:平成16年3月4日(木)19:15~21:15  
○場 所:名古屋市内 市民フォーラム21NPOセンター事務所
○発表者:名古屋大学大学院法学研究科教授 後 房雄氏 
○テーマ:「志木市・東海市の自治体改革」
      「自治体改革とNPO」など     
○内 容:以下のとおり(文責 山路)

<後先生のお話の概要>
・事業体型のNPOを志向するという考えであるが、この
ようなNPOが日本にはなかった。
・NPOの仕事は行政の仕事の事業委託の占める部分が
大きい。英米のNPOでも3~4割が行政からの受託の収
入で、5割が事業収入で、残りが寄付である。
・志木市のように行政の仕事の9割をNPOが担う方向
にならないとマーケットは成立しない。その意味では穂坂
市長の発言は現役の市長としてすごいことであり、度胸が
ある。
・NPOの会計支援について、税理士会との仲介を私が代
表をしているNPOセンターが務めた。
・NPOセンターには8人の有給職員がいて、7,200万の
予算であり、3,000万~3,500万を人件費が占めている。
・事業体型のNPOのコンセプトが日本にはない。
・行政はNPOを全員ボランティアだと思って物件費だけ
で人件費は要らないと思っている。
・NPOへの事業委託については日本NPOセンターなど、
NPO自身でも警鐘を鳴らしているところがある。
・NPOが事業をやり、利益を上げることはNPO活動と
矛盾することにならない。非営利というのは利益を求め
ないということではない。「利益の非配分」ということである。
・役員や会員には配分してはならないが、有給職員に
払うのは配分ではなく、経費である。配分しないで次の
活動に使うことになる。利益の非配分を確立しているか
ら寄付が集まるし、ボランティアが集まる。
・その意味では宗教団体と政党は究極のNPOとも言え
るが、活動領域が違うので本来のNPOとは区別している。
・なぜ、NPO活動をするのかについてニューヨークで
インタビューしたところ、“Because I feel good”(気持ち
がいいから)という答えが返ってくるという。自己犠牲では
ない。
・割合としてはフルタイムで働いている人の方がNPO活動
に積極的である。忙しい人ほどボランティア活動に熱心
だということもできる。
・呼び方の問題に現れているが、英国では、ボランタリー
オーガニゼーションというのに対して、日本ではボランティア
団体と呼ぶ。つまりボランティアの集まりだと思われている。
・日本では、事業体型のNPOが存立しにくい。
・事業体型のNPOを目指すには、有給の職員を置く
必要がある。金がないということで置かないのは順番
が逆で、収入を増やす先行投資と考えるべきだ。
・民間団体が公務を実施するのはタダではない。例えば
志木市の有償ボランティアである。
・レスター・サラモンというNPO学者は「第三者政府」では、
企画立案とチェックは行政、実施は民間としているとする。
・人口1,000人当たりの公務員数では英国が70人、米国
が50~60人であるのに対し、日本は30人であるので十分
少ないので公務員数削減の話はしなくていい。
・以外に少ないと感じるのは外郭団体の存在があるから
だ。これら社団、財団等の外郭団体は「古いNPO」と位置
づけられる。
・行政と古いNPOの関係を透明にするのが行革の本丸
である。
・行政評価に取り組む自治体が多いが、事務事業評価だ
けでは施策、政策に結びついていない。三重県の事務事業
評価は職員の意識改革として導入したが、ある自治体の
事務事業評価は予算を削るための手段になっている。
・確信犯的に外部委員により、予算の削減をしている。業績
測定は米国から取り入れたが、同じく米国にあるベンチマー
クスを使っていない。
・青森県の政策マーケティングや東海市のまちづくり指標は
ベンチマークスと言える。ベンチマークスの公表は市民に
縛られるように思うかもしれないが、それは窮屈なようでかえ
って武器になる。
・究極のベンチマークスがマニフェストとも言える。
 
<私の感想>
・NPOについて日本では、民間の活動ということよりも非営利
ということが強調された感がある。それが、日本人の金銭感覚
や美徳意識と結びついて、すべて無償がいいことと勘違いされ
たのではないだろうか。
・プロの行政職員が担当していた仕事を安価な労働力としてだ
けの理由でNPOに委託するという考えでは成果は挙げられない。
・きちんとした対価を払い、プロの市民としての仕事を求めるべ
きだ。それに応えるには、後先生ご指摘の事業体型のNPOで
有給職員がいるところでないと難しいと言えるかもしれない。
・従来、第三セクターとされてきた社団、財団等の行政補完型
の外郭団体を本来のNPOのマーケットを奪っているとして排除
する論理もあるが、私は、後先生のおしゃっていた古いNPOの
転換の考えが日本にはなじむように思う。
・縦型のNPOともいえる地縁組織の自治会についても、行政の
下部組織として切り捨てるのではなく、当事者意識と参加への
主体性を持たせ、本物のNPOにしていく方向が望ましいと思う。
・事務事業評価に代表される業績測定(パフォーマンス・メジャ
ーメント)とベンチマークスの関係では、確かにベンチマークス
も必要であるが、逆に事務事業評価がなかったり、しっかり機能
していないでベンチマークスだけあるというのも危険であると思う。
(私がベンチマーキングした当時の青森県は事務事業評価が手
薄だった)
・ベンチマークスはまさしく政治家の公約のようなものであり、
州知事の交替によりお蔵入りしたフロリダのような例もある。
・また、ベンチマークスの目標値はアウトカムの正確を持ってい
るからその達成は、行政だけでできるものでななく、タイムラグも
生じる。そこは、シェアード・アウトカムという理屈で市民にその
達成を呼びかけるという意味づけにしても、寄与度を公表してい
る以上、何らかの説明責任が伴うことを認識する必要があると
思う。(以上)


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