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行政経営フォーラム第33回例会での発表

<行政経営フォーラム第33回例会での自治体職員有志の会の発表>

○日 時:平成16年2月21日(土)11:00~11:30  
○場 所:虎ノ門パストラル けやきの間
○発表者:自治体職員有志の会 山路栄一 
○タイトル:「私のパーソナル・マニフェスト」
○テーマ:「自治体職員有志の会のこれまでの活動と今後の展開」
       ~有志の会にかける思いを込めて~   
○内 容:以下のとおり(文責 山路)

<あいさつ>
・行政経営フォーラム第33回の例会において、自治体職員有志
の会の活動を発表する機会を与えていただき、お礼申し上げる。
・質疑を入れて30分の時間なので、電動紙芝居(パワーポイン
ト)は使わずに、できるだけ思いを伝えるためレジュメを使う。
・この会は神戸都市問題研究所の大島さんと二人三脚で始めたが、
今日は彼が日本にいないので私が発表者になった。
・講師によってはパワーポイントやレジュメを用意してもあまり
使わなかったり、順番どおりにされない方もみえる。それはそれで
アドリブが利いていていいが、私は普段は聞く立場なので、聞いて
みえる方が記録をとりやすいようにレジュメに沿ってお話する。

<はじめに>
・マニフェストという言葉が巷で流行し、いろいろなところで使わ
れているが、これまでのウィッシュリスト(おねだりリスト)であ
った公約に代わり、政権公約という言われ方をしているマニフェス
トが注目を集めている。
・マニフェストはその本家イギリスの例を持ち出すまでもなく、本
来は党の公約だが、三重県の北川前知事らによってその有効性が指
摘されて以来、何人かの首長からも提唱されてきた。先の統一地方
選挙では、岩手県の増田知事、神奈川県の松沢知事たちによって、
ローカルマニフェストという形で唱えられた。
・今日の講演のタイトルである「パーソナルマニフェスト」は、市
民権を得ている言葉ではなく、私が勝手に考えていることである。
その意味するところはいろいろな組織には長期の目標であるビジョ
ンがあるが、組織に属する個人も組織のビジョンの達成に貢献する
パーソナルビジョンを持つべきだと考えている。そこには当然、自
分自身のキャリアデザインの考えも入れるべきだ。個人もそういっ
たパーソナルビジョンを持つべきだというのが私の持論である。
そこで、今日のお話のタイトルをパーソナルマニフェストとした。
・先日、テレビを見ていたら、あるキャスターが小泉首相がなぜ国
民に人気があるのか分析していた。言葉には「意味を伝える言葉」
と「思いを伝える言葉」があるが、小泉さんが人気があるのは、国
民に思いを伝えているからだという。私も今日は、細かい話よりも
この会にかける思いを伝えたい。

<設立にかける思い>
・自治体職員のトップである首長の任期は言うまでもなく一期は4
年間である。多選批判は一律には当たらないし、川崎市や長野県の
ように多選禁止条例を制定したところやその予定があるところもあ
るが、いずれにしても改革を成し遂げて成果を挙げた首長さんでも
、いつかは交替する時がくる。
・これに対して職員は、最近増えてきた中途採用や長野県や横浜市
のように早期退職制度を導入した自治体もあるが、普通は、アメリ
カのポリティカル・アポインティように政権の交替によってスタッ
フが入れ替わるという制度がない以上、40年近く同じ自治体で仕
事をすることになる。そうなると、首長が交替しても改革を継続し
て実施していくのは我々自治体職員の役目ということになってくる。
・三重県は、佐賀県と並んで「見えない県」と言われてきた。47
都道府県の中で「中庸をもって尊し」とする県であり、県内を走る
国道23号線に引っ掛けて「ルート23の県」と言われたりもした。
・三重県は、財政力指数などのいろいろな指数が47都道府県の中
で真ん中くらいに位置しており、それでいいんだと満足していた面
もある。県内には、鈴鹿サーキットや伊勢神宮、松阪牛など、それ
ぞれ注目されているスポットや名物はあるが、これまでそれらがト
ータルに三重県のものとして意識されてこなかった。
・北川前知事の引退表明で外部のいろいろな方から、今後、三重県
の改革がどうなるんだと言われた。つまり普通の県であった三重県
を一挙に改革先進県に押し上げた北川さんが引退したあとの三重県
の方向がどうなるのかということが懸念されたのである。そのとき
私はそんな職員として影響力を行使できないこと言われてもしょう
がないと思った。
・自治体の首長は2つの顔を持っている。民間企業の経営者はどん
なに大きな組織であっても、組織の長としての顔だけであるが、自
治体の首長は市町村や都道府県のトップ、そこの職員のトップであ
るとともに地域の経営者としての顔がある。後者の顔があるため、
首長は選挙という民主的な方法で選ばれるのであるから、職員とし
てはその選出に影響力の行使のしようがない。一部には組合の組織
票があったり、個人として一票をもってはいるが。だから、そんな
影響力を行使できないことをあれこれ考えるよりも自分たちのでき
ることをやるしかないと思った。それには、枠を超えて他の自治体
の職員と連携することも必要であると考え、有志の会を立ち上げた。
・北川前知事は、同じように注目を集めた長野県の田中知事や石原
東京都知事と違って、どちらかというと素人受けするようなタイプ
や大向こうをうならせる政策を講じるというようなタイプではなく、
玄人受けするタイプであり、究極のシステム論者でもあった。
・誰が知事になっても大きくぶれない県政、「有視界飛行から計器
飛行」型の県政を目指して、政策評価を自治体の経営資源である財
源と組織に連動させる政策推進システムを構築した。
・今の三重県知事の野呂さんも、基本的には北川県政の継承を表明
している。目指すところは県民が主役であり、県民満足度を向上さ
せることである。目標とする頂上は一緒だが、登頂ルートにはいろ
いろあっていいのではないかと思う。
・北川県政の時には、「生活者起点の県政」というキャッチフレー
であったが、野呂知事になって「県民が主役の県政」という表現に
なった。少しニュアンスは違うかもしれないが、意味する本質は一
緒のことである。トップのやり方は変わっても我々職員は実務をし
っかり担っていけばいい。

<発足のきっかけ>
・平成15年1月に四日市で開催された「シンポジウム三重」には、
改革派の6県知事(高知県/橋本知事、宮城県/浅野知事、鳥取県
/片山知事、岩手県/増田知事、和歌山県/木村知事、三重県/北
川知事(当時))が集まり、そこで北川前知事が、選挙を控えてい
た増田知事や片山知事にマニフェストの作成を働きかけて一気にマ
ニフェストが広まった。
・その場で、大島さんに会い、キャリアデザインで有名な神戸大学
の金井壽宏先生の講演に誘われた。経営品質を話し合うプロジェク
トチームの神戸市職員や私のほかに他の自治体職員もいたが、なか
なか普段会えないのでメーリングリスト(ML)でキャリアデザイ
ンなどを議論しようということになり、「神戸キャリアデザイング
ループ」というMLを立ち上げた。
・口コミでメンバーが増え、顔の知らないない人も増えたのでオフ
会を開催しようということになったが、どうせなら自治体のトップ
である首長さんと議論する機会を持ちたいと考えた。
・組織が大きくなるとトップと直接話す機会が少なくなるが、規模
の大小を問わず自治体の経営課題には共通するものがあるはずなの
で、自分の所属する自治体の首長でなくてもいいのではないかと考
え、先進的な経営をされている首長さんと話したいと考えた。
・オフ会を名古屋市で行うことになったので、常設型住民投票条例
や市の業務を委託する株式会社で有名な高浜市の森市長にお願いし
て講演していただき、オフ会がはじまった。このような形のオフ会
を今まで4回開催した。
・新聞等に報道されるのに「神戸キャリアデザイングループ」では
違和感があったので、「自治体職員有志の会」という名称に変えた。
・新聞報道が予想外に大きな扱いだったこともあり私自身も庁内で
「政治家になるのか」とか「北川前知事の個人秘書にでもなるのか」
と言われたことは私の不徳の致すところで、庁内の幹部を回り、会
には「政治性はなく、あくまでも個人の活動である」ということを
説明して回り、保身を図った。
・また、参加する職員がいる自治体として名前が出たところでは、
庁内で「誰が参加しているのか」といういわゆる犯人探しがあった
りしたと聞いて、自治体職員の世界は相変わらず、目立つことを嫌
う狭い世界だと感じた。

<これまでの活動>
・普段、MLでの議論の内容は、職員のキャリアデザイン、成果主
義についてや自治体の改革、経営課題などについてであり、たとえ
ば滝沢村の全職員による課長推薦制とその是非論や長野県や横浜市
の早期退職制度などについてが議題になったりする。
・会のホームページを持っていて、会員以外との情報共有もしてい
る。
・また、自治体首長を招いての講演会を、今まで、高浜市の森市長、
尼崎市の白井市長、臼杵市の後藤市長、志木市の穂坂市長にお願い
して4回行ってきた。オフ会は、メーリングリストでの議論を補う
など、活動の節目として2ヶ月に1回ほど開催している。

<これまでの成果と今後の展開>
・志のある職員が議論し合う場を設けるなど、一定の成果を挙げた
と思うが、単に首長の話を聞くだけでなく今後、会としてシンクタ
ンク機能を発揮し、ボトムアップでどれだけ実現できるかわからな
いが現場を持つ首長に政策提案したり、民間企業の経営者や協働の
パートナーであるNPOの活動家とも議論をしていきたい。また、
会員以外とも情報共有するため書籍の出版もしたいと考えている。
・今年の8月21日には、高浜市で、これまでオフ会で講演してい
ただいた首長さんをパネリストに招いてシンポジウムを開催する。
・会の一番の成果はこういった議論の場を設けたことではないかと
思う。今まで、自治体職員は担当する仕事についての連絡会議的な
ものはあったが、事務担当者会議、ブロック会議程度のものでしか
なかった。
・自治体の改革とか、経営について、自分の仕事の立場を超えて議
論する場がなかったので、そのような場を設けることができたのが
一番の成果ではないかと思っている。
・ただ、この会はフラットな集まりであるので、これまでお話して
きた今後のことはあくまで私の個人的な思いであるので、そのとお
り実現するかどうかはわからない。

<「自治体プロ職員」にかける思いと呼びかけ>
・最後に司会の方が自由に話していいと言っていただいたので
個人の思いをお話したい。
・私自身プロという言葉にこだわりをもっている。自称「自治体プ
ロ職員」で実力はアマチュアだが・・・。プロというと、プロスポ
ーツ選手や芸術家が思い起こされるが、組織に属する職員、社員も
その仕事に関してはプロフェッショナルになるべきである。自分
がやるからにはオンリーワンの仕事、顔の見える仕事をしたい。
誰がやっても同じではやりがいがない。
・私の信念は、『力及ばすして破れることは辞さないが、力尽くさ
ずして挫けることは拒否したい』である。なかなか実行できないが、
考えて正しいと思ったことは勇気をもって発言し、実行したいと思
っている。思うだけでは「NATO」になってしまうので、(NA
TOとは、北大西洋条約機構の略ではなく、「No Action
 Talking Only」の頭文字からとった。)
・私がやっていることは、
 ○個人でメルマガを発行し、首長などに送ったり、あるいは、個
  人でHPを開設している。
 ○マスコミの記事や書籍を読んで共感した意見の首長さん、民間企
  業の経営者に手紙やメールを出したり、直接会っていただいたり
  して、意見交換し、その結果を共有している。
・これまで地方から全国発信するものは補助金を受けた巨大なハコモ
ノ、ハードが多かったが、ニセコ町の自治基本条例や三重県の政策評
価制度など、ソフト面で国をリードするものが増えてきた。
・こういったことを突破口に、ブレークスルー、結合改善し、高位平
準化して、いいものはどんどん広めていき、地域の閉塞感を打ち破っ
て、市民と連携して地域の内発的発展に結びつけていきたいと考えて
いる。そのために有志の会というステージを使っていただきたい。
・公務員をめぐる報道が汚職や懲戒の話ばかりではどうしようもない。
「お役所仕事」という言葉をぜひとも死語にしたいというのが夢である。
・期限、財源は明らかにしていないので、マニフェストの要件は満たし
ていないが、自治体有志の会の活動を通しての私の夢、お約束、仕事宣
言という形でお話をさせていただいた。

 どうもご静聴ありがとうございました。

<質疑応答>
Q(司会者):自治体職員のプロとプロでない人を分ける基準やメル
 クマールみたいなものはあるか。

A エンプロイアビリティやマーケットバリューという言葉でいうと、
 名刺や肩書きがなくても通用するのが理想だが、組織に属している
 と、なかなかそこまでいかない。そこでたとえば三重県庁で何か用
 事があったら、「山路に言えば何とかしてくれるだろう」といった
 その組織で頼りになると認識される存在になる、そんなこともプロ
 に近づくことではないか、と思う。

Q 自治体職員有志の会というと会員は自治体関係者ということにな
 ろうかと思うが、このフォーラムには、自治体職員に限らず、学者
 やNPOの方、シンクタンクの方など、行政の枠以外の視点からの
 協力が得られるものが多いと思うが、自治体職員有志の会が自治体
 職員だけに限られた狭い従来の集団であるとするならば、先程のも
 のと比較すると限界があるのと同時に、同業者のみが集まったメリ
 ットもあるのでは、と考えている。そのメリットについて教えても
 らいたい。

A 有志の会の入会資格は自治体関係者に限定している。自治体の車
 の両輪と言われている地方議会の議員は職員の紹介があれば入会で
 きる。任期付き職員も同様。議員の方にも入っていただきたいが、
 政治性の問題があったりするので慎重にしている。私自身も会のこ
 とが新聞記事になって名前が出たとき、あいつは政治家になるのか
 とか、北川前知事の個人秘書になるのかといろいろ言われたことが
 あったので政治的なことは避けたいと感じ、あくまで個人の活動に
 したいなと思い、議員の方にはそういうことを理解していただいた
 上で入っていただいている。
  ご質問に戻ると、MLでは本当はシンクタンクの方や企業の方に
 も入っていただき、幅広く意見交換したいが、濃密な議論をする中
 で、生臭い議論もしたいのでクローズな運営をしている。その代わ
 りオフ会にはゲストとして地方議会の議員の方や省庁の方とか民間
 の方にも来てもらっている。8月に予定しているシンポジウムにつ
 いては、完全にオープンにして、会の活動を広く紹介するようにし
 たい。ただこれらは私の個人的な思いであり、会のコンセンサスを
 得たものではない。

会場意見)行政経営フォーラムと自治体有志の会の違いを整理したい。
 この会の特徴は、公務員のキャリアデザインがベースになっている
 ことであるが、行政経営フォーラムは官や公のあり方をどう変える
 かということである。この有志の会は、自分がどう変わるかという
 ことを議論する場であって、行政職員がどう変わるかということに
 関しては、あくまでも他人事である。画期的なのは、平均的なこと
 を効率的にやっていれば官僚がプロになろうという、ある意味では
 矛盾したことをやろうとしている、矛盾の中から新しいものが出て
 くるのではないかと思う。
  内発的にどう変わっていけるのかという、これはある意味、行革
 の課題が自分の内面の問題になっているということを表していると
 思う。心意気に感じた方は是非、会に入っていただきたい。
 会のメンバーにはいろいろなタイプの人間がいるので、入っていた
 だけるとおもしろいと思う。

 (以上)


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