『夏との出会い』三交替の主人はその日、午後から夜中までの勤務だった。 私はその日、仕事を退職し、主人の帰りを起きて待っていた。 その日に限り夜中になって、胸騒ぎがした。 野良猫さん達がいる公園へ行かなきゃ。 帰った主人にその事を伝えると、気持ちよく一緒に付き合うよ!と言ってくれた。 「でも何故急に行こうと思ったの?」公園へ向かう車の中で主人が私に聞いた。 確かにずっと行った事のない隣の市の公園に・・・。 何故急に行こうと思ったのか私にも分からない。 でもニャンのご飯を持って公園へ行かないと。 コンビニで急遽キャットフードを買い、主人と公園へ急いだ。 駐車場に車を止め、まわりを見渡す。 公園は夜中だと言うのにスケボーをやる人、散歩の人、 車の中で話しているカップルなど、人の声が響いていた。 駐車場のまわりの植木の中や、階段を上がって一面芝生の場所を見渡した。 人の声に混じってかすかに小さな力のない猫の声が私には聞こえた。 主人には、全くその小さな泣き声は聞こえないらし。 声のする方を目指したが、ご飯を出しても呼んでも、出てくる気配は全くなかった。 空が明るくなる頃まで待ってみたがその小さな泣き声の猫は、私の前に姿を 現さなかった。 もう一度行ってみよう、何かに背中を押されるように 主人と二人また昨日の公園へ向かった。 もう一度、声の聞こえた植え込み周辺を「にゃんにゃ~ん」と呼んでみた。 また聞こえた。昨日の声だ、しかも昨日より近くにいる。 持っていたご飯を手の平にのせて植え込みの周辺に近づいた。 その瞬間、つつじの植え込みがカサカサッと動きいた。 そして私と主人の目の前に、生まれて間もない小さな黒猫の赤ちゃんが現れた。 私達に向かってニャンニャンと何かを訴えている。 随分とお腹を空かしていた様で、缶詰をパクパク一気に平らげた。 やっと空腹が満たせてホッとしたのか、地べたに座り込んだ私の膝の上に自ら乗ってきた。 小さな赤ちゃん猫はゴロゴロと喉を鳴らしながら私に甘えてきた。 赤ちゃんの顔にジーッと目をやると、酷い位に目が目ヤニで覆われて その目はほとんど視界を遮られている状態だった。 早く連れて帰ろう!ほぼ同時に主人と私が言った。 車の中からティッシュを取り、公園の水道で濡らして目ヤニを拭い取ると、 まんまるな大きな瞳で私をじっと見た。 そして安心したのか、助手席に座る私の膝の上で熟睡した。 朝方にになって、赤ちゃん猫の様子がおかしい。 昨日よりも毛並みが悪く、元気がない。 布団の上でうずくまっている。 朝一番に近くの動物病院へ駆け込んだ。 結果、肺炎を起こしかけていた。目ヤニは風邪が原因だったそうだ。 便の様子から、三日位は空腹を満たす為に草を食べていたと先生が言っていた。 推定生後3週間位の赤ちゃん猫は授乳が必要な時期。 故意的に捨てられたか、母猫とはぐれてしまったと思われる。 先生に厳しい一言を言われる。 「薬を飲ませて、ミルクで栄養を。後は、この子の生命力に掛けるしかない。」 1%でも望みがあるならば、この子を生かしてあげたい・・・。 こんな体の状態で、美味しく自らミルクを飲んでくれる訳がない。 子猫を抱き、猫の粉ミルクと薬を混ぜ、人肌に溶かし口に流し込む。 最初はスポイトで流し込んだミルクをペッペと口から出そうとする。 お願い、頑張って飲んで・・・じゃないと死んじゃうよ・・・ 赤ちゃん猫も、自ら必死で生きようと、口に流し込むミルクを少しづつ飲みはじめてくれた。 点眼も点鼻も嫌がらずにちゃんとさせてくれるようになった。 そして2週間後、ミルクも三時間置きにゴクゴクと飲む様になる。 目ヤニもすっかりなくなり、部屋の中をピョンピョンと駆け回る程回復。 主人と二人でこの子の名前を決める。 6月に出会い、女の子だから「夏(なつ)」 夏は私達夫婦の大切な家族の一員となった。 ジャンル別一覧
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