道草みのむし三十路のみしがん―ひとり言編

2004/10/10(日)22:00

限界点/サッカーボールにポットラック、そして八百万の神?!

雑記(71)

*[泣きの涙のアカデミック] 限界点 金曜日の午後は、某ローカルNPOのイベントのためのPRチームのミーティング。提出した企画が全面的に通ってしまい、嬉しいのは嬉しいが、この忙しいのにえらいことになってしまった。もともとイベントまでに絶対的に時間が足りないし、予算もマンパワーも足りないから、どれほどのことができるわけでもないが、(幸い?!)今までまともなPRなんてしたことがないという組織なのでベンチマークがない。行きがかりでかかわることになった即席のPRチームにとっては唯一の好材料(!!)である。 ミッションから戦術まで立案したし、メディア対応の詳細も作った。リリースや小ネタ収集の作戦も書いた。でも、私にはメディア対応に立つこともできないし、プレスリリースの最終原稿を引き受けることもできない。私の英語力ではとても無理だ。広告専攻のアメリカ人学部生Jがチームにいるので、メディア担当を頼む。いい機会なんだから、自分でやってみるべきだ、とメンバーは言ってくれるが、自分が立案した企画だけにうまくいってほしいし、うまくいくにはコミュニケーションの基本のところでわざわざ障壁を作っている場合ではない。 これが現実だよな、とつくづく痛感する。規模が小さくとも、クラスのアクティビティなどではない、アカデミックとも直接関係のない場で企画が通ったのは純粋にうれしかったし、たとえこの程度の企画でも実際にやってみると、大学院で学んだことが過去の経験と結びついてみっちり身についていることも実感できた。でも、その実施になると私の英語力では到底足りない。足りないどころか、無理、というレベル。そんなことはわかってはいたが、直面するとやはりしんどい。 ミーティングは生産的だったし、楽しかったが、家に帰る道々気持ちがヘロヘロになり、部屋に帰り着いて思わず母に電話した。さすが三十数年私とつきあっている人の言うことは的確にして明瞭。出勤前の母を30分も話しに付きあわせて、未だ親離れできない愚娘はやっと落ち着く。情けないことですが。 *[雑記] サッカーボールにポットラック、そして八百万の神?! とりあえず一眠りしてから、深夜〆切のスペイン語の宿題を片付け、それから仕事の準備。今週は生徒と、みんなで一品づつ持ち寄るポットラックランチをする約束をしていたから、ご飯系担当を仰せつかっていた私はラザニアを焼きながら授業の用意をする。 アツアツの大きなラザニア皿やら、フォークやらコップやらクラス分のポットラックの用意を持って通勤バスに乗ることはあきらめクルマで出勤。道々、 NPRのOnTheMedia をじっくり聞けて非常に有意義。 今日のカリキュラムは勝手に“文化の日”と決めていて、黒板を使う授業はなし。生徒たちは一時間目から平面から立体サッカーボールを作るアクティビティに取り組む。これは来週からやる図形の単元への導入のためで、昨年もやったもの。ネタ元はインターネット上で日本の数学教諭の方が公開されていた指導案を参考にさせていただいている。もともとは正二十面体の性質を利用した多面体理解の教材だが、今日の活動の主旨はもっと手前のところで、直線の引き方や角度の取り方、三角形の性質の確認やその応用などを思い出すこと。あわせて応用し自分で考えることが目的。莫大に時間がかかるが楽しい上に多くの発見と応用があるので今年も実施。 意地悪な担任は、大きな画用紙と寸法の入っていない展開図しか渡さない。いきなり助け舟も出さない。試行錯誤もこの活動の大きなポイントだから、ヒントを出しながら考えさせる。生徒に渡してある画用紙は、実は縦横の比率からいくと、展開図の全体を書くには最終的に紙の半分強しか使わないのだが、そこに気づくまでに1時間弱はかかる。ようやっとそれに気づいて生徒たちはブーブーだが、『この画用紙いっぱいに使うなんて誰も言ってないし、書いてもないでしょ。私は学校にあった画用紙をそのまま持ってきたんだもん』とまたまた意地悪に応じる。 まったくの私観だが、小中学生たちが、自分たちに与えられるものは何でも、自分たちが理解しやすいように企画され用意されていると自動的に考えているのはよろしくない、と常々感じる。その配慮されすぎた環境の中で、例えば数学が「できる」「できた」と思っているのも感心できない、とも思う。現実の社会はそんな風にはできてないのだけど、それを彼ら彼女らが実感するできる機会が、これまた少ないのではないかと思う。 そうなるのは無理ないか、と思わなくもない。たとえば今日のこの活動でも、最初から展開図の縮尺にピッタリ合致するよう画用紙を裁断して生徒に渡していれば、おそらく半分の所要時間で活動を終えることができたと思う。貴重な授業時間を3時間も費やすのは、ただでさえ足りない時間数で一年間の数学を教えている中では正直なところ結構な勇気がいる。一方画用紙を裁断して用意するのは5分とかからない。どちらのほうが“効率的”かといえば、画用紙を裁断しておくほうがはるかに時間効率は良い。 また、どこから手をつけて良いかわからなくて試行錯誤する生徒とやりとりするのも、かなりのパワーを要する。じれ過ぎて嫌気がさしてしまっては台無しだから、頃合いを見図る必要もあるし、考えさせるためのヒントを出すのは骨が折れる。長丁場の作業は他愛もないおしゃべりもしながら、励ましたり、ちょっとプレッシャーもかけたり、と変化もいる。答えを教えた方がはるかに簡単だし、実際のところ、こんなやり取りは6人の学級だからできることで、これが20人学級、まして30人学級ならとてもじゃないが、そんなことはできないと思う。私は、自分の学校時代はそういう凄腕教師に運良く何人も出会い、教わってきているが、本当に恵まれていたんだ、と今さら思う。私はベビーブーマーズの子ども達世代で、年齢別人口が最大になった学年だから、中学校などは45人学級、11クラスだった。その中でそういう手間のかかる教育を実践していた先生達はとてつもなくすごい。 じゃぁ、家庭でそれができるか、というとそれもクエスチョン。このサッカーボールを作ってみる、という活動もそうだが、学校環境でしかできないこと、こういう環境でしか取り組ませることのできない面倒なこと、というのもある。私の場合は、家庭で特に教わったという記憶はないが(いや、気づかぬところで母の企みはあったのかもしれないが)、母が職業柄創意工夫の人だし、手芸もすればペーパークラフトにも長けていて、一年中何かを作っているのを横で見ていたから、自ずと何らかの影響は受けているのかもしれない。でもこの私の育った家庭環境というのは、うちのファミリービジネスからくるものであって、一般的とは言えない。学校の役割、家庭の役割とはよく出る終わらない議論だけれど、やはりそれぞれにできることできないことがあるんじゃないかと思う。 3コマ目を過ぎ、4コマ目の最初で、6人全員が切り抜いた展開図を組み立て終わり、六角形と五角形からなる32面体ができあがった。切り抜かれた五角形の間から風船を入れてふくらませると、ボールのできあがり。できあがると誰でも嬉しい。弾ませたり、投げたりして色とりどりの手作りボールが教室を飛び交う。盛大に散らかった教室をみんなで片付けて、少し早いがポットラックランチ。天気が良いので外で食べようと、生徒達。それぞれ作ってきたものを抱えて屋外へ。快晴の今日は暑くなく寒くなく最高の日和。今日のポットラックは家庭科学習がわりだと念をおし、家の人に教えてもらってもいいが“自分で作ること”というのが条件。女の子達はさすがに手馴れたもので、ポテトサラダを添えたミニサンドイッチ、チーズポテト、ティラミスにプリンにカップケーキも2種と素晴らしいラインナップ。男の子は大丈夫かな、と思ったが力作クッキーの出来は上々。これも、この学校だからこそできることだなぁ、としみじみ思う。自分が子育てする時は、どんな環境なのかしら、とよく出来たティラミスを食べながら思ってもみる。 五時間目の国語で、クラス全員が暗記テストをパスした『祇園精舎の~』を暗誦した後、「平家物語の扇の的、那須与一が四十間先の扇にむかって弓をひきしぼり『南無八幡大菩薩、日光の権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、願わくは、あの扇の真ん中射させてたばせたまえ』と念じるシーンの解説と現代語訳を始めたら、いきなり“南無八幡大菩薩”でストップ。そう、みんなまずは仏教と神道の違いを知らなかった! おぉぉぉぉ。慌てて日本の宗教101(基礎のキソ)をやる。レベルは、拍手を打つのはどっち?除夜の鐘を鳴らすのはどっち?お坊さんがいるのは?神社にいてお祓いをしてくださる人の名前は?初詣するのは?お盆にお墓参りするのは?ブッダは仏陀。大きな仏様だから大仏様。法隆寺だから仏教の場所。天満宮は菅原道真を神様として祭っている神社のひとつ。と出来る限り知っていそうなネタを並べて違いを説明する。あぁ、良かったよ、ここで気づいて。よくぞ質問してくれた。 眠気対策、同僚3人に同乗してもらっておしゃべりしながら帰宅。終わったよ、今週も。8時にはベッドにつく。ケーブルでやっていた政治コメディ映画 『Head of State』が単純におもしろかった。アメリカはそんなに簡単な国ではないが、黒人初の大統領候補の主人公が最後にこぎつけた一騎打ち討論会でやったスピーチは、アメリカだからこそのホントもあった気がする。それにしてもケーブルのCINE MAX系列のチャンネルは、今月だけでこの映画を十数回オンエアするつもりのようだが、もしかしてアンチ共和党なのかしら。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る