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もみあげ屋

もみあげ屋

出産の日(2003年11月12日)

(当時の日記より)

前の日に、家をきれいに片付け、ゴミも全部出して、ハムスターの小屋も掃除して、ベッドに入ったのが10時か11時。
緊張してよく寝れないかと思ったけど、それが結構寝れて、朝の5時、目覚まし時計がなった時には、まだぐーぐーだった。
でも、何とか起きて、シャワーを浴び、ジェイミーも起こし、病院に行った。
家を出るときに、「今度この家に帰ってくるときには、赤ちゃんがいるのかぁ。」と思うと、とても不思議な気持ちになった。

着いたらすぐ、私は服は全部脱いで病院のガウンを着、体温や血圧など、いろいろ測り、点滴もさっそく始めた。
ジェイミーも、手術中に着る、宇宙服みたいなガウンを手渡され、顔が見るからにワクワクしているのがわかった。

7時になり、手術室まで点滴を引きずりながら歩いていった。
すぐに、麻酔の係りの先生に麻酔の説明をされ、背中の脊髄のところに麻酔を打った。この麻酔は下半身のみにかかり、特におなかの辺りは触られてるのはわかっても、痛みは一切感じない、というもの。上半身は普通に動き、意識もはっきり残る。
10分くらい待って、プラスチックの針のような物で、脇の下から順番に下に向かってチクチク刺していき、「痛くなくなったら言ってくださいねー。」と言われて、その通りにした。その結果、どうやら、体の右半分はちゃんと麻酔がかかってるのに、左半分は全くと言っていいほどかかって無いのがわかった。その後、1分ごとぐらいにそうやって試されたんだけど、いつまで経っても体の左側は感覚が残っていて、ついに麻酔の先生がペンチのようなもので私の左腹をぎゅっとつねり、「痛っ!!」と私が叫んだので、「こりゃ、ダメだ。」と言われ、また麻酔を追加することになった。
2本目の麻酔を入れ、またしばらく待ち、同じように針で感覚を調べてみたところ、さっきよりも麻酔が効いてきた。でも、本来なら肋骨の下あたりからしっかり痛みがなくなってないといけないのに、右半分はそうなっていたけど、左半分は腰骨と肋骨のちょうど真ん中辺りを境に、その下は何とか、その上はまだまだ、という感じだった。
それで、私が「まだまだ、感覚があるみたいなんですけど。」と言ったにもかかわらず、何と、先生は手術を始めてしまった!!
「え?!もしかして、今、腹切った?!」と思っていたのも束の間、体の左側だけ、すっごい異様な痛みが走る。
「痛いー!!痛いー!!」とジェイミーにすがってみたものの、ジェイミー自身ももう手術は始まっているので、止めることは出来ないのはわかってるから、「大丈夫。大丈夫だよ。頑張って。」と私の手を握り、一生懸命励ましてくれた。

手術が進むにつれて、おなかの痛みはどんどん増し、私は「痛いぃー、痛いぃぃー」と泣き叫び、嗚咽まで出てきて、めがねは涙で顔から落ちていった。ジェイミーが私に何か言っていたけど、多分励ましてくれていたんだろうけど、もう何を言ってくれているのか、よくわからなかった。
下腹部の切ったところから、そのずっと上の肋骨の辺りまで、内臓が動かされてるのがわかり、その痛みと言ったら、今までに経験したことのない、本当に異様な痛みだった。
赤ちゃんが出たら、別の麻酔をまた追加して、痛みを無くしてあげるから、と、麻酔の先生が優しく頭をなでてくれた。

もっと長く感じたけど、たぶん手術を始めてから20分くらいなんだと思う。胸の辺りにひかれたカーテンの向こうで、先生や看護婦さんたちの声が少し色めき立った。そして、ジェイミーが立ち上がり、“Oh, my god!”と言った途端、いなくなった。(実はこのとき、ジェイミーは失神しそうになったので、自分で部屋から出て行ったのです。)
「何、何、生まれたの?」と思っていたところへ、元気な、本当に元気な「オギャー!!」という赤ちゃんの産声が聞こえてきた。「生まれた、私の赤ちゃん!!元気に生まれた!!」という気持ちが胸いっぱいに広がり、おなかの痛みなんてもうどうでもいいから、早く見せてー、早くちょうだいー、という願望でいっぱいになった。遠くで、看護婦さんの背中越しに時々手足が見え、自分の体が動かないのが、本当にもどかしかった。
その頃、ジェイミーが戻ってきて、私そっちのけで赤ちゃんを見に行った。そしてみんなに、「おめでとう!!」「かわいい赤ちゃんね!!」と温かい言葉をかけてもらっていて、私は「ジェイミー、私も赤ちゃん、みーたーいー。」と、手術台の上で、か細い声で必死に言っていた。(麻酔のせいで、大きい声が出なかった。)
その後、きれいに拭かれて布に巻かれた赤ちゃんをジェイミーが抱いてつれて来てくれた。ほっぺたはぷくぷくで、思っていたよりも、とっても大きく、人間っぽいかわいい赤ちゃんだった。小さい手も、ふにゃふにゃしているのに、ちゃんと骨も入っていて、しっかり動くのが不思議だった。
その後、ジェイミーと赤ちゃんは別室に連れて行かれ、私は手術の残りを済ませた後、リカバリー室という小さい部屋で看護婦さんと一緒に、術後の回復のため30分ほど過ごした。

その後やっと自分の部屋に戻り、ジェイミーと赤ちゃん“健太郎”に再開。健太郎はもうしっかり目を開けていてキョロキョロしており、新しい世界にまだなじめていないようだった。
看護婦さんに、「どうする、もうすぐにおっぱいをあげたい?このまま寝かせたい?」と聞かれ、母乳で育てたかった私は、「今すぐ、おっぱいあげたい!!」と言って、赤ちゃんを裸にしてもらい、私も上半身だけ裸になって、肌と肌の接触を作り、すぐに母乳をあげた。
と言っても、お乳はすぐには出るものではなくて、始めはコラストロームという、透明な免疫などの入っている液体がちょこっと出るだけ。でも、これが赤ちゃんの体にはとっても重要な物質で、それを吸わせ、胸の上で抱いていたら、さっきまであんなに目がパッチリになって起きていた健太郎が、私の胸の上ですうすう眠った。ああ、かわいい。わかるのかなぁ、母親が。

外を見たら、雪が降っていた。寒くなるなんて聞いてなかったのに、でも私の希望通り、健太郎の生まれた日に雪が降った。
その雪は、お昼になる前には、もうやんでしまったけど、今までに見た事もないほど、きれいな雪に見えた。

初めての家族写真


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