第12話

 『第12話』 作:燐歌さん



「お久しぶりです。」

その声に反応し、振り返った俺の目の前にいたのは、いかにも高レベルとわかる防具と
成長武器「バゥル」の完全体をもったバルキリーだった。

そのバルキリーを見ながら、誰だったかと、必死に思い出そうとしていた。

――――聞き覚えのある声なんだが、誰だったか…

俺が必死に思い出そうとしていると、バルキリーは口を開いた。
「覚えてくれてないんですかぁ?心外だなぁ~、もー!椿ですよ、つ・ば・き!」
その名前を聞いたとき、頭の中を古い記憶が駆け巡った。

それは俺がまだ冒険者として旅を始めて少しばかりしたときのころ…――――

ケータス神殿の中でスケルトンたちに囲まれて、命を落としそうになったとき、助けてくれた少女だった。
自分より、幾分か若いはずなのに、その当時彼女はすでに75レベルを超えていたのである。
その後、少しの間、俺が成長するのを間近でみていてくれた、一人であった。

「あの時助けてくれた椿か!」
「そうですよー♪やっと思い出してくれたんですね♪」
椿はうれしそうに笑った。

「ところで、リザードさんは何してるんですか?」
俺は土竜のほうをみた。
「実は僕の手伝いをしてもらってるんです。僕の手伝いをしてもらう代わりに、ぼくもお手伝いするという条件で」
「ふむふむ。ここで会ったのも何かの縁だろうし、私も手伝うよ♪」
「いいのか?椿」
「ん?何が?」
「狩りとかしなくていいのかってことだよ」
「あぁ、そういうことね♪ここのところ、普通に狩しているのも飽きちゃって。
どうせ、しばらく遊んでいたって、周りは私よりレベル低いから、まっておく必要あるしね♪それまでの息抜きってことで♪」
「なら、いいんだが…」
「で、穴を掘ればいいのね?」
「そうです」
「って、オイ!」
椿は万太郎の最後の言葉を無視し、土竜にどうすればいいのかきいていた。
「どうしました?リザードさん?」
天然なのか否か、この少女は万太郎が怒った理由を理解していないようだった。
「いや、いい…」
「変なのー。どうせだから、クラッシングフォールで砂吹き飛ばしちゃいますか♪」
椿は嬉しそうにそういうと、飛び上がった。
「オイ!椿、それはまずいだろ?」
椿は不発のまま着地した。
「えー、どうしてですか?」
「自分の持ってる威力考えてみろ!下手すると、死体も吹き飛ぶぞ」
「なるほど♪地道に掘りましょうかぁー」
この少女の頭の中には加減というものがないと思った瞬間だった。



3人で掘り続けて、数時間が経とうとしたとき、何やら、砂の中から、人の手の骨らしきものが見えてきた。

~続く~


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