ガードマンのつづる日常

[徳川義親（よしちか）] カテゴリの記事

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• バスクの正体

  【小満・卯月二十八日・der erste Juni/Sonntag】　バスクは何処の系統の民族か、分からない・というのが公式見解だが、田中清玄はモロキアン（蒙古人）とはっきりと言う。【p266・L7】現地のバスク人から聞いた。　これだとイエズス会が東洋を目指し、日本を拠点に大陸へ進出しようとした意図が明白になる。　【検索】はヤフーより Google が良いというので、Google で調べるとれんだいこさんのがあった。　警官への殺傷事件を起こしているわけだから、本人が死刑を覚悟しているわけである。24ー35歳までの11年間を監獄で暮らした。そこで禅の教えにふれて、新しい革命のためのポジションを模索した。

  2008.06.01

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• 民族の敵・野坂参三

  【小満・卯月二十一日・der funfundzwanaigte Mai/Sonntag】　野坂参三は共産党から除名されている。かつての同志・山本懸蔵をスターリンに売った。しかし、この山本の名誉回復を共産党はしていない。　この野坂は中国で通州事件の手引きをして日本人の虐殺に手を貸した。民族の敵である。（金沢に居た頃、引揚者のパン屋のオヤジから聞いたことがある。週刊新潮でも戦後40周年だかの特集で取り上げられていた。こういう人物を「総括」出来ないでいるうちは日本共産党は国民政党にはなれない）　日本共産党が中国共産党から信用されていないのは、こういう野坂が幹部に居るからだと、田中清玄は言う。　この野坂をモスクワに送り込んだのが田中清玄で悔やんでいる。

  2008.05.25

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• 年寄りの自慢話

  【小満・卯月二十日・der vierundzwanzigte Mai/Samstag】　『田中清玄自伝』を読み終えた。後から読んだ。　田中清玄がテレビでインタヴューを受けていた番組を見た記憶がある。40年から50年前のことで日時をはっきりと覚えていない。大阪にいた時だ。名前も覚えていなかったが顔ははっきりと覚えている。「自分の原点は会津武士だ」と何度も言っていた。　それ以降、田中清玄に関心も興味も抱かなかった。楽天のブログをはじめてから、よく話題になる人だった。　自伝の話題でも、「年寄りの自慢話」だろうとそれほど関心を引かなかった。共産党で牢獄生活をした人は掃いて捨てるほど居るから、「だから、何で？」　タイやアラブの要人やオットー大公とも親交があり、トウ小平とも信頼関係がある、となると「何だろう？」という関心を持った。　自伝ではその経緯が語られている。「なるほど！」と納得する部分と「ほんまかいな？」という部分と、多分、記憶違いだろうと推察される部分もある。　この「戦後生まれのお坊ちゃま君」と言っても日露戦争の戦後なのだが、地主で財産持ちの「お坊ちゃま君」が高校時代、軍事教練のための軍人教官配置に対する反対運動から捕まれば無期か死刑という共産主義運動に入り込んだ。　そこから不思議な人脈、人間模様が展開していく。先ずは自伝に沿って、その人脈を検証してみよう。

  2008.05.24

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• 田中清玄への視点

  【立夏・卯月十三日・der siebzehnte Mai/Samstag】　田中清玄について、くれどさんはフィクサー・政財界裏人脈から検証している。鳩山一郎とのかかわりについての指摘があった。 それに関連して、シュルドネ。さんの解説もある。　私のあくまでも【推論・推理】なのだが、田中清玄が硬派であることにウソはないと思う。すると、この出来事は「ロシア・くノ一」の後始末ではないか？　スターリンが死んで、ソ連内のゴタゴタ、アメリカの思惑など、その辺の綱引きの現象の一つだと思う。　田中清玄の周辺人脈に作家・文学者が居る。石上玄一郎、藤澤桓夫、今日出海など。私はその作家人脈から田中清玄がどういう位置に居るのか？　という視点で検証しようと思っている。　たまたま、今東光の本が手に入ったので、今東光からと思っているのだが、今東光・谷崎潤一郎とくると、どうしても志賀直哉まで抑える必要がある。　で、今はその志賀直哉の祖父・直道に来ている。

  2008.05.17

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• 相馬藩のこと

  【立夏・卯月十一日・der funfzehnte Mai/Donnerstag】　志賀直哉の祖父・直道が家令をしていた旧藩主・相馬家は千葉氏の流れをくむ旧家である。福島県なのでてっきり会津の支藩かと思っていたのだが、無知をさらけ出してしまった。　島津並に鎌倉時時代から同じ地域を支配しているという。現在の当主も麻生次期総裁候補の妹を妻にしている。　６万石ながら、中身は充実した藩だという。その家老格が志賀直哉の祖父だったのである。　この相馬から荒正人・埴谷（般若）雄高・島尾敏雄など「近代文学」の錚々たる人達が出ている。

  2008.05.15

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• 金持ちのボンとしての田中清玄

  【立夏・卯月四日・der achte Mai/Donnerstag】　安岡章太郎の『志賀直哉私論』を読んでいる。今東光から谷崎の情報を得ているわけだが、どうしてもその極に位置する「志賀直哉」を知っておく必要がある。　それは、天才と狂人は紙一重というが、今や谷崎、それに繋がる東郷青児など、皆、紙一重の人達で、本で読むには面白いのだが、しかし、歴史理解という普遍性を追求すると？がつく。　そこで凡人中の凡人たる安岡章太郎の「志賀直哉論」は、話を現実に戻すには最適に人物である。　30年程前、この安岡章太郎をよく読んでいた。ただ、読んだというだけで、中身はさっぱり憶えていない。　この安岡効果で気が付いたことは「田中清玄は金持ちのボン」だということである。

  2008.05.08

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• 明治80年

  【穀雨・弥生28・der dritte Mai/Samstag】　明治元年は1868年で1967年頃から「明治百年」と一騒ぎがあった。終戦の1945年は明治78年で、明治維新の新政権は敗戦と共に約80年の生命だったといえる。　明治30年生まれの東郷青児、31年生まれの和尚、それぞれ、戦後、頭角を現す。◆他にどういう出来事があり、どういう人が生まれているのだろうか？【出来事】3月 - 貨幣法公布（金本位制の確立）。 6月18日 - 京都帝国大学（現：京都大学）創立。 12月21日 - 第11議会召集。 【生まれた人】1月15日 - 桜井鐐三、日本国帝國陸軍少将（+ 不明） 1月20日 - 有賀喜左衛門、社会学者（+ 1979年） 1月23日 - スバス・チャンドラ・ボース、インド独立運動の指導者（+ 1945年） 2月4日 - ルートヴィヒ・エアハルト、元ドイツ首相（+ 1977年） 2月6日 - 向坂逸郎、経済学者、元社会主義協会代表（+ 1985年） 3月2日 - 加藤シヅエ、婦人運動家・政治家（+ 2001年） ＊NHKラジオ深夜便（10年前）でインタヴューに来た黒柳徹子に「あんたなんか私の年になるのに40年もあるわ」3月5日 - 宋美齢、蒋介石夫人（+ 2003年） 3月13日 - 佐藤千夜子、歌手（+ 1968年） 3月20日 - 荒木俊馬、天文学者（+ 1978年） 3月28日 - 萩原雄祐、天文学者（+ 1979年） 4月1日 - 我妻栄、法学者（+ 1973年） ＊この人の本で法律、勉強しました。4月17日 - 飯田蝶子、俳優（+ 1972年） ＊若い頃の海水浴映像を見たことがあります。4月28日 - 東郷青児、画家（+ 1978年） 4月28日 - 葉剣英、中華人民共和国の政治家（+ 1986年） 5月4日 - 芹沢光治良、小説家（+ 1993年） 5月6日 - 木々高太郎、小説家（+ 1969年） 5月12日 - 相田二郎、歴史学者（+ 1945年） 5月29日 - エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト、作曲家（+ 1957年） 6月12日 - アンソニー・イーデン、元イギリス首相（+ 1977年) 6月7日 - ジョージ・セル、指揮者（+ 1970年） 6月13日 - パーヴォ・ヌルミ、中距離走者（+ 1973年） 7月24日 - アメリア・イアハート、飛行士（+ 1937年） 7月25日 - ヘルマン・アンブロジウス、作曲家（+ 1983年） 7月26日 - ポール・ギャリコ、小説家（+ 1976年） 8月21日 - 有賀幸作、日本国帝國海軍中将（+ 1945年） 9月10日 - ジョルジュ・バタイユ、思想家・作家（+ 1962年） 9月12日 - イレーヌ・ジョリオ＝キュリー、物理学者（+ 1956年） 10月3日 - ルイ・アラゴン、小説家・詩人・評論家（+ 1982年） 10月9日 - 大佛次郎、小説家（+ 1973年）＊鞍馬天狗もそうだったのか。 10月29日 - ヨーゼフ・ゲッベルス、ナチス・ドイツ宣伝相（+ 1945年） 11月11日 - ラッキー・ルチアーノ、マフィア幹部（+ 1962年） 11月17日 - 坂口謹一郎、応用微生物学者・東大農学部部長（+1994年） 11月18日 - 中川善之助、法学者（+ 1975年） 12月26日 - 海野十三、SF作家（+ 1949年） 12月20日 - 呉茂一、西洋古典学者（+ 1977年） 【死んだ人】2月18日 - ウィリアム・ウォレス、思想家（* 1843年） 2月19日 - カール・ワイエルシュトラス、数学者（* 1815年） 4月3日 - ヨハネス・ブラームス、作曲家（* 1833年） 8月4日 - 後藤象二郎、政治家（* 1838年） 8月8日 - ヤコブ・ブルクハルト、歴史家（* 1818年） 8月24日 - 陸奥宗光、外交官・政治家（* 1844年） 9月15日 - 町田久成、東京国立博物館初代館長（* 1838年） 9月30日 - リジューのテレーズ、カルメル会修道女（* 1873年） 【"http://ja.wikipedia.org/wiki/1897%E5%B9%B4"】

  2008.05.03

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• 自由が丘と東郷青児

  【der siebenundzwanzigst April・穀雨・弥生22・Sonntag】　モンブランというケーキがある。その発祥の洋菓子店が自由が丘にある。その包装紙の絵柄は東郷青児の作品だという。【東急沿線スタイルマガジン（SALUS）泉麻人のレポート】　『東光金蘭帖』（中央公論・昭和34年11月10日）に東郷青児のことが書かれている。東郷は音楽家を目指していたが、山田耕筰から画家に向いていると言われて方向を変えた。　和尚と出会った頃は画家として名を成していた。東郷がテナーで和尚がバリトン、２人で二部合唱をしたという。宇野千代が本郷の燕楽軒で女給をしていた頃、和尚との間を取り持ったのが東郷青児だった。　その何十年か後、フランス帰りの東郷と宇野は同棲をする。この間に、宇野が後に「スタイル」という雑誌経営に乗り出すのだが、そのファッション・センスを引き出したのが青児だろうというのが和尚の分析である。　青児はフランスに渡って、ラファイエルの模写からはじめたという。帰国してから心中未遂事件を起こした。これは宇野千代『色ざんげ』に詳しいという。　当時、和尚は仏門に在って、過っての親友を傍観するだけだった。しかし、青児の何たるかを知っているのは俺だという自負はある。やはり昔画家を志した和尚だから。　モンブランは好きなケーキだが、これから食べる時には、和尚と青児の二部合唱が聞こえてきそうだ。

  2008.04.27

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• 検証・田中清玄自伝（II）司馬遼太郎と・・・

  【der sechsundzwanzigst April・穀雨・弥生21・Samstag】　1970年代初め、ロンドンで司馬遼太郎と田中清玄は会っている。仲介したのは文芸春秋の池島信平。その時の会話：司馬「田中さん、私はあなたの先祖の田中土佐よりも、田中清玄その人に興味を持っています」田中「あんたも人が悪いな。俺は自分に対してなんか、もう絶望しているよ」と、取材拒否をしている。　田中の認識では司馬は薩長の代表、特に長州にのめり込んでいる。先祖の敵の太鼓持ちと話す気にはならない。当時、司馬さんは『世に住む日々』で吉田松陰を書いたばかりの頃だった。　この文芸春秋の池島信平、社長である。菊池寛の作った文芸春秋は潰れた。その後、文芸春秋新社でスタートした。和尚にインタヴューした『毒舌・日本史』というのがある。　文芸春秋の巻頭言を司馬に依頼する時に、編集者がこの池島の写真を持っていって頼み込んだという。それが『この国のかたち』になっている。　田中清玄にとって、自分のポジションは滅びた会津であって、日本ではない。薩長に取られた天皇を取り戻したということなのだろう。　ただ、時代が変わっていれば取材に応じたのかもしれない。

  2008.04.26

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• 和尚賛歌！（III）津軽・ご典医・伊東家

  【der vierundzwanzigst April・穀雨・弥生19・Donnerstag】　『街道をゆく』41・北のまほろばp105-111に和尚のお母さんの実家、津軽・弘前、ご典医・伊東家の話が出ている。　司馬さんが訪ねたのは1994年、今から14年前。その家に吉田松陰が訪ねている。嘉永5年（1852）松陰22歳。梅軒伊東広之進という憂国家がいた。松陰一泊二日している。　この屋敷を伊東重（じゅう）が買った。この人が和尚のお母さんの兄、和尚から見ると伯父さんである。司馬さんの話では顔が和尚にそっくりだという。　養生主義という健康法を唱え、養生幼稚園を創った。　司馬さんが和尚の担当編集者になったのは昭和29年、昭和31年和尚は直木賞をとり流行作家となった。

  2008.04.24

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• 田中清玄の欧州人脈

  【der zweiundzwanzigst April・穀雨・弥生17・Dienstag】　田中清玄の欧州人脈は奥州人脈（会津＋津軽）から来ていると推測しています。明治維新によって、会津の上層部は津軽に流されました。　その（会津＋津軽）人脈はどのようにして、欧州人脈となったのか？　今東光和尚の証言の中から検証してみようと思っています。

  2008.04.22

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• 和尚賛歌！（II）郡虎彦

  【der einsundzwanzigst April・穀雨・弥生16・Montag】　郡虎彦（こおり・とらひこ）という劇作家がいた。明治23年生まれ、和尚より８つ年上。この人物が早熟な和尚の文学精神に火をつけた。　和尚は関西学院中学部入学したばかり、夏だった。白上布の絣に絽の袴をはき白足袋・貴公子である。そのいでたちで郡は今家の夕食に現われた。そこでシューベルトの歌を独逸語で歌った。　父親（養父）が日本郵船の最古参の船長で、和尚の父親と同僚だった。　21歳の時に「太陽」という雑誌に懸賞・応募・入選した。ペンネームは萱野二十一（かやの・はたかず）。萱野は実家の名前。萱野家は会津藩の家老、藩が降伏した時に切腹した。郡家も名門でそれゆえに養子縁組だった。　養家では外交官を願ったが、郡は文学を目指し、話の合う和尚の両親と親しんだ。郡は中学生の和尚にも文学の話を吹き込んだ。　トルストイ、ドストイェフスキ、バルザック、スタンダール、シェクスピイア、ゲーテ、モリエールなど。「白樺」の志賀、武者小路、里見とは同人で、泉鏡花・永井荷風・谷崎潤一郎など生活と人間を和尚に語った。　この郡、山田耕筰の音楽会である夫人と恋に落ちた。２人連れで今家を訪れ、彼女がピアノを弾き、彼がシューベルトやモーツアルトを歌った。　道ならぬ恋の結末は彼の渡英となった。

  2008.04.21

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• 和尚の鼻息

  【der zwanzigst April・穀雨・弥生満月・Sonntag】　今年はシュタイナーの魂の暦を日曜日毎に書き込もうと思っていたのだが、昨日、読んだ和尚の『十二階崩壊』の迫力で、書く意欲を喪失。　和尚の鼻息でシュタイナーも吹き飛ばされたようだ。

  2008.04.20

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• 今東光『十二階崩壊』中央公論社・1978・1・30

  【der neunzehn April・清明・弥生14・Sonnabent】　この原稿の初掲載は『海』昭和50年新年号から昭和52年７月号まで22回の連載。　和尚は画家志望でもあった。文学の師として谷崎潤一郎を尊敬していた。そして、押しかけ秘書をやっていた。中途半端な時代である。　模索中の和尚に『新思潮』同人という文士としての道が開かれた。その経緯、人生の原点・カオス事情が描かれている。　何度、読んでも面白い、その都度、違う風景が見える。　帝大という必要条件が無い、諦めていた同人参加だったが、川端達の推薦で仲間と認められた。自分は江戸期戯作者の継承者として参加するという決意自己確認だった。　浅草十二階・凌雲閣、その崩壊、江戸期からの東京文化の崩壊と解釈したのだが違うかも知れない。　和尚の本、読み進むうちに、その真意が見えてくるかもしれない。

  2008.04.19

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• 和尚賛歌！（I）

  【der neunzehnt April・清明・弥生14・Samstag】　今東光和尚は明治31年、1898年生まれである。両親は青森の人。お父さんは外国航路の船長で、神智学のロッジだった。お母さんは当時としては珍しい女学校を出たインテリだった。知り合いに内村鑑三が居て、中学時代、不良だった和尚へ「お説教」を頼んでいる。　この不良の弟が、後の文化庁の長官になる。この長官の高校時代の同級生が田中清玄である。　この不良に親友・川端康成がいた。この親友の推薦で菊池寛は渋々、同人である事を認めた。　和尚25歳の時に関東大震災がおこった。東京の印刷所は壊滅した。文芸春秋を大阪で印刷することになった。この時、船で大阪までリュックに原稿を詰め込んで菊池寛の番頭が運んだ。この船のチケットを確保したのが今東光でお父さんのコネだった。　当時、文芸春秋は3000部を目標にしていたが、1000部売るのがやっとだった。この震災の後、１万部売れた。和尚の鼻息は荒い。　和尚のお父さんも変わった人だったようだ。中学時代、和尚は父親の葉巻をくすねて便所で吸っていた。ある時、自分の机の上に新しい葉巻の箱が３つ置いてあった。和尚が怪訝に思っていると、父親が部屋に入ってきて「便所で吸っていたら、不味かろう。吸いたければオレ（親）の前で堂々と吸え」　ある時、和尚が人妻と駆け落ちをした。その夫は和尚の家に乗り込んできた。対応したのはお父さんである。　「確かに人の奥さんを奪ったウチの息子は悪い。しかし、大切な奥さんを奪われる夫たる・あなた・はもっと悪い」とお説教をして追い返したという。　我々から見ると今東光和尚というと怪人なのだが、その和尚から見ての父や母は、もっと怪人なのである。明治という怪人時代の産物が和尚であると言える。　和尚の本、沢山、やって来たので「和尚賛歌！」を連載することにする。司馬遼太郎は産経時代、この和尚の担当編集者だった。賞を貰った「梟の城」は和尚が社長だった中外日報に原稿料なしで書いた小説で縁は深い。

  2008.04.19

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• 【検証】田中清玄・小宮山ひで・夫妻（I）

  【der siebzehnt April・清明・弥生12・Donnerstag】　田中清玄の自伝を読み始めた。先ずはインタヴュアーの大須賀瑞夫氏に感謝しよう。明治39年（1906）生まれ、そして、インタヴューに応じたのが1991年３月から1993年１月まで。　その生涯はロシア革命前夜に始まり、ソ連邦崩壊を見届けた。　語り始めたことと、ソ連崩壊とは関連が有ると思う。もし、ソ連邦が健在ならば墓場まで持って行った情報も多かったと思う。　それくらい日露・日ソ・日ロ関係に係った人である。　タイトルにひで夫人の名前を加えたのは扉裏の写真を見たからである。夫唱婦随が顔に表れている。

  2008.04.17

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• ここにも徳川義親

  　私は田沼意次に好感を持っている。　高校の時の日本史の先生の話。1965年頃のこと。「ﾜｲﾛ政治家と言われているけれども、政策は評価できる。ﾏﾆｭﾌｧｸﾁｬｰ段階としてはｲｷﾞﾘｽと同程度だった」　後藤一朗氏の本を読んで『田沼意次・・・ゆがめられた経世の政治家・・・』清水書院・1971年9月発行　この本の序文が大石慎三郎氏だった。以来、大石先生の本は読んでいる。　『田沼意次の時代』岩波書店・1991年12月　最近、また、読み直して気が付いたのだが、大石先生、徳川林政史研究所所長もしている。この研究所、徳川義親がつくっている。 　織田信長の情報を集めている。織田信長がついている本は直ぐに買ってしまう。　藤本正行『信長の戦争』講談社学術文庫　蓬左文庫所蔵という資料の引用が多数。この文庫、殿様の文庫である。 　◆靖国に代わる国立の機関という提言があるが、国立＝いかがわしい役人　　これは殿様の言葉。確かに、国立＝役人・・・信用できない　　だから　民間にもう　既に　殿様は昭和の始めから実行に移している。 連呼しよう！　国立＝いかがわしい役人・・・信用できない  

  2006.08.20

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• ２０年かかった財産処理

  　徳川黎明会という財団法人がある。徳川義親が作ったもので、東京：蓬左（ほうさ）文庫、徳川生物学研究所、徳川林政史研究所、名古屋：徳川美術館などが入っている。　殿様が尾張徳川家を継いだ頃、財政は収支トントンだった。家の顧問は加藤高明伯爵。「華族は金儲けを考えてはいけません。質素倹約を守るべきです」と言う。　殿様はこの加藤伯の言いつけをまもった。数年して、収入は支出の3倍になった。金余り、殿様の新たな悩みとなった。　で、大正のはじめ頃から、この財産をどうするか、考えはじめ、財団法人を作り、それに財産を移管する。その作業が完了したのが昭和6年。実に20年の歳月を費やしている。それだけ財産が沢山あったということだろう。　他に、市に寄贈したものがある。小牧市：小牧山の古戦場。名古屋市：本邸・徳川園。　その後に起こった戦争、敗戦、経済的激動。尾張徳川家の大名道具という財産は何一つ損することなく、徳川美術館で見ることが出来る。　財産を手放した殿様、次に取り組んだのが、クーデタ計画だった。 

  2006.08.11

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• 国宝『源氏物語絵巻』を切る

  　徳川義親が言う「ぼくの家に『源氏物語絵巻』が三巻あった」　昭和3年頃、文部省はしきりに国宝の指定を求めてきたそうだが、殿様は頑としてはねつけた。理由は世界的遺産であるこの『絵巻』を文部省の役人どもに勝手にされたらかなわない　ということであった。　国家管理とは無責任・無能な官僚の手にゆだねること　との認識が殿様にあったということだ。昨今の高松塚の失態をみれば、殿様の見識はたいしたものだと思う。　この絵巻、殿様の推測だと、大阪夏の陣の戦利品らしい。縦七寸三分（約22cm）幅八寸（約24cm）ほどの料紙をつなぎ合わせて、一つの画面が幅一尺六寸前後（約48cm）これが一段で一巻には八段あった。　徳島の蜂須賀家にも一巻あって、これは明治になって7円で売られ、今は五島美術館に保存されていて、数億円の値がついている。　巻物だから見るといたみがつく。そこで殿様が提案した。　切断して平らにして保存する。しかし、この提案、誰も賛成しない。　模写を頼んだ絵師に切断を依頼すると、猛反対。　そこで殿様「ボクが切ります。この絵巻、ボクのものだから、ボクが切るのに文句は無い」　で、その絵師さん、殿様の剣幕に負けて切ることになった。で、無名物語の絵巻で実験して本体にかかった。　絵巻→切断→台紙に貼る→装釘→桐の箱　この切断された源氏物語絵巻、名古屋の徳川美術館にある。 

  2006.08.09

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• ｶﾃｺﾞﾘ･徳川義親（よしちか）

  　この殿様との出会いは運命的のものを感じる。3年前にｺﾝｻｲｽﾞの人名辞典を買った。徳川さんに興味があったので、調べると40人載っている。その中の一人が徳川義親だった。　シュウマイの食べ歩きをしようと思ったが、ﾀﾞｲｴｯﾄ中、仕事帰りによく行っていた白楽の商店街で、ちょっとした中華屋さんがあって、その隣に古本屋があった。　ちょっと迷って、古本屋に入ったところ、『最後の殿様』徳川義親の自伝があった。　実に楽しい人物である。 

  2006.08.09

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• 上流階層について

  　一億総中流から上流・下流階層社会に移行中とか。ﾄﾞｲﾂ映画「点子ちゃんとｱﾝﾄﾝ」を見ると、ドイツでも同じ状況なのか！　と思ってしまったが、原作はｹｽﾄﾅｰ、1931年の作品とか、監督･脚本のｶﾛﾘｰﾈ・ﾘﾝｸが現代社会風にｱﾚﾝｼﾞしている。　日本の場合、この上流社会階層が大正時代から破綻している。徳川義親が証言している。当時の貴族院議員たちの腐敗、業界の利益代表になっている。そのための改革案を義親は出している。　徳川義親は松平春嶽の息子。福井から名古屋に養子に入った。兄弟が宮内庁の大臣をしていた。最近、昭和天皇の発言に出ていた松平はその一族。　特権階級の腐敗・堕落→利権争い→戦争→敗戦。　世間様は天皇一人の戦争責任を追及する脳タリンばかりで、本当の悪い奴等は、この皇室の藩屏というやから。それを内部告発したのがこの徳川義親である。　義親の改革案、ちょっと、世間離れしていて、原敬に阻止されてしまった。その後、義親は軍部と組んで改革に乗り出す。戦後、直ぐに社会党を結成。ｽﾎﾟﾝｻｰになった。　今一度、徳川義親の意見を検証しなおしてもいい時期だと思う。 

  2006.08.03

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• 終戦の日、目白（徳川義親）に集った人々

  　徳川義親の邸宅は目白３丁目にあった。空襲で大型焼夷弾が落ちてきたが不発だった。焼け野原にポツリと殿様の邸宅が残った。そこに終戦の日、藤田勇、吉田一、鈴木茂三郎、所三男がいた。殿様は「革命のチャンス」と彼等をけしかけたようだが、「何もこんな時に」と意気消沈していたという。　藤田勇とは、陸軍からソ連へ和平の工作を依頼されていた人物である。藤田には実績があった。大正12年（1923）ソ連外務人民委員のヨッフェを日本に連れて、日ソ国交回復の基礎を作り、その功績がソ連政府に記録されている。　戦争を終わらせる仲介をソ連に依頼する公式ルートとして近衛秀麿が選ばれた。7/15外務省がソ連に申し込んだ。7/18にソ連が拒否。　次の手として陸軍が秘密計略として選んだのが藤田勇だった。藤田は軍に和平の条件を出した。「満州から全軍撤退し、満州の権益いっさいを満州に譲る」これでソ連が応じない時は「満州を譲るうえに、朝鮮もソ連に譲る」この条件には軍部で異論がでて結論がでたのが８月になってからだった。　殿様は外務大臣の東郷とは親しかった。当時、外務省は軍の監視下で自由に動けなかった。殿様が秘密に鈴木総理の手紙をモスクワに届けようという手はずだった。　しかし、広島の原爆、２日後にソ満国境をソ連軍が越えてきた。歴史に「もしも」はありえないのだが、この藤田案で和平が実現していたら、満州からの悲劇の引き上げもなかったし、朝鮮戦争も無かった。　吉田一とはクロポトキン派のアナーキストで過激派である。大正11年（1922）モスクワで極東民族大会が開かれた。日本から吉田一、高尾平兵衛、鈴木茂三郎、徳田球一が出席した。レーニンははったり的な徳田を信用せず、素朴な労働者の吉田や高尾を評価・信用した。　この大正11年7/15に日本共産党が創立された。当時、「共産主義者」を「ボル」（ボルシェビーキ）といい、アナーキストを「アナ」といった。日本では「アナ」に優秀な人材が多く、レーニンは吉田や高尾に「アナ」を「ボル」に転向させるように頼んだ。その運動資金8000円を上海の共産党ビューローに送った。ところが徳田が上海に先回りしてその資金を横取りした。　怒った吉田は徳田を泥棒よばわりして追いかけ回した。徳田は山崎今朝弥を仲裁にあやまった。しかし、以来「アナ」は「ボル」を信用せず、ますます、両者の仲が悪くなった。　金に汚いのは日本の共産主義者だけでなく韓国でもそうだった。金九の証言がある。1920年当時、上海の韓国臨時政府内部にソ連に通じる者がいた。李東輝といい総理をしていた。金九は警務局長でその警護にあたった。李から仲間にならないかとオルグされたが、「コミンテルンの指揮・命令なしで我々だけで革命が出来ますか？」と返事し誘いには応じなかった。　李は韓亨権をロシアに派遣、レーニンに会わせた。レーニンは「独立運動の資金はどれくらい必要か？」と聞いた。韓は口から出任せに「200万ルーブル」と言った。するとレーニンは笑って、「日本に対抗するのに、200万ルーブルばかりで足りるのか？」と反問。韓は余りにも少なく言いすぎたことを後悔しながら、「本国とアメリカにいる同胞たちが資金を出すので、当面それくらい有ればじゅうぶんだ」と釈明。レーニンは「自分の民族のことは自分でするのが当然」といい、即座に外国部に連絡して200万ルーブルを韓国臨時政府に支出するように命じた。　李は臨時政府閣議にレーニンからの資金のことを知らせず、腹心の金立をシベリアまで迎いにいかせ一時金40万ルーブルを受け取らせた。この使いの金立は自分の家族のために北間島（今の延辺）に土地を買い入れ、上海に戻って来た。そして、広東に妾をかこい、豪勢な享楽生活をはじめた。金九が一貫して反共なのはこの共産主義者の実態をよく知っているからだ。　吉田一の最後を看取ったのは殿様だった。昭和41年（1966）７月、恒例の梨狩りに出かけた。「アナ」の平岩巌が主催で左翼連中と殿様の研究所（生物学・林政史）の人たち十数名だった。途端の大雨で相模原の料亭に逃げ込んだ。　吉田は前年、病気をしてひと月入院していた。酒がまわり話に花がさいた。吉田は殿様の隣に座り、「あなたは最高の生活をしてきた人です。わたしは最低の生活をしてきた者です。それがこうして、いっしょに飯をたべているなんておもしろいことですね」とささやいた。　吉田は話をつづけ「終戦後まもない頃、東久邇宮様をあなたに御案内してもらって、渋谷の駅前のヤミ市でわたしがやっていた小屋がけのスイトン屋にきてもらい、スイトンをたべていただきました。そこで約束して、東久邇宮様にわたしの家にきていただいて、平岩巌さん、鈴木茂三郎くん、加藤勘十くんなんか集めて、牛肉のすき焼きをつくって、夜おそくまで自由に話をしましたね。総理大臣をした宮様と膝つめで勝手にお話をしたことなど、いままで考えもしなかったのに、そうしたことなど、たくさん書きのこしておきたいことがあるんです」　吉田は話を続けながら殿様にもたれかかるように倒れた。殿様は医者を手配。人口呼吸をし、手足をさすったが、医者が来た時、吉田には脈がなかった。　殿様は8/10、高松宮から電話があり、赤坂の御殿に行った。そこで「陛下が終戦の御決意をした」と高松宮から聞いた。朝10時に目白を出て帰ってきたのは午後２時だった。殿様は高松宮の相談相手だった。当然、お昼も一緒だった。　この話を聞いた吉田は殿様に質問している。「どんなご馳走でしたか？」「そう、菜っ葉のおつゆ、ハンペンの煮付けとか・・・」「それだけですか？」と吉田は不思議がった。殿様は「ぼくだって家で、豆の入った飯とイモのつると、カボチャの花を煮たのをたべていて、藤田くんが閉口したのを知ってるじゃないか」「でも徳川さん、宮様の話なんですよ」吉田はなかなか信じられなかった。「宮様だって同じだよ。ぼくたちはヤミで食料は買ってないよ。配給とほかに手にはいるだけだもの」吉田はすっかり考えこんで、「それなら、ぼくたちのほうが、よっぽどうまいものを食べてますなー」と言った。「ぼくは小学校にも行けず、文字も書けないから、自分で書くことが出来ません。誰かにぼくの話をして書き残したいですね」

  2005.04.10

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• 殿様(徳川義親)の政治改革案（二）

  　殿様の提言である。「いまやわが国は、内外の問題が山積みし、一大危機が目前に迫っている。このさい国民がとる道はひとつしかない。それは、わが国の政治組織を根本的に改革し、国家社会を一新することである。貴族院の改革なんぞは、その一端にすぎない」（１）皇族、華族の議員は残すが、数を百名以下にし、議員は無報酬とする。（２）貴族院議員は、国民大衆の職業別団体から選出する。議員は十年以上職業に従事した男女で、二百五十名を選出する。（３）選挙権は満二十五歳以上で、被選挙権は三十五歳以上の男女平等とする。（４）議員の任期は九年で、毎年三分の一ずつを改選する。この翌年・大正14年(1925)に普通選挙法が通り、成人男子のみが選挙に参加出来るようになった。　殿様の改革案は無視された。全議員から、そして、言論界からも。騒ぎにもならなかった。見事失敗した。貴族院議長は徳川家達(徳川宗家16代)である。殿様には閉口したという。　しかし、これで諦める殿様ではない。　次の手は７年後、軍にクーデタをそそのかすのである。

  2004.08.26

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• 殿様(徳川義親)の政治改革案（一）

  　殿様は大正13年(1924)3月、「貴族院改革案」を公表している。相談相手は殿様が警察から助け出した石川三四郎である。　当時の貴族院は腐敗していた。議員の構成が複雑だった。終身議員と選挙で選ばれる議員、天皇からの勅撰議員の三種類があった。終身議員は皇族・公爵・侯爵。選挙は伯爵・子爵・男爵で、明治維新の頃、４・５万石以下の小大名や下級公卿であった。　「貴族院研究会」という集団があった。選挙で選ばれる子爵議員が中心で「利権」の温床となった。今の参議院と違って、貴族院は衆議院と対等で議案を否決すると内閣が潰れた。原敬内閣の時、研究会は原に密着した。(「原敬日記」に詳しいそうだ)　この研究会を事務局長として牛耳ったのは藤田勇(東京毎日新聞社社長)であった。藤田は大正12年(1923)ソ連外務人民委員のヨッフェを日本に招き、後藤新平に引き合わせ、日ソ国交回復の基礎を築いた。しかし、この功績は公文書から消えているそうだ。　この藤田勇、殿様に本音を語っている。「あの連中(貴族議員達)は無能だから、こっちの頭としっぽをちょっと見せ、胴体を隠してホラを吹くと、ぼくが大人物に見えて、すっかり信用してついてくるんですよ」（つづく）

  2004.08.25

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• 殿様と石川三四郎

  　殿様とは徳川義親のことである。この殿様とアナーキスト・石川三四郎を結びつけたのは神戸の刑事であった。　大正10年(1921)10月、当時日本最大の客船・箱根丸(一万トン級)が進水、初航海となった。　北白川宮成久王から殿様に誘いがあった。「自分は軍人で一般人の礼儀作法に馴れていない。同行して船中でご教示を！」　学習院の先輩になる殿様は引き受けた。神戸で刑事が乗り込んできて殿様に言う「注意人物の石川三四郎がこの船に乗っている。彼は社会主義者で大逆事件の幸徳秋水の友人だ。宮様の警護をお願いしたい」殿様は「引き受けても良いが、自分はその石川を知らない。引き合わせろ」と応えた。　殿様は一目で石川を気に入った。立派な学者、三等船客だが一等船でも彼ほどの人は少ないと評価する。　石川三四郎は明治９年(1876)生まれ、殿様より10歳上。日露戦争のさい非戦論をとなえた。「開戦論者も愛国者なら非戦論者も愛国者」幸徳秋水や木下尚江らと「平民新聞」を創刊、日本で初めて「共産党宣言」を訳して掲載した。　明治43年(1910)大逆事件、石川は関係なかったが世間は疑った。長州・桂太郎の陰謀説も流布されてた。殿様は言う「社会主義だろうと国家主義だろうと国民の幸福が実現すればいい。主義主張にこだわらず目的を実現すればいい」　殿様も宮様も船中石川から啓発され視野が広がったという。　帰国後、フランス語の家庭教師として殿様の令嬢達を石川は教えることとなる。発音が綺麗になったと学習院の先生がその理由を尋ねた。令嬢達は無邪気に「石川三四郎先生です」と応え、学習院ばかりか、宮内省まで驚かせた。宮内省には殿様の実兄・松平慶民がいた。問い合わせに、殿様は「家には若柳流の師匠と、フランス語の先生が来るだけ、社会主義者など雇っていません」と涼しい顔で応えたという。　大正12年(1923)関東大震災、殿様は目白の自宅から自転車で田端の石川を訪ねた。亀戸署に連れたいかれたと家人の話。自転車で亀戸署へ。作業服だったが署長に名刺を見せ、この徳川が身元引受人になるといって石川を引き取った。大杉栄が殺された時だから石川の生命も殿様に助けられなければ、どうなっていたか分からない。　石川三四郎は埼玉・本庄の人である。地元の人は「ここは群馬より田舎」とよく言う。高崎と比べてのことと思うが、しかし、本庄では石川は有名人である。　新宿・角筈の福田英子宅で九津見房子はこの石川に会っている。明治39年(1906)のことである。福田英子と大井憲太郎の間に出来た子供は房子と同じ17歳になっていて、石川の実家(群馬？)で預かっていて、石川の本名・五十嵐を名乗っていた。

  2004.08.21

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• 殿様とアイヌ学者

  　殿様とは徳川義親のことである。アイヌ学者とは英国人でこの殿様の友人、ジョン・バチュラー博士である。　北海道・八雲に失職した尾張藩士のために国から払い下げられた150万坪の土地がある。明治11年から明治22、3年頃までに約100戸が移住した。明治45年ころには60戸が開拓に成功したという。　殿様はスイスで熊の彫刻を買ってきて、それを手本に北海道の人たちに熊の彫刻を作らせたそうだ。名物の熊のルーツはスイスだったのだ。　尾張が外敵に、関が原直後だったから、豊臣家がその仮想敵である、その外敵に攻められたら、平地なので守りきれない。そこで、木曽に立てこもる作戦があったそうだ。そのために、木曽の人たちの年貢は少なく、日頃、山で狩りをしていてもいいことになっていたそうだ。　バチュラー博士の説では木曽はアイヌ語で説明できる。「キ」は美しい、「ソ」川底。「美しい川底」という意味になる。　岐阜にいた頃だから30年前になるが、日本全国の地名がアイヌ語で説明がつくという本を立ち読みしたことがある。　空海のお母さんの出身である佐伯氏は蝦夷からの帰順者である。伊勢の巫女さん達が神が掛かったときアイヌの長老が呼ばれたという。　童門さんがラジオで言っていたが、松平定信の寛政改革の時、北海道に多摩の農民達が屯田兵として送られたそうだ。結果は悲惨だったという。そういう情報を土方は知っていて、函館まで行ったのではないか？　今、調査中のようだ。

  2004.07.07

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• マハティールが日本をほめる理由

  　マレーシアのマハティール首相が日本をよくほめていたけど、単に変わった人程度に受け止めていた。しかし、徳川義親自伝を読んでその根拠・日本をほめる根拠がわかった。　軍政である。政治が良かったのである。山下奉文のことを英国人の記者が書いている。彼の心酔者であった。何故、敵国の記者が？と思っていたが、あの博物館を守る姿勢に英国人記者は感銘を受けたのであろう。　この第25軍の「軍政月報」が保管されている。殿様がシンガポールにいた間の分なのだが、読んで見たいものだ。

  2004.06.16

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• 殿様と社会党

  　敗戦降伏のときから新政党結成の相談がなされていた。殿様の目白の邸宅・不思議と戦災で焼けなかった・に、先ず、鈴木茂三郎・吉田一・藤田勇・所三男が集まり、同志に連絡をとった。大内兵衛・片山哲・平野力三・加藤勘十・吉川兼光・原田政治・田原春次・浅沼稲次郎・松岡駒吉ら40人ほどが集まった。　資金は軍から調達した。アメリカに取られるのは癪だから要所要所に分配となり、殿様のところに三百万円・百円札で三万枚。社会党に回ったのは少しだけだったそうだが、自民党の設立資金が香港から右翼が朝日新聞の飛行機で運んだと言われているのといい勝負である。

  2004.06.15

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• 殿様が最高軍政顧問

  　東条内閣ができて、直ぐに、海軍と陸軍の知り合いからマレーとシンガポールの地図を貸してくれと頼まれたそうだ。その地図でマレー半島上陸作戦が練られたことになる。　殿様は世話になったサルタンのことが気になった。17年１月末に東条から晩餐に招かれ、軍政顧問になってくれと頼まれた。それを引き受けてシンガポールに飛んだ。サルタン九家の保護一般を受け持った。　司令官・山下奉文は軍政に心を配った。サルタンの王宮と回教寺院には軍隊を絶対入れるなと厳命し、憲兵を配置させた。イギリスが禁止していたサルタンの戴冠式も許した。　殿様はシンガポールのラッフルス博物館の館長と植物園の園長になった。珍しい鳥類ノコレクションが多数あって、日本からきた軍人が欲しがった。散逸を阻止しなくてはならない。日本から学者を呼んだ。捕虜のイギリス人も動員した。日英共同で文化財を守ったのだった。　イランに侵攻した何処かの国の軍隊は歴史から何も学んでいないことになる。　19年３月に東京出張、その疲弊状況に驚き、８月にシンガポールの職を辞した。国民は飢えているが、軍関係者はたらふく食っている。どこかの国と同じだ。

  2004.06.14

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• 最後の殿様・・・徳川義親自伝

  　本に呼び出される体験をよくする。この「最後の殿様」もそうだ。３月９日の日記にも書いた。あれは人名辞典の記述だけだったのだが、これは本人の自伝である。まだ、半分しか読んでいないが、感ずるところは多い。　まえがきに「ひとつの特権階級が没落することは歴史の必然である。・・・没落と歴史的事実、あるいは歴史的遺産とは別である」とある。昭和のはじめに尾張・徳川家の歴史的遺産を財団法人に移している。徳川美術館がそうだ。ある高校の古典の先生から名古屋の徳川美術館は完璧なコレクションだと聞いたことがあった。　彼が戦後まで個人財産として持っていたら「歴史的遺産」はバラバラになっていただろう。　マレーで虎狩りをしている。虎は一撃では倒せない。こちらに襲ってくる最終段階でもう一撃をする。北海道で熊撃ちをしていた経験がものをいった。マレーシアのサルタンから尊敬され貴族待遇になった。マハティールの日本贔屓もこの殿様の遺産かもしれない。　　

  2004.06.13

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• 徳川家の人々・・・徳川義親（よしちか）

  　とくがわ・よしちか（1886～1976）松平春岳の６男である。尾張徳川家の養子、貴族院議員。1914年、徳川生物学研究所を、1927年、徳川林政史研究所を設立。貴族院改革を唱え、1925年、治安維持法の制定に反対、同年、慈善ダンスパーティーを黒龍会に攻撃され、議員を辞職。この間、「源氏物語絵巻」の研究・保存、聾唖教育などに活躍。1931年、三月事件で大川周明に資金援助。1936年、２・２６事件では栗原安秀中尉に連絡をつけようとして、反乱幇助罪容疑・不起訴。1941年、ラッフルズ博物館館長・マレー語を研究。1944年、帰国し終戦工作。敗戦後、日本社会党結成を支援、資金援助。党顧問となるが、公職追放。1956年、自民党推薦で名古屋市長選・落選。日ソ交流協会会長。　松平春岳といえば１５代将軍慶喜の分身である。「徳川さん」は謹慎したが「松平さん」は明治政府成立とともに、議定、ついで内国事務総督、民部卿、大蔵卿を歴任した。　カメが甲羅の中に首を引っ込めただけ、薩長がつぶし合っている隙に子作り（22人）に励んで「徳川さん」は貴族院議長に納まった。さすがですね。　明治維新を乗り切った春岳さんの息子、「徳川さん」になって、？？？　我々凡人には不可解な人生である。落選させた名古屋市民の見識が光る。自民党何考えていいるのか？おかしいのは今に始まったわけじゃないんですね。（以上、人名辞典から）

  2004.03.09

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• 徳川家の人々

  　人名辞典を通勤の行き帰りに読んでいる。徳川さん４１名、徳川夢声も入っているので４０名。松平さん５１名、松平健は入っていなかった。約９０名もの人たちが徳川家の人々である。　明治にはいって貴族院の議員になっている人が何人かいる。確か、明治維新で徳川政権は倒れたはず、なのに、徳川さんが復権している。　　新田次郎が歴史読本に書いていた。松平郷では、松平、酒井、石川の三つの家が鼎立していた。家康がその中での覇権を確立した証として徳川を名乗れたのだという解釈である。信康切腹のときは酒井に信長からの指示があった。石川は秀吉からヘッドハンティングにあった。酒井にも二系統あって、ここまでくると、いまの自民党の派閥抗争と同じである。　この４００年、徳川さんと松平さんがどういう二人三脚を組んできたか？現在の混迷する政局を紐解くヒントがあると思っている。

  2004.03.05

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