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カテゴリ:びしびし本格推理
島田荘司の「御手洗潔シリーズ」の松崎レオナが主人公の作品を読んだ。
○ストーリー ハリウッドの有名女優が殺され,殺害シーンの映像がロス市警に送られる。それを見た親友の女優・松崎レオナは,独自に事件の捜査を始める。この事件と同時に起きる子宮の強奪事件と,ケルト神話伝説に由来する妖精発見は一体何を意味するのか? ------------ 一般に「レオナ3部作」と言われている,「暗闇坂の人喰いの木」「水晶のピラミッド」「アトポス」の共通の特徴として,1)長い,2)過去の伝説を語る部分が長い,3)長い,というものがある。この作品は,その基準で言えば,十分「レオナ4部作」の一部をなす資格があると思う。 御手洗潔が登場するのは電話でだけ,ということで,この作品は「御手洗潔シリーズ」の番外編と扱うことが多いようだが,シリーズ作品でいいのではないかと思う。 ------------ この物語はタイトルの通り,ハリウッドを舞台にしている。ハリウッドでの芸能人の暮らしを生々しく描いているらしい。正直,僕にはなんとも判断できない。たぶんリアルなんだろうな,と思うだけだ。 主人公の松崎レオナは,絶大な富と権力,そして機知と魅力に裏付けられた揺るぎない自信を持っている。それを女優志望のジョアンという人物の視点から描くことで,レオナの表の部分と裏の部分の双方を描いている。 ここで描かれるハリウッド女優の光と影も,この作品のテーマの1つなんだと思う。けれども日本でサラリーマンをしている僕には,強く伝わってくるものは無かった。 ------------ ケルト神話のある部分が現代の先端科学と不思議に呼応している,ということもこの作品のテーマの1つだ。豊富な引用,散りばめられる関連知識によって物語は深みを持つ。中盤までは謎は深みを増すばかりだ。 このテクニックは島田荘司としては手馴れたものでもあるので,読者は間違いなく不可思議な「奇想」の旅をすることができる。ワケの分からない状態も,いずれスッキリ解決されるという安心感(信心)があるので,なんとか耐えることが出来る。 これだけの長編を,一定のテーマを守りつつ,大きな破綻無くまとめ上げてしまうというのは,間違いなく稀有な才能だと思う。 ------------ とは言え,松崎レオナというキャラクターに魅力があるかと問われれば,答えはノーだ。 英日ハーフで,日本でモデルと女優になり,日米合作映画の主演を契機にアメリカでも成功した女性で,今や大富豪,という経歴で既にゲッソリさせられる。さらに,御手洗潔に匹敵する知性の持ち主なのに,ほとんど性格破綻者で人形を損壊するのが趣味,時々人形では飽き足らず若い女性を襲う。・・・なんじゃこりゃ?このどこに感情移入しろっちゅーんだ!! 続編があるような書き方の終わり方でありながら,7年経ってもそれが刊行されていないこともあまり不思議じゃないような気がする。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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ばんびさん。はじめまして,よろしくお願いします。
>続編はまだ書かれていないのですね(汗; >残念です。 医学の先端について書いてしまったので,次のブレークスルーを待っているのかも知れません。「溺れる人魚」などで似たようなテーマは扱われています。 >トラックバックさせてください☆ どうぞ,喜んで! (2010.01.05 11:17:01)
続編はもう諦めた
(2017.09.08 20:40:32)
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