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カテゴリ:ばくばく冒険小説
西尾維新の人気シリーズ〈化物語〉の第21巻を読んだ。
○ストーリー 自分を守るために間違って蛇の呪いの儀式を行ったために様々なトラブルに見舞われた千石撫子は,不登校で引きこもりとなっていた。両親にも見放されそうになった彼女は,自立した生活に近付くために,自分の分身である式神を作る。だが4人の撫子は裏切り,本体を乗っ取ろうとしてきた。千石撫子は撫子たちと戦うこととなる。 ------------- 内気で人見知りや思い込みの激しい少女・千石撫子は,〈化物語〉シリーズのキャラクターの中でも苦手な方だ。どれもリアリティなんか無視していて,その強烈な個性に圧倒されるのだけれど,この撫子というキャラは”可愛いけれど大人しい”というのが特徴なので,魅力を感じない。 また登場した第1シーズンの「なでこスネイク」では蛇を大量に虐殺する,第2シーズンの「なでこミラー」では凶暴化,「なでこメドゥーサ」では怪異化をする,という事態となっており,なんだか身勝手で危険な人物だと感じている。 ------------- この作品では,第3であるファイナルシーズンでほとんど語られなかった彼女の物語が全編を用いて語られる。その設定こそは,自分の分身を作成する,という突飛なのだが,過去の自分と向き合うという展開は,これまでの様々なジャンルの様々な作品で語られてきた,自分の欠点や過去の過ちと対峙するという王道のテーマだ。 さらにこの作品は,過去の自分が式神として具現化しており,それらと直接武力対決をする,という少年マンガのような分かりやすい流れだ。 千石撫子といういじいじしたキャラクターを使って,さらに自分の過去を振り返るという暗くなりがちな物語なのに,ここまで楽しめるアクション小説に仕上げた”奇策”は,さすが西尾維新だと思った。 ------------- この作品では,第1シーズンの大人しいだけの自分〈おと撫子〉,その裏返しとして他人に合わせることにした〈媚び撫子〉,そして第2シーズンの凶暴な〈逆撫子〉,怪異化した〈神撫子〉の4人が登場し,中学3年生となった現実の〈今撫子〉と対決をする。 その対決が「魔法少女りすか」や「刀語」の際のように驚きと知略に満ちていて,いかにも西尾維新だった。そしてさらにその裏に,それぞれの時代の撫子たちへの決別と和解というテーマが流れていて,実に読み応えがあった。 ------------- けっこう惰性で読んでいる部分がある〈化物語シリーズ〉だけれど,この作品は本当に楽しめた。 千石撫子,相変わらず苦手だけれどね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.10.30 18:26:06
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